企業が市場の競争優位性を確立するためには、組織全体における継続的な業務プロセスの改善が求められます。そこで重要となるのが、業務プロセスの可視化です。本記事では、業務プロセスを可視化する必要性を考察するとともに、具体的なメリットやポイントについて解説していきます。
業務プロセスを可視化する理由
企業が継続的に発展するためには、業務プロセスの改善と効率化が欠かせません。企業の存在意義とは、「製品やサービスの提供を通じて顧客の需要を満たし、社会と人々の幸福に貢献すること」です。その結果、企業は利益を得ることで発展していきます。
つまり、企業にとって最も大切となるのは「価値創造」です。社会から必要とされる価値を創出し、よりよい社会づくりに貢献することが、企業の存在意義と言えるでしょう。
業務プロセスの可視化は、定量的な分析に基づいた、論理的かつ合理的な経営戦略の構築に寄与します。企業経営に終着点は存在せず、価値創造に向けた継続的な改善が必要です。だからこそ、企業は決して驕ることなく常に業務プロセスを見直し、よりよい方向へと改善していく必要があります。業務プロセスの可視化はその第一歩です。新たな価値創造へと至るためには、現状における問題や課題と向き合わねばなりません。現状の経営課題を分析することで問題点を発見し、製品やサービスの品質向上につながります。
また、業務プロセスを可視化することで、RPAの効率化な運用が可能になるのも大きなメリットです。「RPA」とは「Robotic Process Automation」の略称で、請求書作成や伝票記帳といった定型業務を自動化するシステムを指します。RPAをわかりやすくいうと、Excelのマクロ機能を企業システム全域にまで拡大するソリューションです。RPAに登録された定型業務は、ブラウザやアプリケーションを横断して自動化されます。業務プロセスを可視化できれば、RPAによって定型業務を自動化できるため、業務効率の改善と労働生産性の向上に寄与します。
業務プロセスを可視化するメリット
業務プロセスの可視化によって得られるメリットは、主に3つあります。それが「情報の共有」「担当の明確化」「問題の発見」です。ここでは、業務プロセスを可視化することによって享受できる3つのメリットについて解説します。
情報の共有ができる
業務プロセスを可視化することで得られるメリットの1つが、組織全体での情報共有が可能になる点です。近年、多くの企業で人材不足という問題が顕在化しています。その背景にあるのは、人口減少と少子高齢化です。日本の総人口は2008年の約1億2,808万人をピークに、下降の一途を辿っています。そして、2021年2月時点における日本の高齢化率は約28.7%と、先進諸国のなかでも最も高い比率となっています。このような人材不足に陥ることで懸念される問題が「業務の属人化」です。
業務プロセスを可視化すれば、「暗黙知」であったベテランの知識や技術を、「形式知」へと変換できます。形式知へと変換したノウハウを言語化・マニュアル化することにより、属人化していた業務の標準化が可能です。
このように、一部の人間が所有する知識や技術を組織内で共有するマネージメント手法を、「ナレッジ管理」と呼びます。終身雇用制度の崩壊とワークスタイルの多様化も相まって、人材の入れ替わりが激化する国内企業において、ナレッジ管理は非常に重要な戦略です。業務プロセスの可視化はナレッジ管理を効率化し、人材不足を補うとともに労働生産性の向上に貢献します。
担当が明確化する
業務の効率化を図るうえで重要となるのが、役割分担の明確化です。役割分担を明確にすることで、人材という貴重な経営資源の最適化につながります。業務プロセスを可視化できれば、人材を適材適所に割り振ることが可能です。誰がどの業務を担当するのか把握しやすくなり、組織内における戦略的連携性の向上に寄与します。
プロジェクト管理において、連携性の向上は非常に重要な課題です。従業員一人ひとりはもちろん、プロジェクト間および部門間の連携を強化することで、組織力の向上が期待できるのです。さらに、役割分担が明確になることで、仕事に対する責任感を促せます。従業員一人ひとりの責任の所在が定まり、やるべきことが明確になれば、組織にいい意味での緊張感が生まれ、一人ひとりが真摯に仕事に取り組む企業風土が構築されます。
また、労働生産性を高めるためには、仕事の優先順位を正しく見極めることが重要です。役割分担が明確化されれば、同時に業務の優先順位も明瞭になります。業務プロセスの可視化は適切な役割分担につながり、組織の在り方そのものをよい方向へと導くでしょう。
問題の発見につながる
先述したように、業務プロセスの可視化によって経営課題を明瞭化できます。経営戦略を立案する際、「長所進展法」と「短所是正法」という2つの方向性があります。前者は企業の強みを活かした事業展開を指し、後者は組織の弱点を補う経営戦略です。
一般的に、大きく業績を伸ばす企業は、長所進展法を取り入れる傾向にあるとされます。しかし、それは決して問題や課題を無視するということではありません。
理想とするゴールへ至るためには、現状認識が何よりも重要です。例えば、山頂へ登るためには防寒着や雨具、地図やコンパス、水筒や各種常備薬など、さまざまな装備が欠かせません。十分な備えもなく山に登るのは非常に危険であり、険しい山であれば遭難は必至です。したがって、山頂へと至るためには足りないものを把握し、装備を整える必要があります。企業経営においても同様であり、まずは問題や課題を認識し、ゴールへと辿り着くために足りないものを補うことで、目的地に辿り着く可能性を高められるのです。
業務プロセスを可視化する際のポイント
業務プロセスを可視化することで経営課題が具体化され、業務効率の改善と労働生産性の向上につながります。ここでは、業務プロセスを可視化する際に押さえておくべきポイントについて見ていきましょう。
方法に注意する
業務プロセスを可視化することで業務の全体像が把握可能となり、課題に対する共通認識を持てるようになります。ここで重要となるのが、「どのようにして業務プロセスを可視化するのか」という点です。
業務効率の改善や生産性の向上に寄与するためには、定量的な分析に基づく信頼性の高いデータが求められます。そのため、直感や感覚といった曖昧な方法ではなく、論理的かつ合理的な分析手法が必要です。一般的には、フローチャートを作成することで業務プロセスを分析します。
ツールの活用を検討する
ツールを活用することで、より効率的かつ効果的に業務プロセスを可視化できます。例えば、業務に関連するさまざまな情報をフローチャート化したり、勤怠管理によって適切な労働環境を整えたりするツールなどが挙げられます。
近年、さまざまな業界で喫緊の経営課題となっているのが、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現です。DXとは、デジタル技術の活用によって企業経営そのものに変革をもたらし、競争優位性の向上を目指す取り組みを指します。
DX実現の要となるのが、「優れたITツールの導入」です。したがって、企業情報を統括的に管理する、ワークマネージメントツールの導入を視野に入れるべきでしょう。
KPIにも着目する
企業が目標を達成するためには、KPIの設定が必要不可欠です。「KPI」とは「Key Performance Indicator」の略称で「重要業績評価指標」、または「重要達成度指標」と訳されます。端的にいえば、目標達成に至るための過程を計測・評価する中間指標です。業務効率の改善に取り組む場合、業務プロセスの在り方だけでなく、このKPIにも着目する必要があります。
例えば、顧客への訪問件数や商品の受注件数、あるいはサービスの解約件数などがKPIの一例です。自社の企業規模や経営戦略に応じて、KPIを柔軟に変更することが重要なのです。
まとめ
情報通信技術の恩恵を受けて、人々を取り巻く環境は大きな変革を遂げました。しかし、その一方で、市場における競争性は激化の一途を辿るばかりです。ITの発展によって情報が溢れ、トレンドサイクルが短縮化し、顧客ニーズは多様化かつ高度化しています。このような社会背景のなか、企業が新たな価値を創造していくためには、業務プロセスの抜本的な見直しと改善が不可欠と言えるでしょう。
そこでおすすめしたいのが、ワークマネージメントツール「Asana(アサナ)」の導入です。Asanaを導入することで、1つのプラットフォームによるプロジェクト管理やタスク管理が実現します。企業の業務データを一元的に管理し、業務プロセスの可視化という部分最適のみならず、組織全体の労働生産性の向上という全体最適に寄与するソリューションです。Asanaについて詳しい情報を知りたい方は、下記URLをご覧ください。
https://asana.com/ja
- カテゴリ:
- BPR・変革管理