皆さんは、日本のGDP(国内総生産)が今どれくらいあるか、ご存知でしょうか?国際金融の安定化を目指す専門機関「IMF(国際通貨基金)」が毎年発表しているデータによると、2016年度の日本GDPは約538兆円です。
これは米国、中国に次いで3位の数値ではあるものの、決して喜ばしい数字ではありません。国民一人あたりのGDPに換算すると、日本は第22位で、G7(米国、日本、イタリア、フランス、ドイツ、イギリス、カナダ)の中では第5位と、決して高い数値ではないことが分かります。
このGDPが今回の「働き方改革」にどう関係するかというと、GDPが低い国は相対的に「労働生産性」も低く、働き方改革によってその状況を打開すべき局面にあるためです。
安倍内閣でも「一億総活躍社会」の取り組みに向けて、首相自ら働き方改革への姿勢を次のように発表しています。
「働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。」
こうして国をあげて取り組もうとしている「働き方改革」。企業単位では、どのように取り組んでいけばいいのでしょうか?そこで今回は、今すぐ実践できる働き方改革のポイントについて紹介していきます。
そもそも、働き方改革とは何か?
いざ働き方改革に取り組もうにも、そもそも「働き方改革」自体何なのか、取り組むことでどんな効果があるのかと、まだ明確に理解していない方も多いでしょう。これを簡単に説明すると、働き方改革とは「既存の労働環境見直し、会社全体の労働生産性を高める」取り組みです。
では、「労働生産性」とは何でしょう?これは、従業員一人あたりの産出量が高いか低いかを示します。具体的には「産出量(アウトプット)÷投入量(インプット)」で計算されるもので、インプットに対してアウトプットの方が高ければ、「労働生産性が高い」ということになります。
働き方改革の具体的な取り組みで言えば、3年ほど前なら「ダイバーシティ経営」、最近なら「リモートワーク」が盛んに取り組まれています。
ダイバーシティ経営とは、多様なスキルや経歴を持つ人材に対し、それぞれが最大限に能力を発揮できる環境を提供することで、モチベーション向上を目指し、最終的に会社全体の労働生産性を高めるものです。
リモートワークとは「労働場所はオフィス」という概念を捨てて、自由な場所での労働環境を提供することで、業務効率を良くしたり従業員のモチベーションを向上することで、会社全体の労働生産性を高める働き方です。
このように、働き方改革というのは、最終的には「労働生産性向上」に繋がる取り組みが該当します。
働き方改革の先進的事例を紹介
ここで、大手企業を中心にして取り組まれている、働き方改革の事例を紹介します。
トヨタ自動車 / 能力給や在宅勤務など多数の取り組み
日本を代表する自動車製造メーカー「トヨタ」は、様々な働き方改革に取り組んでいる先進企業の一つです。
例えば、年功給から能力給への変更。トヨタ自動車に勤める若手以上の従業員は、その能力によって給与が変動します。今まで年功給が当たり前だった日本企業の中、いち早く能力給を適用しました。
さらに、フレックスタイム制が適用されている職種(事務員、技術員)には、週2時間の出社を義務化した上で、在宅勤務可能としてます。
トヨタ自動車のこうした働き方改革の数々は、いずれも従業員の労働生産性を高めることが目的です。
東急百貨店 / 育児勤務者のために保育施設を提供
全国にショッピングビルや多事業を展開する東急百貨店では、育児しながら働く勤務者のために、土日・祝日限定の保育施設を提供しています。幼稚園や保育園は基本土日・祝日がお休みなので、不定期に働く人は育児に困ってしまいます。
そこで、東急百貨店は育児勤務者が土日・祝日も安心して働けるよう、保育施設を提供し、従業員の労働生産性を高めています。
今すぐ実践できる働き方改革のポイント
働き方改革というのは、特別に人事制度や給与制度を変えなくても、実践できるものがいくつかあります。
その代表的な取り組みが「リモートワーク」です。オフィス以外の場所で勤務ができるような環境を整えるには、社外からシステムにアクセスできたり、円滑なコミュニケーションが図れるようにする必要があります。
この点に関しては、クラウドサービスが大体の課題を解決してくれるでしょう。
クラウドサービスはインターネット上で提供されるので、インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでもアクセスできます。このため、クラウド型のシステムなら社外からでも簡単に利用可能です。
例えばクラウドERPは、経営に財務会計システムや営業支援システムなど、経営上重要な業務システムを一まとめに提供しているので、社内のシステム環境をすべてリモートワーク対応にしてくれます。
コミュニケーションに関してはチャットサービスを利用すれば、離れていても苦にならないほどです。
このため、リモートワークは最も実践しやすい働き方改革の一つだと言っていいでしょう。
働き方改革に取り組む上で、「方向性の決定」「取り組みのデザイン」「活動推進」という3つの順番で進めることを意識してください。
まずは働き方改革の大まかな方向性を決定します。現場にヒアリングなどを行い、現状課題などの実態調査を行った上で、方向性を決めます。
その後取り組みデザインにて、具体的な取り組みを決定していきます。テスト・検証を行った上で取り組みを確定し、社内での活動を推進していきましょう。その際は、推進後の効果検証も忘れずに。
まとめ
いかがでしょうか?日本の、ひいては日本企業の労働人口が少なくなっている今、働き方改革はすべての企業にとって重要な取り組みの一つです。働き方改革を実践し、労働生産性を高められれば、企業にとって大きなプラスになります。
働き方改革は制度変更などの取り組みに目が行きがちですが、システム面での取り組みがあることも忘れないでいただきたいと思います。
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