2019年に経済産業省は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目的に「DX推進指標」を策定しました。しかし、その具体的な内容や活用方法について、よくわからないという方は多いことでしょう。そこで本記事では、DX推進指標について詳しく解説します。自社のDX化を検討している方は、ぜひご一読ください。
DX推進指標とは?
「DX推進指標」とは、経済産業省が国内でのDX推進をバックアップする目的で策定した指標です。DX推進という抽象的な目標を掲げるだけでは、本来目指すべき姿を見失い、デジタル技術の導入そのものが目的になりかねません。したがって、自社(自分)のDX推進度合いの現状を把握し、将来的にどこに向かって進むべきかを明確にする必要があります。
こうした背景から作られたのが、DX推進指標です。DX推進指標の基本は自己診断となっており、全社的に各部門が話し合ったうえで結果が出るよう想定されています。このように自己診断によって現状を把握し、到達すべきDXのゴールや、それに向かうためのプロセスを明確にできるのです。
DX推進指標の全体構成
DX推進指標は、「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」の2つから構成されています。それぞれ、具体的な内容を見ていきましょう。
DX推進のための経営のあり方、仕組み
「DX推進のための経営のあり方、仕組み」では、全体的なビジョンや経営陣の合意形成、体制構築が重要視されています。経営者が「DXによって、どの事業分野でどういった新たな価値の創出を目指すか」のビジョンを明確にしなければ、社員は目指すべき姿をイメージできません。また、経営陣内でDX推進に関して合意形成が図られていないと、部門間の連携が取れないため、経営陣は各部門の社員に対して共通認識を浸透させる必要があります。
そして、DX推進にあたっては「専門性をもつ推進部門」の設置が有効的です。既存の人材でしっかりと体制を構築できればベストですが、ノウハウや知見が不足している場合、そううまくは運びません。社内の各部門と調整し、人材を集約するだけではなく、場合によっては外部のパートナー企業との連携も視野に入れるようにしてください。
DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標
「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標」では、全社的な IT システムの構築に向けた体制となっているかが重要視されます。個々の部門で最適化を図っても、それが会社全体の利益につながらなければ意味がありません。
したがって、「専門性をもつ推進部門」がオーナーシップを発揮し、全社的な最適化を考慮した要件定義、およびIT 資産の仕分けとプランニングを行うようにしましょう。また、必要な人材や予算、リードタイムなどを的確に判断できるよう、取り組み状況の進捗管理も確実に行ってください。
DX推進指標から自社のDX推進レベルを診断してみる
DXを推進するうえでは、経営陣から現場社員に至るまで、社内全体でDXに関して意思疎通を図ることが重要です。特に、DXに関する経営陣の認識と、現場社員の抱く危機感には大きな隔たりがある場合があります。
たとえば、タブレットを用いた検品作業を経営陣は「DX化が進んでいる」と評価するかもしれませんが、現場社員は「かえって効率が悪く、タブレット導入の意味がない」などと認識しているかもしれません。そのギャップを埋めてくれるのがDX推進指標による自己診断で、各部門の議論を交えて、より質の高い現状把握を可能とします。
DX推進指標には専用の自己診断フォーマットがあり、各観点における現在の成熟度レベルに加え、3年後に目指すべきレベルなどを記載する仕組み(記入した根拠・確認方法・アクションなども記載)となっています。自己診断結果は、情報処理推進機構のWeb申請システムに提出すると、診断結果と全体のデータ(ほかの会社など)を比較できるベンチマークを作成してくれます。
DX推進指標を活用するメリット
前述したベンチマークを活用し、自社と他社の違いや差を把握します。そして、客観的に分析されたDX推進度を社内で共有することで、経営陣も含め会社全体でDXに関する認識を共有できるメリットがあります。それによって自社の強みと弱みがわかり、次に取るべきアクションが明確になることで、DX推進に対する具体的な取り組みへと移行できます。
現状と課題を認識しないままアクションに移るのは、よくある失敗の典型例です。なぜDX化を図る必要があるのか、どういった効果をもたらすのかなどの動機づけにもなるため、ぜひDX推進指標の自己診断をご活用ください。
DXを推進する必要性
DXがもたらす効果はさまざまですが、ここではDXを推進する必要性について、3つの観点から解説していきます。
ビジネス環境の変化への対応
1つ目は、「ビジネス環境の変化」に対応するためです。価値観の多様化やニーズの変化が加速する現代において、企業が消費者にパーソナライズした商品・サービスを提供するためには、ビッグデータの活用によりニーズを素早く分析・把握する必要があります。
DXを通じて企業のデジタル活用を促すことは、こうした変化に対する柔軟な対応力を醸成し、市場における競争優位性の確保につながります。特にグローバル市場で活躍する企業においては、この競争優位性の確保が非常に重要であり、市場から淘汰されないためにもDXの推進が不可欠といえます。
働きやすい環境の整備
2つ目は、「働きやすい環境を整える」ことです。売上伝票など紙媒体で管理していたものをデジタル化することで、従業員の作業工数だけでなく在庫管理も効率化を図れます。
また、業務にITツールを導入することで、在宅ワークなどが可能となり、柔軟性のある就労スタイルを叶えられるのもメリットです。少子高齢化による労働人口の減少が顕著な現代日本において、DXの推進は恩恵が大きいといえるでしょう。
「2025年の崖」への対策
3つ目は、「2025年の崖」への対策になることです。2025年の崖とは、2018年に経産省が公表した「DXレポート」の中で用いられた言葉で、「複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025 年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了等によるリスクの高まり等に伴う経済損失は、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)にのぼる可能性がある」とし、国内企業に対して警鐘を鳴らしました。
特に、既存システム(レガシーシステム)のベンダーが行うサポート終了によって、数多くの企業に不利益が生じる危険性があります。サポートが終了し、社内システムのセキュリティが脆弱になると、システム運用に多大なるリスクが生じてしまいます。DX推進は、こういったレガシーシステムを刷新し、考えうるリスクを可能な限り排除するという観点からも非常に重要です。
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DX推進指標をどのように活用するのか
DX推進指標の活用方法については、経済産業省が2つのポイントを挙げています。
1つ目は、「DXを巡る課題や解消に向けたアクションの共有」です。DXに関して、各企業では前例のないケースが多いため、解消すべき課題や効果的な施策など、具体的な内容の共有が困難になる点がいくつかあります。そういったときこそ、DX推進指標の出番です。現在のDX実施状況を推進指標に当てはめることで、現状の課題や今後取るべきアクションが明確になり、必要な手立てを検討できるようになります。また、DX推進指標を活用することで、取り組んできた成果が一目で把握できるため、進捗管理にも役立ちます。
2つ目は、「気づきの機会を提供するためのツール」になり得ることです。DX実現には組織としての改革が必須で、情報システム(IT)部門が独自で行えるものではないため、経営陣こそ積極的に参加すべきでしょう。組織のマネジメントに欠かせない者が複数参加することで、会社の強み・弱みやDXの進捗状況を公平に評価できます。このように、会社のDXに関する状況を知る機会を得ることで、より前向きにDX推進に取り組もうとする「きっかけ」が生まれるのです。
まとめ
DX推進指標は、DX推進への取り組みを加速させる「きっかけ」を提供するツールです。今後さらに表面化する「ビジネス環境の変化」に対応するため、DX推進指標の積極的な活用が期待されます。
また、DX化に伴うITツール導入でお悩みの方は、ワークマネジメントツール「Asana」をご検討ください。Asanaは全世界で導入実績があり、企業のDXを支えるツールとして高い評価を得ています。DX化に関する相談もお受けしておりますので、ぜひお問い合せください。
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