皆さんは自社の従業員満足度を把握していますか。そもそも従業員満足度とは、どういった要素で構成されているのでしょうか。本記事では、これからのビジネス環境で競争優位性を保つために重要な、従業員満足度という指標について詳しく解説します。
従業員満足度とはなにか
従業員満足度とは具体的にどういうものなのでしょうか。また、似たような単語に顧客満足度というものもありますが、これらに関連性はあるのでしょうか。まずは、そうした観点から従業員満足度の基本を改めて確認していきます。
従業員満足度を5つの要素で解説
従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)とは、従業員がその組織に対し、どの程度満足しているかという度合いを示す指標のことです。従業員満足度を構成する要素は主に以下の5つがあり、この5要素の状態次第で従業員満足度は大きく変わってきます。
企業の経営理念や企業文化への共感
自社の経営理念や企業文化に対して共感し、自社の信念を誇りに思っている従業員は、自社に対するロイヤルティが高く、自社に満足して働いていると考えられます。このような従業員は、業績に対する貢献度の高い行動を自発的に実践してくれる可能性が高くなります。
仕事に対する満足度
自社が社会に与える影響力や、自社の業績に対する担当業務の貢献度などは、いわゆる従業員のやりがいにつながる大事な要素です。仕事そのものの難易度にも多少影響されますが、自分の働きが何かの役に立っていると明確に実感できる場合、従業員の満足度は高くなる傾向にあります。
職場における人間関係や労働環境
多くの人が悩みを抱え、改善に取り組もうとするケースが多いのが、人間関係や労働環境の問題です。いくら仕事にやりがいがあったとしても、チーム内の雰囲気が非協力的であったり、リスペクトがなかったりするような状態では、誰もその環境で働き続けようとは思わないでしょう。
また見落としがちですが、物理的な環境の整備も重要です。「事務作業の処理が必要な業務を担当しているのに、スペックが低いパソコンしか貸与されない」「工場の安全管理が徹底されていない」など、コミュニケーションとは別領域での労働環境が悪い場合も、従業員の不満は拡大していきます。
上司からのマネジメントへの納得感
人間関係や後述の処遇にも通じますが、上司から適切な権限移譲をされていたり、適切な指導を受けたりしている従業員は、チームや組織に対する満足度が高くなる傾向にあります。会社という大きな枠組みに存在する制度や仕組みよりも、実際に日々活動する小さな単位での細やかなマネジメントのほうが、より従業員に大きな影響を与えるのです。
処遇や福利厚生
給与や人事評価、そのほか会社からのさまざまな物質的なフォローは、従業員の視点からは統合され「自身の会社への貢献に対して、会社がどの程度報いてくれたか」という指標になります。
これらの要素をしっかり網羅し、従業員満足度が高まった状態の先には、従業員が自社に対して高いロイヤルティをもち、献身的に業務に臨む姿が期待できます。このような状態を「従業員エンゲージメントが高い」といいますが、これは会社にとって非常によい状態です。この状態を作り出すことを念頭に従業員満足度と向き合っていけるのが理想的でしょう。
なお、下記記事でも詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
企業のエンゲージメントを向上させるメリットや具体的な施策について解説
併せてよく聞く顧客満足度との関係とは
冒頭でも少し触れましたが、従業員満足度と顧客満足度は全く関連性がないわけではありません。顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)とは、企業の製品やサービスを通じて得た価値や体験が、どの程度顧客のニーズを満たしたかを測定する指標です。一見すると全く接点がないように思えますが、実は従業員満足度を向上させることが、そのまま顧客満足度を向上させることに直結してくるのです。詳細は後ほど解説します。
従業員満足度が重要視されている背景とは
現在、多くの企業では従業員満足度が重視されています。その背景にはいくつか要因がありますが、最も大きな要因としては、少子高齢化の影響により生産年齢人口が減少傾向にあることが挙げられます。
技術の発達によって業務量は増加していく一方、働き手は減少の一途を辿っているため、国内の労働市場では働き手を奪い合うような状況が続いています。すなわち、各企業の従業員からすれば、「自社に明確な不満があれば他企業へ転職する」という選択肢をとりやすくなっているということです。
反対に企業側は、従業員に辞められ人手を失うのは避けたいので、従業員が長く働きたいと思える環境を整える必要が出てきました。それに伴い、従業員が自社に対してどれほど満足しているのかを把握するニーズが高まり、従業員満足度が重要視されているのです。
また、昨今はVUCA(ブーカ)の時代といわれており、将来の予測が非常に難しいとされています。それに加えて働き方改革の推進もあり、従業員の働き方や仕事・将来に対する意識が、これまでの時代とは大きく変わってきています。そうした従業員の変化に対し、企業側の理解が追いついているか、価値観にずれが生じていないかを測るために、従業員満足度が活用されている側面もあります。
従業員満足度が高まることによるメリット
このように、少子高齢化によりさまざまな変化が求められている現代では、従業員満足度の把握・向上に努める必要性が増しています。従業員満足度の向上には、大きく分けて「離職率の低下および人材獲得力の強化」「生産性の向上」「顧客満足度の向上」の3つのメリットがあります。実は、従業員満足度が高い企業というのは、これら3つの条件が満たされており、メリットがそのまま企業の強みにリンクしてくるのです。以下では、各メリットについて詳しく見ていきましょう。
離職率が低下し人材確保にもつながる
先述したように、企業に対する不満が解消されることで、人材の流出を抑えることが可能となり、離職率が低下します。離職率は採用面において非常に重要な指標であり、数値が低ければ低いほど「人材が定着している=職場環境がよいのだろう」といった具合に捉えられます。その結果、自社からの人材流出を防げるだけでなく、外部からの優秀な人材の獲得も進み、競争力が高まっていくという好循環が生まれるのです。
生産性が高まる
従業員エンゲージメントに通ずる話ですが、従業員が自社の環境に満足している場合、中には自発的により高い成果を出そうと奮起してくれる従業員も現れます。そうした従業員がどんどん増えていくと、職場環境がさらに改善され、生産性向上につながっていきます。さらに、ほかの従業員にも熱意が伝播していき、会社全体にプラスの雰囲気を浸透させていく効果も期待できます。
顧客満足度が高まる
前述のように、自発的に高い成果を残そうとする従業員が増えていけば、商品・サービスの質も次第に向上していきます。その結果、顧客によりよい価値や体験を提供できるようになり、顧客満足度の向上へとつながるのです。
従業員満足度向上の具体的な取り組みを3点紹介
最後に、従業員満足度を向上させるヒントとなる取り組みをご紹介します。
企業のミッション・ビジョン・バリューを共有する
企業のMVVを共有することは、基本事項ながら意外と難しいものです。MVVとは、自社が何のために存在するのかという「使命(Mission)」、自社がどのような姿を目指すのかという「理想(Vision)」、その理想を実現する下支えとなる「価値観(Value)」の頭文字をそれぞれとった、いわば企業が向かうべき道を指し示す羅針盤のようなものです。
MVVは、上意下達で無理やり従業員に示すものではなく、自然と社内に浸透させていく必要があります。効果的な方法としては、人事評価制度の上位目的にしっかりと組み込むことで、日々の業務や基本行動から意識させるのがよいでしょう。MVVへの理解の浅い従業員が多い環境では、多くの人間が「何のために自社で働いているのか」を理解していない危機的状況だと考えた方が良いでしょう。
なお、下記記事でも詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
企業でミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を浸透させる方法や見直しについて
福利厚生を充実させる
給与や福利厚生といった、待遇の具体的な条件を改善するのも有効です。給与アップがすぐには実現できなくとも、有給を取得しやすい環境を作ったり、事業運営におけるコストカットで浮いた費用を従業員に還元できる施策を検討したりと、少しずつ福利厚生を充実させていきましょう。福利厚生が充実しているという事実は、人材確保の観点でもアドバンテージとなるため、ぜひ検討してみてください。
職場環境を整備する
職場環境の整備に取り組むことも効果的です。従業員のライフスタイルはさまざまなので、リモートワークの活用やサテライトオフィスの提供など、従業員がワークライフバランスを考えて働けるような体制を整えましょう。労働時間の短縮に向けたRPA導入なども検討してみてもよいかもしれません。
また、コンプライアンス・ハラスメント対策も重要です。人種や性別に限らず、色々なものが一人ひとり違っていて当たり前です。誰一人として偏見や謂れのない中傷に苦しむことのないよう、風通しのよい職場環境の構築に努めましょう。
なお、下記記事でも詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
今さら聞けないデジタル技術を活用するメリット
まとめ
従業員満足度を高めることは、単に従業員に気持ちよく働いてもらうだけでなく、その先にある顧客への還元や、会社への貢献という観点からも非常に重要です。従業員満足度を高めるには、まず現状を分析することから始めていきましょう。
「Asana」は業務の可視化・一元管理を実現し、業務効率化や従業員満足度の向上に貢献するソリューションです。業務に無駄が生じていないか、適切なマネジメントが実施されているかなど、簡単に把握することが可能です。自社の従業員満足度の向上を図りたい方は、ぜひ導入をご検討ください。
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