企業の業績評価や人事評価などに利用される目標管理の手法「OKR」「MBO」「KPI」の3つについて解説します。
近年、主観性が強い従来の日本的な評価制度が通用しなくなり、客観的で公平な制度の必要性が高まっています。これら3つの手法の意味や特徴、違いを知ることで、自社に必要な目標管理に最適の手法を選ぶことができます。
何が違う?OKR、MBO、KPIの意味
「OKR」「MBO」「KPI」は、いずれも目標を管理するフレームワークです。それぞれ目標に向けて具体的な行動指標を定めますが、特徴や使い方が異なります。3つのフレームワークの意味や内容、特徴をご紹介します。
OKRとは
GoogleやFacebookのほか、国内ではメルカリが採用していることから、近年注目を集めている目標管理手法です。「Objective Key Result」の略で、「目標と主要な成果」を意味します。組織と個人の目標を一致させる目標管理手法で、組織のビジョンに基づき、社員には具体的な数値目標を設定し、目標達成を目指します。
達成サイクルは四半期と短いのが特徴で、当初に立てた目標の進捗状況を、PPTなどを用いて上司と面談で確認するレビューを頻繁に行います。レビューを行うことで達成可能な目標かどうか判断し、難しい場合はサポートや対策を講じ、早めに軌道修正することが可能です。
達成度の測定基準には「SMARTの法則」を用い、具体的で分かりやすく、計測と達成が可能な現実的数値や期限を明確に設定します。
こちらの「OKRとは?Google、Facebookも使う目標管理のあり方」もぜひご覧ください。
MBOとは
「MBO」とは、アメリカの経済学者ピーター・ドラッカー氏が提唱した、組織のマネジメント手法です。「Management by Objectives」の略で、「目標による管理」を意味します。組織と個人の目標を統合し、社員の自主的な行動により、業績向上を目指す管理手法です。目標と結果が明確になり、管理職と社員双方の納得感が得られやすいため、日本企業の多くが人事評価の手法に採用しています。
達成サイクルは1年ごと、または半期で設定します。上司が進捗状況を確認するレビューは、一般的に中間で行うことが多く、OKRほど頻繁には行われません。目標達成度の基準は組織によって変わります。
KPIとは
「Key Performance Indicator」の略で「重要業績評価指標」を意味し、ビジネスの最終数値目標を達成するために計測する中間指標を指します。目標達成に必要なプロセスを明らかにし、中間地点でどの程度の状態であれば、最終数値を達成できるかを想定して、中間数値を計測します。
達成サイクルを明確に決めることはなく、プロジェクトの最終目標を達成するために、それぞれのプロジェクトに合わせてスケジューリングすることが大半です。上司と面談するレビューは頻繁に行われます。目標達成度の測定基準はOKRと同じく、SMARTの法則を基準に設定されます。
OKR、MBO、KPIの違い
ここからは「OKR」「MBO」「KPI」のそれぞれの違いを目的やサイクル期間など、項目別に比較していきます。
目的の違い
最近は社員の能力を高め、企業の生産性を高める「BSC(バランスコアカード)」という経営理論も聞きますが、「OKR」の最終目的は組織の生産性を向上させることにあります。社員と管理者が共通の目標を持つため、社内コミュニケーションの活性化も可能です。
「MBO」は、コミュニケーションの活性化より、ノルマを設定し、組織の人材管理を強化する目的で行われます。人事評価制度の性格が強く、ボーナス査定など報酬を決定する判断要素として採用されます。
一方「KPI」は、プロジェクトの目標を達成させることが目的です。確実に最終目標を達成させるためのチェック機能の役割があり、指標も細分化されています。
サイクル期間の違い
「OKR」は四半期ごととサイクル期間が短いです。当初に目標を設定しても、現状変化により目標とのズレが生じるため、3ヶ月に一度見直すようにしています。
「MBO」は、ボーナス査定など人事評価に使用されることが多く、頻繁に行う必要がないため、サイクル期間は1年または半期ごとです。
「KPI」のサイクル期間は、目標を達成するプロジェクトによって変動します。
レビュー頻度の違い
「OKR」では、毎週のように頻繁に上司が面談してレビューを行い、目標を形骸化させないように努めます。
「MBO」は中間レビューや中間面談が一般的で、会社によっては1年に一度という場合もあります。
「KPI」の場合はプロジェクトによって変わり、毎月か毎週、あるいは毎日行われるケースも見られます。
測定基準の違い
「OKR」と「KPI」は、多くはSMARTの法則を用いて測定基準を設定します。SMARTは「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Related(経営目標関連)」「Time-bound(期限がある)」の頭文字を取った指標のことです。
誰もが分かる明確な具体性があり、客観的に達成度合いが判断できるように数値化し、現実に達成可能な目標にします。そして組織の経営目標に適ったもので、明確な期限を設けるようにします。
これまでの日本的な慣習の残る企業では、目標の測定基準が曖昧になりがちでしたが、「OKR」と「KPI」を取り入れると基準が明確になり、達成度も数値化により客観的に分かるようになります。
「MBO」の測定基準は組織によりますが、よく使用される基準としては「具体的で明確な目標」「達成可能で適正な目標レベル」「スケジュールの設定」「目標達成のための方法の有無」「組織目標との関わりと個人の役割の考慮」などが挙げられます。測定基準については、3つの手法で共通するものが多いことが分かります。
定性的・定量的の違い
「OKR」は、数値化できない定性的目標と、数値化した定量的指標を組み合わせていることが特徴です。まず定性的目標を1つ掲げ、その目標に基づいて定量的指標を3~5つ作成します。例えば顧客満足度で業界No.1を目標にすると、製品のリピート率や顧客アンケートの結果、顧客DMのレスポンス数などが数値目標として考えられます。
「KPI」は、最終数値目標であるKGI(Key Goal Indicator)まで含めると、OKRとプロセスが似ていますが、定量的目標に絞っているところが大きく異なります。なお、業績評価指標として用いられる「KRA(Key Result Area)」は競合他社を上回るための戦略であり、「KPI」と併用することで測定が可能です。
「MBO」においては、定性や定量について明確なルールはありません。企業によってさまざまですが、多くの場合、定性も定量も目標設定に使用されます。
目的の共有範囲の違い
「OKR」では部門や部署、または組織全体で目的を共有する場合もあるので、3つの手法の中で最も共有範囲が広くなります。「KPI」はプロジェクト単位の目標なので、プロジェクトを担当する部門や部署内で目的を共有します。どちらも、所属するすべての社員が同じ目標を持てるので、社員のモチベーションをアップさせることが可能です。
一方「MBO」は個人レベルの目標で、上司と本人が目的を共有することになります。ボーナス査定や昇進・昇格などの判断要素となるため、直属の上司や経営陣以外には共有されないケースが多いです。
達成基準の違い
「OKR」は、組織が一丸となって目標を達成させるための手法であることから、予測通りにマンパワーを発揮すれば達成可能な目標ではなく、挑戦的な目標を掲げ、高めに設定するという特徴があります。そのため、達成基準は60~70%に設定します。
対して「KPI」は、最終目標を達成するための定量的な中間指標のため、100%が達成基準です。「MBO」も定性や定量に関わらず、ノルマを設定した評価システムのため、100%達成を目指します。
まとめ
「OKR」「KPI」「MBO」はそれぞれ、目的やサイクル期間、共有範囲、達成基準など特徴に違いがあります。3つの手法の違いを正しく理解することが、目標達成への鍵となります。その上で、自社のケースに最も適した目標管理手法を検討することが大切です。
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