デジタル技術の導入は業務効率化や生産性の向上、新たなビジネスの創出など、さまざまなメリットを企業にもたらします。この記事では、デジタル技術の代表的な要素や導入メリット、デジタル技術が求められるようになった時代背景について解説していきます。
デジタル技術を表す代表的な要素を紹介
デジタル技術は現在、生産性の向上や新しいビジネスの創生に欠かせない要素として注目されています。ここではデジタル技術の代表的な5つの要素について、概要やメリットをご紹介します。
1.AI(人工知能)
AI(人工知能)は、従来人の手で行われてきた作業や業務を、人間の誘導なしに正確に自動化し、業務の効率化を図るデジタル技術です。最近のAIは業務の自動化だけでなく、ディープラーニングによって自ら膨大な量のデータを取り込み経験として学習することで、より作業の精度を向上させたり、データに基づいた予測を提案したりすることが可能になっています。
このように、自律性と適応性を特徴とするAIを導入することで、画像認識や数値予測などさまざまな作業を自動化できます。
2.ビッグデータ
ビッグデータとは、「データの量(Volume)」「データの発生頻度・更新頻度(Velocity)」「データの種類(Variety)」の3つのVで構成された、さまざまな種類や形状をもつデータの集合体のことです。
企業が扱うデータには店舗別の売上情報や出荷情報、営業日の天気など多様な形式や種類があり、従来では適切な記録や保管が困難とされていました。しかし、コンピューターやインターネット、Hadoopと呼ばれる技術が普及したことで、これらビッグデータのリアルタイムな分析・可視化が可能になりました。
たとえば、防犯カメラの映像から買い物客が「一度手に取り戻した商品」や「かごに入れたものの購入しなかった商品」を記録し、データ分析につなげる事例もあります。このようにビッグデータを活用することで、膨大なデータに基づいた研究や新たなビジネスの創出、システム開発などが可能になるでしょう。
3.クラウド
クラウドとは、ソフトウェアやハードウェアなしで、インターネットを通じて必要なサービスを必要な分だけ利用できるデジタル技術のことです。従来はメールやストレージといったサービスを利用する際、ソフトウェアやハードウェアを購入し、インストールすることが前提でした。クラウドの登場により、さまざまなサービスをクラウド上で管理できるようになり、運用や保守にかかるコストを削減できるようになりました。
AIやビッグデータといったデジタル技術を利用したシステム基盤を構築する場合、自社サーバーや自社システムなどのオンプレミス環境では稼働が困難なため、クラウドの導入が欠かせません。また、クラウドはデジタル技術の活用に不可欠なだけでなく、クラウド上でシステムを管理することで、システムのブラックボックス化を防げるというメリットもあります。
4.RPA
RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、本来人間がPC上で行う業務をロボットによって自動化させるデジタル技術のことです。別名「仮想知的労働者(Digital Labor)とも呼ばれており、高齢化が進む日本における人手不足問題をカバーする手段として注目を集めています。
RPAは、自動化できる業務のレベルに応じて3段階のクラスが存在し、上位のクラスほど複雑な業務をこなせるようになります。たとえば、クラス1なら単純作業や定型業務、クラス2ならデータ収集や分析・音声解析、クラス3はディープラーニングや意思決定などより高度な業務に対応可能です。一見、AIと類似しているように思われますが、RPAはあくまで人間の指示が不可欠で、適応性がないためAIとは異なります。
RPAを導入すれば、業務の処理手順を操作画面から登録するだけで、さまざまな業務を自動でこなしてくれます。人間のように疲労などでパフォーマンスを損ねることもなく、24時間続けて稼働できるうえ、単純なミスが発生しない点もメリットです。
5.IoT
IoTとは「Internet of Things」の略で、本来インターネットに接続されていなかった家電や住宅といったモノにセンサーや通信機能を搭載することで、情報交換が可能になる仕組みのことです。
IoTを導入することで、これまでインターネットに接続できず収集できなかったデータを分析・処理し、新しい価値やサービスを生み出せるメリットがあります。これにより、離れた場所からモノを操作したり、データを収集したりといったことが可能になります。近年ではセンサーなどの機器やクラウドの普及・高性能化によって、IoTがより身近なものになっています。
実際にスマホや携帯電話、テレビやデジカメなど、身近にあるあらゆる家電がインターネットに接続する現状を目の当たりにしている方も多いでしょう。このように、さまざまなモノのインターネットを介した情報交換は、今後も発展していくことが予想されます。
デジタル技術が求められる時代背景
デジタル技術が求められるようになった背景には、新型コロナウイルスの感染拡大が大きく関係していると考えられます。新型コロナウイルスの感染拡大によって、不要不急の外出制限や非対面・非接触による活動が求められる中で、経済活動を維持する手段としてデジタル技術を活用した働き方が拡大しました。
実際、TDB景気動向調査2021年9月調査とともに行われた帝国データバンクの調査によると、新型コロナ拡大を機に新たに始めた取り組みとして、48.7%と半数近くの企業が「オンライン会議」を、3割近くの企業が「オンライン商談(30.3%)」や「在宅勤務(28.9%)」を導入していることがわかりました。このように新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまでデジタル化が導入されなかった企業までデジタル化が広がったのです。
また、「長時間労働の是正」などをはじめとする働き方改革の取り組みにより、時間外労働に上限規制が設けられたことで労働時間が減少し、これまで以上に業務効率化が求められるようになったことも一因と思われます。
デジタル技術を活用するメリット
では、デジタル技術を活用することで、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
働き方改革と人手不足に対応できる
デジタル技術を活用するメリットのひとつに、働き方改革と人手不足に対応できる点が挙げられます。
現在、日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少や労働時間の減少による人手不足が大きな問題となっています。人手不足問題に対応するためには、限られた労働力でこれまで以上の成果を生み出す必要があり、それにはデジタル技術の導入による生産性向上が欠かせません。
デジタル技術を導入することで、これまで人が行ってきた定型業務や単純作業を自動化できれば、これまでと同じ人手で生産性の向上を図れるようになります。
業務効率化が実現する
ビジネスチャットツールや文書のデジタル化などを活用することで、社内事業の可視化や円滑な情報共有ができるようになり、作業工程の自動化や全体最適化、作業者の負担軽減が実現し、業務効率化につながります。
業務が効率化されることで、空いた時間や人員をコア業務に割けるようになるほか、長時間労働の是正やフレックスタイム制度・短時間勤務の導入など、従業員が働きやすい環境づくりにも寄与します。
高付加価値の創出が実現する
デジタル技術を活用することで、蓄積したデータやノウハウを活かし、新しい事業やサービスである「高付加価値」を創出できるようになります。高付加価値を創出するデジタル技術の活用方法には、大きく分けて3つのモデルがあります。
- 高度利用モデル:人手による業務をデジタル技術で効率化させ、その分削減した人手や新たに得たデータを活かし、新製品の提案や新事業への展開を図るモデル
- 横展開モデル:デジタル技術を活用した新たなデジタルサービスとして、自社ノウハウを提供するモデル
- 起業モデル:本業の技術やノウハウを活かしたデジタルツールを開発し、新しいビジネスを立ち上げるモデル
市場における競争力を維持・拡大していくためには、デジタル技術の導入だけで満足せず、有効活用して業務効率化を図り、高付加価値の創出や発展につなげることが重要です。
併せて知りたいDX(デジタル・トランスフォーメーション)について
デジタル技術と類似した言葉に、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というものがあります。DXとは、デジタル技術の普及により人々の生活を向上させる変革を指し、これまでの価値観や枠組みに囚われない全く新しい革新をもたらすもの、という意味もあります。
DXの基本となる技術は、先述したIoT・ビッグデータ・AI・クラウド・RPAといったABCDのデジタル技術が該当します。これらのデジタル技術を活用して社内のDXを進めることは、今や企業の競争力維持や強化に不可欠な要素となっています。
このDX推進は一企業だけでなく、国家レベルの取り組みとしても注目を集めています。実際、2018年12月には経済産業省がDXを推進する企業に対して「DX推進ガイドライン」を公開し、2020年には「DX銘柄」の選定を行っています。
ちなみにDX銘柄とは、デジタル技術の導入により優れた実績を残した企業を選定・紹介したものです。選定された企業のさらなる活躍や、その他の企業のDX推進を期待するという目的があります。
まとめ
代表的なデジタル技術には、IoT・ビッグデータ・AI・クラウド・RPAなどがあります。これらの導入により業務効率化や生産性向上だけでなく、空いた人的リソースや蓄積されたデータの有効活用が実現し、新しいサービスや製品といった「高付加価値」を生み出せるようになります。このようにデジタル技術を導入したDX推進は、今や企業だけでなく日本全体の課題といわれています。
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