近年、経済産業省がDXを推進しており、多くの方々がDXへの興味・関心を高めています。その一方、社内でどのようにDXを推進すべきかわからないという方も多いことでしょう。その際、役立つのが「DX推進ガイドライン」です。そこで今回は、本ガイドラインが示す重要なポイントをご紹介します。自社のDX推進を検討している方は、ぜひご一読ください。
DX推進ガイドラインとは
「DX推進ガイドライン」とは、経済産業省が2018年12月に発表した、企業のDX推進にあたり経営者が押さえておくべき事項をまとめたガイドラインのことです。本ガイドラインは、同年9月に発表された「DXレポート」における、「DXの必要性が強調されている現在、DX を実現していくうえでのアプローチや必要なアクションについての認識を共有する」という旨の提言に基づき作成されました。
DX推進指標との違い
「DX推進指標」とは、各企業が自社のDX化の進捗などについて、簡易的な自己診断を行えるようにするものです。本指標では設定された各項目に関し、企業の経営幹部・事業部門・DX部門・IT部門などが議論・回答することを想定しています。具体的には35項目にわたる定性指標で構成されており、現在の日本企業が抱える課題や、その解決に向けて押さえるべき事項を中心にまとめられています。
つまり、DX推進ガイドラインがDX実現に向けたアプローチについて言及したガイドラインであるのに対し、DX推進指標は自社の評価を定性的に行うためのツールであり、この点が両者の大きな違いといえます。
DX推進ガイドラインで押さえておくべき5つのポイント
DX推進ガイドラインは、大きく分けて以下の2項目で構成されています。
- DX推進に向けた経営のあり方、仕組み
- DXを実現するうえで土台となるITシステムの構築
以下では、これらの項目の中から、DXの実行にあたって特に押さえておくべき5つのポイントをピックアップしてご紹介します。
1.経営戦略・ビジョンの提示
ここでは、経営者が経営戦略やビジョンをもつ重要性について2点言及しています。
1つ目は、「DXによって、どの事業分野でどういった価値の創出を目指すか」を明確にすることです。実際に手を動かすのは経営者でなく社員であるため、目指すべき姿をイメージしやすいようにはっきりと明確化しましょう。
2つ目は、「1つ目のポイントを実現するために、どのようなビジネスモデルを構築すべきか」についてです。企業によってビジネスモデルは何通りも存在するため、収益構造を確立できるような仕組みとなるよう、議論を重ねていきましょう。
経営戦略やビジョンが明確でないままDXを推進しようとすると、改革に失敗するリスクが高まるため、経営陣は必要な施策の立案や指示出しが必須となります。
2.DX推進のための体制整備
ここでは新たな挑戦を促進し、継続性をもたせるために、環境を整える重要性について3点言及しています。
1つ目は、「マインドセット」についてです。DX化をしっかりと進めるには、戦略やビジョン、経営方針などの見直しが必要になるかもしれないため、柔軟に対応しましょう。
2つ目は、「推進におけるサポート体制」についてです。専門性のある推進部門を設置することで、DXの推進をより加速できるケースが多いため、企業のリソースを念頭に検討してください。
3つ目は、「人材」についてです。DXの推進には、人材の育成および確保が欠かせません。ノウハウや知見が不足していることを理由に、上記のポイントを疎かにすることだけは避けましょう。自社に適切な人材や必要なリソースが不足している場合は、パートナー企業との連携なども視野に入れ、着実に前進していくことが重要です。
3.全社的な IT システムの構築に向けた体制
ここではDXを実現するための基盤と、それに連携できる社内体制(組織や役割分担)を整える重要性を示しています。
ガイドラインでは先行事例として、IT システムの運用に適した少人数のチームを組成し、トップダウンで変革に取り組んだ例を紹介しています。こうした先行事例を参考にして、組織の構築だけに捉われることなく、経営戦略の実現に必要なデータの収集・活用を効率よく進めることを前提に、個別ではなく全体的な設計ができる体制づくりを行いましょう。それによって、各事業部門の内部からも、全社で最適な環境を目指す思考がより活発化していくと考えられます。
4.事業部門のオーナーシップと要件定義能力
ここでは、各事業部門のオーナーシップと要件定義における、求められる能力について2点提示しています。
1つ目は、「各事業部門がオーナーシップを抱いて、DXで実現したい企画を明確にしているか」です。各事業部は、推進部門と協同して作成した事業計画に基づきDXを推進しましょう。
2つ目は、「各事業部門自らが要件定義を行い、完成責任までを担えているか」です。よくある事例が、要件定義までもITベンダーに丸投げし、想定していたシステムと全く異なる仕様になってしまうケースです。こちらも、推進部門(専門技術者が不在の場合は、外部パートナーに依頼する)に相談しながら要件定義を行い、開発中も必要に応じてフィードバック等を行いましょう。発注したシステムが完成するまで責任を担い、完成後も評価・改善を繰り返すことで、質の高いITツールとなります。
5.IT 資産の仕分けとプランニング
ここでは、IT資産の仕分けや移行のプランニングでチェックすべき項目について説明しています。具体的には、以下の項目が挙げられます。
- 環境の変化に応じて、ビジネスモデルを変更すべき範囲を迅速に定め、それに適したシステム環境を構築できるか
- 全社最適となるようにシステムが構成されているか
- 競争範囲を定めたうえで、競争範囲へのリソースの重点配分を図っているか
- 廃棄すべきITシステムはサンクコストとし、余計なコストをかけずに廃棄できているか
- 全体として、技術的負債の低減にもつながっていくか
「システムの完成=DXの成功」ではなく、最初に設定した目的を実現してこそ成功と評価できます。いったん作り上げたシステムも、時代の流れやビジネスモデルの変化に応じて改善していく必要があるため、将来的な変化に適応できる仕組みとなっているかもチェックすべきポイントです。
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Prodotto合同会社 代表/Asanaアンバサダー萩原 雅裕氏が「DX化」の第一歩について具体例や導入事例を交えながら解説します!
DXの成功に向けて始めに行うべきことは?
DXの目標は既存の業務やビジネスモデルに変革をもたらしますが、その基盤を担うITシステムが複雑化・ブラックボックス化していると、スムーズに推進できません。また、既存業務のどこをDX化するかを決めるには、既存業務の把握が不可欠です。したがって、DXの成功に向けてまず行うべきことは、「既存システムの断捨離」と「既存業務の可視化」です。
既存システムの必要性について判断を行う
DXに取り組むにあたっては、まず既存システム(レガシーシステム)を把握し、縮小・廃棄の判断を行うようにしましょう。そして、新規システムをレガシーシステムと同時に利用する場合、導入後に不具合が発生するなどの事態に陥らないよう、システム連携が取れるかどうかの確認も必須です。
業務を可視化する
前述したとおり、DX化には既存業務の可視化が欠かせません。しかし、「可視化といわれても具体的にどう実施すればよいのかわからない」という方も多いことでしょう。そこで役立つのが、ワークマネージメントツール「Asana」です。
Asanaは既存業務を定量的に評価し、生産性向上に貢献する「仕事を一元化できるツール」です。タイムラインやカンバンボード、ガントチャートなど多様な機能の搭載により、個人レベルからチーム全体の業務進捗を可視化し、効率的な進行管理を実現できます。全世界190ヵ国、93,000社以上の導入実績を誇るため、安心して利用できるのもポイントです。
まとめ
近年の新型コロナウイルスの影響で、DXは私たちにとってより身近な存在となり、社会的にも浸透しつつあります。現在では、DXに後ろ向きだった企業も、何かしらの対策を講じなければならない局面を迎えていることでしょう。
情報システム分野は、その複雑性から敬遠されがちですが、ここでDX推進に舵を取れるかどうかによって、今後の競争優位に立てるか否かが決まるといっても過言ではありません。今回ご紹介した「Asana」は、業務の可視化を助け、企業のDXに資するツールとして高い評価を得ています。DXに取り組まれる際は、ぜひ導入をご検討ください。
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