企業が中長期的に発展していくためには、従業員のパフォーマンスを最大化する企業風土や施策が求められます。そこで重要な指標となるのが「エンゲージメント」です。本記事では、従業員のエンゲージメントを高める重要性や具体的な施策について解説します。併せて、エンゲージメント向上を推進している企業事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
エンゲージメント向上とは
企業とは、製品やサービスの創出を通じて社会に付加価値を提供し、その対価として利益を得ることで発展していく組織です。そして、組織の健全な成長と発展を通じて社会に貢献することが、企業の存在意義といえるでしょう。企業の成長と発展を支えているのは人的資源たる従業員であり、いかにして人材の労働意欲や貢献意識を最大化するかが課題となります。そこで大きな役割を担うのが、従業員のエンゲージメント向上です。
エンゲージメントとは
「Engagement(エンゲージメント)」とは、「約束」や「契約」といった意味合いをもつ英単語であり、ビジネスの領域では組織に対する愛着心や信頼、貢献意欲などを表す概念です。たとえば、「従業員エンゲージメント」は企業と従業員の相互における信頼関係や組織に対する貢献意欲などを指し、「顧客エンゲージメント」は企業の商品やサービスへの愛着心、または企業と顧客の信頼関係などを意味します。
近年はAIやIoTなどの技術革新によって、業務プロセスの省人化・自動化が進展しつつあります。
しかし、どれだけテクノロジーが進歩しても、ビジネスの土台にあるのは人間関係であり、組織の発展を支える基盤となるのは従業員です。そのため、人材マネジメントの領域では、従業員のエンゲージメントをいかにして向上させるかが重要な課題といえます。
従業員のエンゲージメントが高い状態とは、人材が仕事への情熱や熱意をもち、企業の成長と発展に向けて自律的かつ能動的に動いている状態を指します。そして、そのエンゲージメントを支えている要素は、組織に属することそのものに誇りを感じるような企業理念や経営ビジョンへの共感、あるいは働きやすい労働環境や仕事へのやりがいなどが挙げられます。
併せてよく聞く従業員満足度との違い
従業員満足度は福利厚生や労働環境、給与や賞与といった企業の制度や仕組みに対する満足度であり、企業そのものへの愛着心や信頼感ではありません。したがって、従業員満足度は組織の制度や給与体系の変更などで低下してしまう可能性があります。従業員のパフォーマンスを最大化するためには、内発的動機付けに基づく自発的なモチベーションが必要であり、そのためにはいかにしてエンゲージメントを向上するかが重要となるのです。
エンゲージメントが注目される理由
現代は「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとって「VUCA(ブーカ)」の時代と呼ばれており、市場の変化や人材の流動化が加速しています。このような時代に企業が競争優位性を確立するためには、顧客満足度の向上を目指すのはもちろん、いかにして優れた人材を確保するかが重要課題といえます。より優れた人材を確保し、そのパフォーマンスを最大化するべく、エンゲージメントの向上が注目を集めているのです。
エンゲージメント向上のメリット
ここからは、従業員のエンゲージメント向上によって得られる具体的なメリットについて見ていきましょう。主なメリットとして挙げられるのは、「離職率の低下」と「生産性や利益の向上」の2つです。
離職率が低下
現在、国内の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに下降の一途を辿っており、さまざまな分野で人材不足が深刻化しています。従業員が企業に属することそのものに誇りや喜びを感じられる組織体制を構築できれば、労働意欲や貢献意識の向上に寄与するとともに、離職率や定着率の改善につながるでしょう。実際に株式会社リンクアンドモチベーションの調査では、従業員エンゲージメントの高い企業ほど離職率が低い傾向にあると示されています。
企業の生産性や利益が向上
従業員が企業の理念やビジョンに共感し、仕事にやりがいを感じられる経営体制を整備できれば、能動的に業務に取り組むようになり、労働生産性の向上に寄与します。さらに報酬の獲得や罰則の回避といった外発的動機付けではなく、愛着心や探究心といった内発的動機付けに基づくモチベーションが高まるため、サービスレベルや顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
エンゲージメント向上のために何をする? 具体的な施策の紹介
ここでは、従業員エンゲージメントを向上するための具体的な施策や取り組みをご紹介します。
企業の経営理念共有
従業員は、ただ単に給与や賞与を得るためだけに働いているわけではありません。とくに日本は衣食住が満たされた豊かな国なので、多くの人々が仕事に対するやりがいや充実感、または自己実現といった高次の欲求を求める傾向にあります。崇高な企業理念やイノベーティブな経営ビジョンを示し、従業員と共有することで帰属意識が高まり、エンゲージメントやロイヤルティの向上につながります。
ワークライフバランスの推進
ワークライフバランスとは、端的に表現するなら「仕事と生活の調和」です。仕事と生活の調和を図ることで両方を充実させ、経済的な発展とともにゆとりのある暮らしを目指すことが、ワークライフバランスを推進する目的といえます。多様化した従業員の価値観や生活スタイルに合わせた労働環境を整えることで、ワークライフバランスの充実につながり、ひいては従業員のエンゲージメント向上に寄与します。
従業員のモチベーションが上がる仕組みを作る
風通しのよい企業風土を構築する、あるいは日頃から従業員同士のコミュニケーションを大切にするなど、従業員にとって働きやすい職場環境を整えることでエンゲージメントの向上につながります。また、公平かつ公正な人事評価制度を確立したり、福利厚生や休暇制度を充実させたりするなど、従業員のモチベーションを高める仕組みの整備も効果的な施策です。
エンゲージメントが高い企業の成功事例
最後に、従業員のエンゲージメント向上を推進する企業の取組事例について見ていきましょう。
パートナーへのミッション共感を働きかけたコーヒーチェーン店
世界最大のあるコーヒーチェーンは、企業と従業員が対等な立場であるという理念を示しており、従業員を「パートナー」と呼称します。2000年代の半ば頃に業績が悪化した時期があったものの、従業員エンゲージメントを重視した経営体制を整えることで、業績改善に至ったという経緯があります。そのため、エンゲージメントを非常に重視しており、新しいパートナーが入社する際は経営理念を共有し、自発的に仕事に取り組む体制を整えるというマネジメントを徹底しています。
直属の上司をカギとした日本トップシェアの建設機械メーカー
国内トップシェアを誇る建設機械メーカーでは、従業員エンゲージメントの向上においては直属の上司が重要な役割を果たすと考え、マネジメント層に向けて研修やワークショップなどを実施しました。マネジメント層がイノベーティブなチームをつくるべく研修で学び、現場で実践し、同時に従業員がプロフェッショナルとして活躍するための教育プログラムを体系化することで、組織全体におけるエンゲージメントの向上を実現しています。
まとめ
エンゲージメントとは、組織に対する愛着心や信頼などを表す概念です。企業が中長期的に発展していくためには、いかにして従業員のエンゲージメントを高め、労働意欲や貢献意識を向上するかが重要な経営課題といえるでしょう。このような人材マネジメントを最適化するためには、優れたデジタルソリューションの活用が不可欠です。従業員エンゲージメントの向上を推進する企業は、組織内のさまざまな業務データを一元的に管理するワークマネジメントツール「Asana」の導入を、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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