業務の見える化は、業務効率化や属人化防止、コミュニケーションの円滑化、トラブル防止、社員のモチベーションアップなどのメリットをもたらします。業務効率化や生産性向上を目指す企業には欠かせません。
業務の見える化とは?
「業務の見える化」とは、企業全体の業務内容を明確にし、担当者以外でも状況を把握できるようにすることを指します。これは「業務可視化」とも呼ばれ、担当者に蓄積されたナレッジが共有されない「ブラックボックス化」や「属人化」を防ぐ手法です。
業務の見える化をすると、「どの業務がどこで滞っているのか」「どこに問題が生じやすいのか」などの課題が一目でわかるため、解決に向けた迅速なアクションを起こせます。誰にでもスムーズに業務の引き継ぎを行える環境は、企業全体のパフォーマンスが向上します。
業務の見える化によるメリット
業務の見える化は、企業に以下のメリットをもたらします。
- 業務を効率化する
- 業務の属人化を防ぐ
- 社員同士のコミュニケーションを円滑化する
- ミスやトラブルを防ぐ
- 社員のモチベーションを向上させる
業務を効率化する
業務の見える化は、業務の内容や状況などの全体像を把握できることから、効率化を促進します。3M(ムダ・ムリ・ムラ)を排除しつつ、優先順位を見直せるため、業務フローの簡素化が可能です。
また、業務量のバランスを視覚的に確認することで、特定の担当者に業務の負担が偏ることを防ぎます。最終的に、コスト削減や長時間労働の改善にもつながります。
業務の属人化を防ぐ
業務の属人化とは、特定の担当者のみに蓄積されたナレッジが担当者以外の社員に共有されず、業務内容を理解していない状況です。こうした状況下では、担当者が長期不在になる際に、業務が停滞する可能性があります。
さらに、同じ人が同じ業務を繰り返すためにチェックが曖昧になるなど、担当者のちょっとしたミスが大きなリスクにつながることが懸念されます。最悪の場合、担当者の退職によって、一部の業務がブラックボックス化してしまうかもしれません。
しかし、業務の見える化をすれば、他の社員や上司も業務内容を把握できるので、誰が担当しても同じ品質で同じ結果を出せます。
業務プロセスの可視化についての詳細は、以下の記事をご参照ください。
社員同士のコミュニケーションを円滑化する
業務の見える化により、社員同士がお互いの業務内容を把握することで、相互理解が深まります。業務に関する疑問やトラブルが発生しても、相談しやすい環境が整うため、1人で担当するよりも迅速な解決が可能です。
また、コミュニケーションの活性化から生まれた新しいアイデアをもとに、新たなサービスや商品が開発される可能性もあります。結果的に、企業の成長や利益向上が期待できます。
ミスやトラブルを防ぐ
業務の見える化は、ミスやトラブルを防ぐのに役立ちます。1人だけではなく、複数人の目でタスクを確認できるため、ミスやトラブルを発見しやすくなります。
また、各社員が異なる進め方をしていても、業務フローを統一して一貫性を持たせることで、ミスやトラブルの未然防止に有効です。仮にミスやトラブルが発生した場合でも、その影響を最小限に抑えられます。
さらに、明確な課題をもとにフォローアップしやすくなるので、安定的な業務の運用に寄与します。
社員のモチベーションを向上させる
業務の見える化によって、管理職は各社員の業務遂行能力を定量的に判断できるため、公正な人事評価を行えます。これにより、社員は自身の努力が適切に評価されている実感を得られます。
その結果、社員のモチベーションや業務への意欲、パフォーマンスが向上する効果をもたらします。
業務で見える化するべき情報
業務の見える化に取り組む際は、どの情報を重点的に可視化すべきかを見極めることが重要です。特に、以下の情報が見える化の対象として挙げられます。
- 業務内容やタスクの進捗状況
- 業務プロセス
- ナレッジ
業務内容やタスクの進捗状況
チーム全体の業務内容やタスクが見える化されることで、誰がどの業務を担当しているかが明確になり、進捗状況を一目で把握できます。これにより、マネジメント側はタイムリーなフィードバックやサポートを提供できる上、遅延や無駄の防止が可能です。
例えば、ある社員の業務が遅れている場合、早期に対策を講じることで全体の進捗を保ちつつ、社員間で生じている業務の偏りを改善できます。また、社員の負担やストレスの軽減にも有効です。
結果として、チーム全体の業務効率化や生産性向上につながり、長時間労働の削減や人件費の節約など、多くのメリットを得られます。
業務プロセス
業務プロセスを見える化することで、作業の流れが分かりやすくなり、効率的に仕事を進めるための環境を整えられます。
たとえば、プロセスをフローチャートやマニュアルにまとめて明確にすると、手順を統一することが可能です。これにより、作業のばらつきや遅れが解消され、ムダ・ムリ・ムラを排除できます。
このように、プロセスを統一して標準化することで、業務の効率化や生産性の向上が実現し、スムーズな運営が可能になります。
ナレッジ
ナレッジを見える化することで、社員が持つ知識や経験を全社で共有でき、業務の効率化やミスの防止に役立ちます。このように、個人が持つ「暗黙知」を「形式知」に変換し、企業全体に蓄積する取り組みが「ナレッジマネジメント」です。
例えば、特定の業務手順やトラブル対応策を記録しておくことで、他の社員はその情報を参考にできます。新入社員もベテラン社員の技術やノウハウを効率よく学ぶことができ、人材育成がスムーズになります。
さらに、蓄積されたナレッジは経営戦略の策定や新しいアイデアの創出にも役立ち、企業の競争力や成長に大きく貢献します。
業務を見える化する方法
業務の見える化への取り組みには、以下の方法を用いることが重要です。
- 業務内容を把握する
- 業務マニュアルを作成する
- タスク管理ツールの導入
業務内容を把握する
業務を見える化する第一歩は、業務内容の把握です。各タスクの流れや必要とされるスキル、人数、時間、業務量などを洗い出し、全体の業務フローを明確にする必要があります。
例えば、業務フローを文書や図表で可視化すれば、工程のムダ・ムリ・ムラの有無がわかりやすく、改善ポイントが見えてきます。
大規模な企業の場合は、アンケートやインタビューを通じて、現場の社員から業務内容をヒアリングすることもおすすめです。正確な情報を得ることで、業務の効率化や最適化に役立ちます。
業務マニュアルを作成する
業務の見える化を進めるには、マニュアル作成も重要です。図表やチャートを使用して、工程や内容が誰でも理解できるマニュアルを作成しましょう。はじめに全体の流れを書き出し、後から各社員が補足情報を追加していく形にすると効率的です。
また、マニュアルは作って終わりではなく、定期的に更新することが欠かせません。電子ファイル化して管理すれば随時編集や更新が可能であるため、担当者が変わっても継続できます。
ただし、マニュアルはタスクの可視化を補助する材料のひとつであり、すべての業務の見える化を実現するわけではない点に留意しましょう。
タスク管理ツールの導入
タスク管理ツールを導入することで、部署やチーム内のタスクの進捗状況をリアルタイムで可視化できます。
Excelなどのツールを使用して、業務を見える化するためのシートを作成すれば、各タスクの進捗状況や所要時間などの一元管理が可能です。これにより、複雑なプロジェクトの進捗も見える化されることから、関係者全員の情報共有が容易になり、報告や確認作業を減らせます。
ただし、導入前に既存のシステムとの連携が可能であることと、社員にとって操作性がよいことを確認しておきましょう。
業務を見える化する上での注意点
業務を見える化する際、以下の注意点に留意する必要があります。
- 手段の目的化を防ぐ
- 分析・改善・アップデートを行う
手段の目的化を防ぐ
業務の見える化は、業務負担の軽減や生産性の向上、業務効率化といった最終的な目標を達成するための手段です。業務を見える化すること自体が目的にならないように注意する必要があります。目標を達成するまでの工程を逆算して、どの業務を優先的に見える化すべきかを考えましょう。
仮に目的を定めずに見える化だけを進めた場合、かえって余計な業務が増えて、社員の不満を招きかねません。また、手段が目的化すると、見える化自体に過度な労力が費やされ、業務改善の本質から離れてしまうおそれがあります。
したがって、最終目標に基づいて、必要な範囲から段階的に見える化を進めていくことが大切です。
分析・改善・アップデートを行う
業務の見える化が完了したら、その後のプロセスとして分析と改善を行います。分析で課題を洗い出したら、必要に応じて業務フローや工程を改善します。社員から直接フィードバックを集めることで、実際の現場で負担を感じている部分など、具体的な課題の把握が可能です。
さらに、見える化した情報は定期的にアップデートしましょう。特に、ストック情報である業務フローやナレッジは、変更が生じた際に最新の状態へ更新することが重要です。
こうした一連のプロセスにより、業務の見える化が長期的に役立つツールとして機能することで、企業全体における情報共有や課題解決につながります。
まとめ
業務の見える化を進めることで、業務の属人化を防ぎ、社員間のコミュニケーションが円滑化します。さらに、公平な人事評価を行いやすくなるため、マネジメント層の負担も軽減されます。業務の見える化をスムーズに進めていくには、ツールの活用がおすすめです。
Asanaのワークマネージメントツールは、既存ツールとの連携ができ、導入の負担が少ないことがメリットです。チーム内のタスクの一元管理も可能なので、社員同士のコラボレーションも効率的に進められます。Asanaを導入すれば、業務のフォローアップにかかる時間を節約でき、業務効率化や生産性向上も期待できます。
- カテゴリ:
- 生産性向上