「仕事のための仕事」にすべての元凶がある②
「仕事のための仕事」が多い

 2020.10.26  2024.12.02

仕事とは上司から命じられたこと

そもそも“ 仕事” とは何でしょうか。
今、「あなたは日々、何の仕事をしていますか?」と問いかけられて、明確に答えられるビジネスワーカーは少ない気がしています。
「今やっている仕事は上から振られたものです」
こんな答えが多く聞こえそうです。
そして、これこそが問題であり、「仕事のための仕事」が発生しやすい原因です。
自分の仕事は、つねに誰かから指示されるものであるという前提に立ってしまえば、「その仕事の意味や背景」「全体の中での優先順位」、あるいは「もともと自分がすべき仕事内容として振られてきたのか」などの考えには至りにくいのです。
結果的に、全体に貢献しにくい仕事や無駄な仕事に割かれる時間が多いとしても、それを意識しにくい土壌が生まれてしまいます。

仕事とは上司から命じられたこと01

海外の企業では、この状況が起こりにくい明確な理由があります。
それは「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」が存在するからです。
簡単にいえば、社員1人1人に「ウチでは、あなたにこういう成果を期待し、そのためにこの仕事をしてほしい」と定められているのです。
営業、経理、法務、生産管理など、それぞれの職種に応じた具体的なジョブ・ディスクリプションが設計されています。
形式は会社によってさまざまですが、採用時にA4の用紙に1~2枚程度の文書が、雇用契約とは別に示されます。
このジョブ・ディスクリプションありきで、そのポジションへの採用が決まります。
応募者も入社前から、自分に何が期待されていて、どこまでできる権限と責任を与えられるかを知るのです。

仕事とは上司から命じられたこと02

事前に、自分の役割と責任範囲が明確になっている以上、そのタスクを達成することが、それぞれ担当する仕事になります。 遂行のために必要な業務内容は、自分自身で能動的に考えなければいけません。
構造上、ジョブ・ディスクリプションとは無関係の作業を、上司だからと無条件にどんどん振られて指示が降りてくる状況なんてありえないのです。
このジョブ・ディスクリプションが、日本の企業ではあまり厳密でありません。
そもそも、場合によっては存在せず、仕事の内容は部署名として書かれているだけというケースも多いわけです。

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チームの中で自分の役割がわからない

入社したときから、自分の仕事の責任と権限の範囲が一貫して明確でないために、「仕事のための仕事」が発生しやすいと説明しました。
もしも上司が組織のなすべき仕事の采配を一手に握り、日々発生する業務をそれぞれ細分化して個人に割りつけているような働き方のスタイルだとすると、あなたをはじめとする組織のメンバーが自律的、自発的に動く姿はあまり期待できません。

チームの中で自分の役割がわからない01

このように、完全なトップダウン制は、上司がボトルネックになりやすいのです。
多くの場合、誰に何が期待され、どれだけのアウトプットが求められるかに対する“ 設計図” が予め示されません。
必然的に、自分の仕事が何であり、会社全体の構造の中でどのパーツを担い、何を期待され、どこまでの責任を有するのかも明確ではない。
必然的に、仕事は“ 上から与えられるもの” と認識してしまう。
上司から依頼される仕事に対して、全体のどんな位置づけなのかも、優先順位も、無駄か必要かさえも考えが及ばなくなりがちです。

チームの中で自分の役割がわからない02

 

それでは、チーム内の各人に期待されている役割、アウトプット、責任が明らかになっていたらどうでしょう。
自分のやるべきことは明らかになっているので、上からの指示を待つまでもなく、目標に向かって創意工夫しながら進んでいくはずです。

 

チームの中で自分の役割がわからない03

じつは、日本にはその働き方ができているビジネスワーカーもいます。
たとえば、製造業の工場です。工場内のラインの作業工程には、「誰が、何を、いつまでに」やるのかが、不明であいまいなものはありません。
「あなたはこのラインで最終組立て工程を担当します」と明確に理解し、それぞれが作業に取り組んでいます。
また、全体の中で何をつくっているのかもわかっていますし、仕事全体として極力「ムリ・ムダ・ムラ」の排除や品質の安定的向上のための創意工夫を自ら行っているでしょう。
材料や工具がどこにあるのかを人に聞いて探し回ったり、上司から無関係な作業を突然指示されたりすることもないのです。 仮に上司とそりが合わなくても、クオリティが高くて計画通りのアウトプット(作業完了)を出している人に対して、根拠なく悪い評価をつけるのは不当であるとみんなも認識しています。
しかし、オフィスで働くナレッジワーカーの立場になればなるほど、ジョブ・ディスクリプションが曖昧になるのは残念です。上司と部下の間で閉じた評価になり、アウトプットの測り方が不透明になってしまう。
チームの中での自分の仕事が何であるかも見えづらく、結果的に仕事の成果もわかりづらい働き方になってしまっています。

次回、役割や責任の所在が曖昧なことが原因で起こっている、上司と部下と仕事の関係性を解説します。

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