テレワークを導入することになったものの、その業務管理をどうすればよいのか悩んでいる企業担当者の方もいるでしょう。本記事では、そのような人に向けて、テレワークにおける業務管理の課題やポイント、おすすめのツールなどについてご紹介します。
テレワークにおける業務管理の課題
働き方改革の推進や新型コロナウイルスの流行などによって、テレワークを導入する企業が増えてきました。テレワークにはさまざまなメリットがある反面、業務管理においてはいくつか課題も残ります。
まずはテレワークにおける具体的な課題について、4つの観点から解説します。
仕事状況の確認
従来のワークスタイルなら、出社さえすれば、社員の出勤状況や仕事の進捗などの確認は容易に行えました。しかし、テレワークの場合、業務時間中の様子や作業状況など、社員がどのような状態でいるのかが見えにくいという難点があります。
これにより、管理者としては状況に合わせて指示を出すことが難しく、必要なときに必要な指示やアドバイスができない場合もあるかもしれません。
また働く側としても、上司や同僚に自分のしていることを分かってもらいにくくなります。努力していても、結果として目に見える分の評価しかしてもらえない可能性があるため、適切な評価がされない恐れもあるのです。
労働時間の把握
2017年に厚労省によって「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が出され、全労働者の労働時間を把握することが義務付けられました。しかし、テレワークでは同じ空間で仕事をしていないため、社員がいつ働いているのか、どのくらいの時間働いているのかなどを把握しにくい点が問題です。そのため、長時間労働やサービス残業を発生させる懸念もあります。
本来の勤務時間を大幅に超過し作業していたとしても、周囲に気付いてもらえないため、肉体的・精神的負担が重くかかり、身体を壊す社員が出る可能性もあるでしょう。逆もまた然りで、勤務時間中に仕事をせず遊んでいる人がいても監視できず、注意することもできない点が問題です。
コミュニケーション
テレワークでは対面で気軽にコミュニケーションをとれないため、コミュニケーションの不足が懸念されます。本来であれば、相手の悩みや作業状況などを理解・共有するため、業務管理手段の1つとしてコミュニケーションは使われます。そんなコミュニケーションが不足することによって、相手の状況が分かなくなり、フォローが遅れてしまう可能性があります。
また、直接相手の表情を見たり声を聞いたりもできないため、伝達の「質」が低下しかねない点も問題です。声を聞くだけでは、相手がどのような表情をしているのか伝わりにくく、メールなど文面だけの場合は、なおさら相手の表情や感情を読み取りにくいでしょう。そのせいで、指示が的確に伝わらなかったり、相手が抱えている不満に気付かず業務を進めたりする恐れもあります。
セキュリティ
社内のパソコンであれば、インターネットを利用する際も、強固なセキュリティ対策が行われているため安心できます。しかし、テレワークの場合は同じような保護環境が整っていないため、外部への情報流出や不正アクセスなどの被害に遭うリスクが高くなるのです。
近年では、カフェや駅などで公共の無線LANを利用できる場所が増えていますが、中には暗号化されていないなど、セキュリティ対策が甘いものもあります。それらを利用することで、重要なメールや機密情報を部外者に見られたり、社内サーバーにアクセスするためのIDやパスワードが漏れたりする危険もあるのです。社員が何をしているのか見えにくいことも、セキュリティ面の不安へ繋がっています。
また、サイバー攻撃への懸念だけでなく、パソコンやタブレットなどの端末を社内から持ち出している場合は、紛失・盗難などのリスクも考慮しなければなりません。
テレワークにおける業務管理のポイント
ここからは、テレワークで業務管理する際のポイントを4つご紹介します。
仕事状況の報告体制を整える
まずは、社員からの報告で仕事状況を確認できるような体制を構築するとよいでしょう。このような体制を整えられれば、ほかのメンバーの作業進捗を把握できるだけでなく、停滞している作業の早期発見につながったり、分からないことについてすぐに相談できたりする環境を作ることができます。
具体的な方法としては、チャットアプリやクラウドサービスの利用などが挙げられます。報告の方法も含めて、各々の状況確認をしやすい仕組み作りが大切です。
勤怠管理方法について見なおす
勤怠管理方法をテレワークに適したものにするよう見直すことも重要です。始業や終業といった、勤務のポイントが分かるものを活用するとよいでしょう。たとえば、始業・終業のタイミングで、上司に電話やメールで報告することも1つの方法です。またICT技術を導入し、グループウェアやリモートデスクトップ機能を活用している企業も増えています。
ほかにも、ログインの記録が自動保存されるチャットアプリの機能を活かして、始業・終業時刻を残したり、労働時間の計算をしたりすることも可能です。ネットワーク機能搭載のタイムレコーダーを導入すれば、パソコンやスマートフォンを利用して始業・終業時間の打刻ができるため、勤怠管理が容易になるでしょう。
なお、どのような管理方法であったとしても、必要以上の管理体制を敷くことは、社員の精神的ストレスにつながる恐れがあります。あまり社員側の負担が大きくならないよう配慮することが大切です。
セキュリティリスクへの対策をする
テレワークにおけるセキュリティ対策は、社員任せにせず、企業側も考えなくてはいけません。まずは、社内のセキュリティーポリシーを見直したり、社員の意識を高めたりするための、情報セキュリティなどに関する研修を実施したりするとよいでしょう。
また、個人IDと紐づけした端末を使用し、ログインの際はIDやパスワードだけでなく、生体認証をはじめとした多要素認証を取り入れることで、より強固なセキュリティ対策につながります。端末を盗まれたときの対策として、ログインデータを保存しない・暗号化するなども効果的です。
ほかにも、万が一の事態に備えてデータのバックアップをとっておくことや、セキュリティ対策ソフトをインストールすること、Wi-Fi利用時に暗号化されているかどうかの確認や、VPNの使用などを徹底しましょう。このようにセキュリティ対策では、社員にリスクを減らす働き方を推進したり、端末に対策を施したりすることが求められます。
ツールを活用する
業務管理の機能が備わったツールを導入することもおすすめです。具体的にはチャットやWeb会議ツール、勤怠管理システムなどが挙げられます。
メールではなくチャットでやりとりをすることで、気軽にコミュニケーションを図れるでしょう。Web会議ツールは、相手の顔を見ながら話ができるため、メールやチャットよりも相手のレスポンスが分かりやすいです。
勤怠管理システムは、相手とのコミュニケーションを図る機能だけでなく、勤務時間や作業状況を記録する機能が備わっている点が特徴です。インターネット環境があれば、システムにログインして勤怠状況を入力できます。集計作業も自動でできるため、労働時間や休憩時間などの集計を手動で行う手間がかかりません。
また、労働時間などの勤務状況をリアルタイムで確認できるため、長時間労働の危険を素早く発見できます。さらに、ほかのシステムとの連携が可能なものであれば、給与や社会保険料の計算を自動で行い、必要に応じて残業代や手当金などの算出も可能です。ツールには様々な種類があるので、それぞれの違いや特徴を理解して活用するのがよいでしょう。
このようなシステムを導入することで、手軽に社員の勤務状況を管理できるだけでなく、業務効率化や事務作業の省人化にもつながります。
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テレワークにおける業務管理に活用できる便利ツール例
テレワークで業務管理をするにあたり、活用できるツールはさまざまです。ここからは、業務管理に活用できるおすすめの便利ツールを5つピックアップし、それぞれの特徴をご紹介します。
Asana
世界中で何百万人ものユーザーに選ばれているプロジェクト管理ツールです。優先度や期限を設定するなど、各タスクのプラン作成を一元的に管理できます。操作性もシンプルなため、パソコン操作に慣れていない人でも使いやすい点が魅力です。
Asanaでは、それぞれのタスクの進捗状況などを全員で共有できるため、メンバーの作業状況を確認しやすく、停滞しているものがあった場合もすぐに対応できます。タスク一覧はExcel表に近いレイアウトなので、これまでExcel表で管理していた企業でも、スムーズな導入が見込めるでしょう。
また、チャット機能もあるため、気になることがあった場合もシステム上でのやりとりが可能です。さらに、すでに利用しているツールがある場合、そのツールと連携させて利用できる点もうれしいポイントです。
Jooto
1万以上の企業に利用されている、クラウド型のタスク・プロジェクト管理ツールです。基本的な操作はドラッグとドロップのみで、簡単にタスク管理できる点が特徴といえるでしょう。直感的な操作が可能なため、このようなツールに慣れていない人でも気軽に利用できます。また、ガントチャート機能で全体スケジュールを可視化したり、作成したタスク内でデータを共有できたりと、機能面も充実しています。
ジョブカン勤怠管理
誰でも簡単に使えるシンプルな操作性が魅力の勤怠管理システムです。出勤管理はもちろん、有給管理や残業管理など、勤怠管理業務に必要な機能が備わっています。これらの機能は、必要なもののみ組み合わせて使用できるため、企業ごとのニーズに合わせた運用が可能です。また、勤務形態や雇用形態ごとの設定もできるため、非常に柔軟性の高いツールといえます。
MITERAS 仕事可視化
このツールでは、申請された勤怠時間とパソコンの実際の稼働時間を比較し、記録する機能が備わっているため、社員の労働時間の把握ができます。これにより、サービス残業などの過重労働を防止することが可能です。また、ソフトウェアの利用状況を確認できるため、いつ、どのような作業をしているかの把握も容易になるでしょう。
jinjer勤怠
こちらはクラウド型の勤怠管理システムで、労働時間や残業時間の管理ができます。簡単な操作性や充実したサポート体制も魅力です。必要な機能を選び、その分だけの料金を払う従量課金制を採用しているため、自社に不要な機能を削ぎ落とすことで、余計な出費を抑えつつ効率的な運用が見込めます。
もっと見る:テレワークとは?厚生労働省のテレワークガイドラインを解説
まとめ
テレワークにおける業務管理の課題を解決するためには、業務管理機能が備わっているツールを活用するとよいでしょう。社員一人ひとりの作業状況や労働時間の管理ができるほか、全体の生産性向上にもつながります。
特に「Asana」は、操作性がシンプルで使いやすく、機能も充実しているため、ツール初心者でも安心して利用できます。よりよい業務管理のためにも、ぜひ導入を検討してみてください。
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