Googleをはじめとする多くの大企業が取り入れている目標管理手法であるOKR。この記事では、その意味の説明や実際に運用するためのハウツーを紹介します。また、スムーズに導入・管理するためにも具体的な例をあげて注意すべき点を紹介しています。組織のレベルアップにお悩みの方は一度検討してはいかがでしょうか。
OKRの意味と期待できる効果
まずは、OKRとは何なのか。その意味について確認していきましょう。OKRとは、Objectives and Key Resultsの略称です。これは「目標と主要な結果」という意味で、企業における目標管理の方法のひとつです。すでにGoogleやFacebookなどでも導入されており、近年さらに注目が集まっています。その特徴は、PDCAサイクルを高頻度で回すことにあります。よりロジカルな目標設定ができ、質の高い評価を行うことができます。
目標設定
実行するには、まずはObjectives(目標)であるOを設定します。その際のポイントと注意点について説明します。
目標設定の際には、下記の3つのポイントを意識します。
- 定性的な目標であること
- 明確な期限があること
- 60~70%の達成が予想されるチャレンジングな目標であること
3については不可能ではない内容でより高いレベルの目標を設定します。Googleでは「100%達成する目標」と「100%達成は難しいチャレンジ目標」の2種類を設定しています。そのようなイメージで、正しい方向へ向けた目標ではあるが、達成が難しいレベルまで引き上げられていることが重要です。
注意しなければいけないことは下記の2つです。
- 現状維持を目標にしないこと
- 抽象的な目標にしないこと
より高い目標設定をすることがOKRの肝となっています。その目標を、定性的でなおかつ具体的に設定する必要があります。
ゴール設定
次にKR(主要な結果)を設定します。設定の際には下記の3つのポイントを意識します。
- 定量的であること
- 客観的に評価できること
- 困難ではあるが不可能ではないこと
KRはOを達成できたか否かを判断するための指標であり、数字で表します。客観的に達成したかどうかを評価できるものでなければなりません。目標設定時と同様に達成が困難な高いレベルのゴールにしましょう。一つのOに対しKRは3〜5つが目安です。それぞれが目標に対して70%達成すれば成功というものを設定します。
評価をする際には「スコアリング」という手法を用います。KRの達成度を%で採点し、その平均値がOのスコアとなります。この手法については後の運用シミュレーションで、より具体的に紹介しています。
GoogleやFacebookの目標管理のあり方
Googleは、OKRを導入した先駆者と言えます。現在Googleの取締役であるジョン・ドーア氏は、インテルの元CEOであるアンディ・グローブ氏から直接OKRを学んでいます。グローブ氏自身はOKRを生み出した本人であり、本も出版しています。インテルでは1970年代に、Googleでは2000年代はじめに導入しており、FacebookやNetflix、AmazonやTwitterなどの名だたる企業もすでに運用しています。
ここではGoogleの実際の事例を紹介しながら、OKR設定のポイントをお伝えします。
Googleは破竹の勢いで急成長を遂げた企業ですが、その裏にはOKRによる目標設定の妙がありました。
企業に所属する社員にとって目標は達成できなければいけないもの、という認識があります。しかし、Googleはそれを60〜70%の達成で良しとしました。ゴールは必ずしも達成しなくてもいいということになります。しかし、設定においては、達成が非常に難しいチャレンジングなものであることを求めたのです。これをストレッチゴールといいます。本来到達地点を引き延ばした状態のものを設定することで、Googleは毎年のように、急成長を続けることができました。
OKR運用シミュレーション
OKRを設定できたら、次はそれらをチームで共有します。それがなくては何の意味もありません。その後は、チェックインミーティング→行動→ウィンセッションという流れになります。順に説明していきます。
週1回、OKRに対するチェックインミーティングを行います。主に進捗状況の確認と共有です。まずは、1週間のうちにやるべき優先事項を確認しましょう。ポイントとしては、たくさんの事項を設定せず、やることを絞ることです。目安として5つほどが適当です。また、ミーティングではOKRの自信度の更新も行います。そうすることで、達成できるか否かや、達成のために何ができるかを話し合うことができます。さらに今後1か月の予定も共有します。どのように達成に向けて動く予定なのか、チーム全体で把握することで、より効率的で無駄のない動きに繋げることができます。
1週間はチェックインミーティングで決めた事項に沿って行動します。さらに週終わりのウィンセッションに向けた準備も同時に進めます。
ウィンセッションは一週間後に行う振り返りです。チェックインミーティングが「できない理由」を探すのに対し、ウィンセッションはその名の通り「できたこと」について話す勝者の話し合いです。チームメンバーはお互いに賞賛や承認を行い、達成が難しいゴールに向かって気持ちを高めていきます。ネガティブな雰囲気にはせず、あくまで前向きに働く意欲となるような場にすることが大切です。
OKR運用で失敗する企業の共通点
失敗のケースからも学びましょう。以下の章では失敗事例を具体的に挙げ、どのようにすれば失敗を防ぐことができるのかを紹介します。慣れない手法となるため、導入当初は失敗することもあるかもしれません。しかし、つまずきやすい部分をあらかじめ知ることで、成功の手助けとなるでしょう。
OKRを正しく理解していない
多くの企業では、正しい理解の元に行っていないために失敗してしまうケースが見受けられます。それは、「OKRを導入すること」を目標としてしまい、導入した時点で満足してしまうことに起因します。とりあえず導入までは雛形に沿って進めてみたものの、そのあとの実行が適切に行われていないというケースです。
OKRは設定後の管理・評価にこそ、その強みがあります。どのように、どう評価していくかをきちんと決めておかないと、良い結果は得られません。またせっかくスタートしても、実際の運用をMBOやKPIで管理していまっているという場合もあります。今までそれらの手法で長年管理していた場合に犯しやすい誤りです。
それぞれの管理方法に良さはありますが、1つの手法を違う手法によって管理してしまうと、期待できる効果は得られません。このようなことを防ぐために、まずはチーム全体でOKRについてしっかりと理解する機会を設けることが大切です。また手法の違いやメリット、デメリットなどの理解や、なぜOKRでないといけないのか、その他の手法ではだめなのか、どのような効果を新しい手法に期待するのか、そしてどのように運用をしていけばよいのかなどをチーム全体で共有することで、正しい理解を得られるでしょう。
会社のミッションがない
あなたの会社のミッションは明文化されているでしょうか。ミッションというものは、企業の進むべき方向の指針となるものです。それに沿った目標を設定することで、適切なベクトルで進んでいけます。しかし、その指針が明示されていなければ、会社の進んでいくべき方向と目標がちぐはぐになってしまうことがあります。このようなことを防ぐために、もしミッションがない、もしくは明文化されていない場合は、ミッションを明文化しましょう。その上で適切に運用していくことをお薦めします。ミッションは会社全体に関わってくるものです。少し時間のかかる作業かもしれませんが、シンプルかつ最低でも10年は使用できるような、明確なものであることを意識して行うことが大切です。
一部のメンバーで目標を設定している
目標は最終的にはリーダーが設定しなければいけません。しかし、チームメンバーの意見を聞いた上で設定したものとそうでないものとでは、質の違いがはっきりと現れます。現場で動く個々人が重要なヒントを持っていることも少なくありません。また、誰かが一方的に設定した目標は、他の人には無理やり押し付けられた印象を受けてしまいます。このような状況を防ぐためには、まずはチーム全員から必要な目標を提出してもらいましょう。だらだらと考えるものではなく、簡潔に提案させるために期限は1日で十分です。それらを行った上で、適切な処理をしていきましょう。
ゴール設定に問題がある
設定は定数的である必要があります。適切ではない場合は失敗を生み出すことになってしまいます。ゴールがあまりにも簡単すぎた場合は、あまり頑張らなくても達成できる数値だと気を抜いてしまいます。それでは本来たどり着けるところまで到達できないかもしれません。また、難しすぎる数値でも、どう頑張っても無理だと感じてしまい、取り組む前からモチベーションが下がってしまいます。がんばれば60~70%ぐらいは達成できそうなものである必要があります。置かれている現状をしっかりと把握した上で、適切に設定しなければなりません。
ウィンセッションを実施していない
具体例は2つあります。1つ目は、そもそもウィンセッションの機会を設けていない場合です。チェックインミーティングはしているが、ウィンセッションをやっていないというケースが考えられます。ウィンセッションは、メンバーのモチベーションアップに繋がります。また、他のメンバーにも内容が共有できるため必ず行いましょう。
2つ目は、設定はしていても、本当の意味でのウィンセッションができていない場合です。セッションでは厳しい意見を言う必要はありません。あくまで「称え合う場」なのです。厳しいことはチェックインミーティングで発言しましょう。称え合う内容は、どんなに小さなことでもかまいません。目標に対して何か行動を起こしたら、それがほんの些細な行動であっても、みんなの前で賞賛することが大切なのです。
まとめ
以上のようにOKRは正しく運用できれば、組織のレベルアップに効果的です。しかし、ポイントを押さえておかないと思うような効果が出ず、失敗してしまうこともあります。本質をしっかりと理解した上で、より良い組織になるよう運用していきましょう。
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