2019年の「働き方改革」施行以来、BPRやBPOというフレーズを耳にする機会が増えています。 どちらも、業務のパフォーマンス向上には欠かせない取り組みですが、どのように実務に取り入れていけばいいかわからないという企業も少なくないでしょう。
本記事では、BPRとBPOとはなにかをはじめ、その違いや導入方法などを細かく解説していきます。
BPR、BPOとはなにか?
働き方改革の施行や、グローバル化が加速する昨今、多くの企業が従来の体制の見直しを迫られています。
そこで、体制改革の手段として、BPRやBPOが広く注目を集めています。特に、IT関連企業を中心として実際に取り組みを進めている企業も増えており、劇的な飛躍を遂げているケースも少なくありません。しかし、闇雲に取り組んだとしても期待される効果が得られないでしょう。まずは、それぞれの概要を把握することが大切です。
ここでは、BPRとBPOとはなにかを詳しく解説していきます。
BPRとはなにか
BPRとは、Business Process Re-engineeringの頭文字をとった略称です。これは、従来のビジネス構造を再構築し、業務フローや管理機構などの業務プロセスを根本から改革するという考え方を指します。
そのため、業務プロセスに大きな変更を加えず、部分的なコスト削減や課題解決による効率化を目指す業務改善とは異なり、BPRはより抜本的な改革を目的とします。
BPRは、業務が持つ本来の目的を明らかにした上で、プロセスをゼロから再構築していくため、合目的的で無駄のない体制づくりにより、大きな生産性の向上が見込めます。
BPOとはなにか
BPOとは、Business Process Outsourcingの略称です。これは、従来の自社業務を外部委託することで業務改善を目指す経営戦略を表します。BPOのやり方は多岐にわたり、業務全体をまとめて委託するケースもあれば、給与計算や経理といった一部の部門のみを委託する方法もあります。
特定の業務を外部委託することにより、自社のコア業務にリソースを集中できるようになることがBPOの利点です。ソフトウェアやWebシステムの開発などを海外の企業や子会社に委託するオフショア開発は、BPOのひとつと言えます。
BPRとBPOの違いとは?
BPRとBPOは、名称がよく似ていることもあり、混同する人も少なくありません。しかし、両者では重視する点が大きく異なります。
BPRはこれまでの非効率な業務プロセス全体を抜本的に見直した上で、再構築していく経営戦略です。つまり、普段の業務自体を改めていく必要があります。
一方、BPOは通常業務における効率化を目的としてプロセスの一部もしくは全体を外部委託することを指し、業務改善を行うものの必ずしもプロセスの変更を伴うものではありません。
なお、BPRを実行する手段として、BPOを取り込むことが効果的な場合もあります。コア業務を重視するプロセス改革の一端として、ノンコア業務を省略するために外部委託することは、両者を同時に行う好例と言えるでしょう。
BPRとBPO、自社にはどちらが必要?
BPRは業務改革を行い、BPOは業務改善を目的とします。
抜本的改革と業務改善のどちらが必要なのか、組織や業務の体制により大きく異なります。そのため、まずは自社状況を明確にするとともに、これらを取り入れるメリットを検討する必要があります。
ここからは、BPO・BPRそれぞれのメリットや導入の流れを解説します。
BPOの対象業務とは?
BPOの対象となる業務は内容によって異なり、効率的に取り入れるためには、外部委託が可能な業務について把握しておくことが大切です。
一般的に、企業が行う業務は「コア業務(直接業務)」と「ノンコア業務(間接業務)」の2つに分けられます。
まず、コア業務は営業や経営企画といった成果や利益に直結する業務を指します。各企業が独自性を持って行う業務であり、戦略も異なるため、フォーマット化しづらいのが特徴です。そのため、BPOには向いていない業務といえます。
一方のノンコア業務は、コア業務をサポートする業務を示します。フォーマット化できる業務であり専門的な判断が必要ないため、委託しやすい業務といえるでしょう。
例として、BPOを導入しやすい業務には以下の8項目があります。
- 経理・総務
- 受付
- 事務作業
- 人材採用・育成
- コールセンター
- システム開発
- データ処理
- マーケティング
これらのノンコア業務の他に、営業をフォーマット化して外部委託するケースもあります。
BPOの主なメリット
BPOのメリットとしてあげられるのは、業務効率化や工数削減です。
ノンコア業務を外部委託することで、利益や成果に直結するコア業務に重点を置きやすくなります。人手不足で悩んでいる場合には、BPOでノンコア業務を削減することでコア業務に人材を割けるようになり、問題解消が見込めます。
また、外部委託には相応のコストがかかりますが、自社のリソースを節約できるためトータルではコストを抑えられることもあります。
なお、業務を委託すれば相応にセキュリティ上のリスクを負うことになりますが、委託先にISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークを取得している業者を選ぶことで、リスクを低減できます。
BPOは、部分的な業務を委託する「外注」だけを指す取り組みではありません。企業のビジネスプロセス全体を委託して、長い目で見た経営戦略を踏まえた上での外部委託といえます。
BPOサービス導入の流れ
効率的にBPOサービスを導入する最初のステップとして、社内における課題の整理が求められます。しっかりと課題を洗い出すことによって、BPOを導入する目的を明確にします。
次に、BPO導入の目的に沿ってREP(提案依頼書)を作成します。REPは、BPO業者に見積もりを依頼する際の情報源です。REPの内容が曖昧だと、後になってトラブルになりかねません。また、仕事の進め方や処理件数など細かな評価基準を設定しておくと、BPO業者選びをする際に役立ちます。
REPの準備が整ったら、BPOサービスを展開する業者選びです。外部委託とはいえ、自社の業務を効率よく回していくための欠かせないパートナーとなります。そのため、目的に見合った業務を専門に行なっていることはもちろん、密に連絡を取り合える業者を選びましょう。
BPR導入のメリット
業務を抜本から改革するBPRを導入すると、様々なメリットが得られます。まず、ポイントとなるのが、業務の可視化です。
BPRによって不要なプロセスを発見し、本当に必要な業務を明確にすることで効率化を進め、生産性を向上できます。
また、業績アップに欠かせない組織づくりについても、BPRにおける検討項目のひとつです。業績が伸び悩んでいる企業は、組織間に問題を抱えているケースが多く見られます。例えば、古い慣習に従った縦割り構造は弊害のひとつといえるでしょう。BPRに取り組むことで一つひとつの業務の目的を明確にし、目的に合った組織を再構築します。
さらに、これらの施策により働きやすい環境が構築されることで、社員がより本質的な業務に集中できるようになってスキルアップしたり、モチベーション向上による離職率の低下につながったりします。
他にも、顧客視点で見直しを図れば、無駄の削減や新たな付加価値の創出による顧客満足度の向上から業績拡大が見込めます。
BPR導入の具体的なステップ
BPRを効果的に進めていくためには、5つのステップがポイントとなります。
まず目的・目標を設定し、BPRで対象とする業務範囲を検討します。このステップでは、各社員から改善点をヒアリングし、経営に関する戦略の改善点を洗い出します。見逃していた課題や問題を把握し、細かく目標を設定することで、戦略を立てやすくなるでしょう。
改革の方針や対象とする業務が定まったら、分析を行います。業務における現状の課題や組織構造などを分析の対象とします。こうした課題を洗い出す際には、分析ツールを活用しましょう。ABC分析(重点分析)やBSC(バランスコアカード)を用いて、客観的な視点から課題を評価します。
続いては、課題から戦略を組み立てていきます。この際に、業務をBPOサービスに委託するといった手段を検討します。
設計をもとに、戦略を実行していきます。抜本的な体制の変化には、長い期間をかけて行う必要があることも珍しくありません。短期目標を設定して逐一モニタリングを行い、本来の目的から逸脱しないよう軌道修正していくことが大切です。
戦略を実行する際には、進捗をモニタリングします。目標期間を決めておき、改革の終了までに新たなプロセスが定着できたかといった達成の度合いや、業績の変化からどの程度の効果が得られたといった点を評価しましょう。
まとめ
BRPとBPOは、いずれも業務効率化や生産性の向上を図る取り組みですが、重視する点に大きな違いがあります。BRPは業務プロセスの抜本的な改革を行い、BPOは外部委託による業務改善を目的とします。
より効果的にBRPやBPOを実施・導入するためには、自社の現状を把握し、最適な戦略を立てることが大切です。
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- カテゴリ:
- BPR・変革管理