プロジェクトマネジメントを学ぶときに必ず知っておきたいのがPMBOK。しかし、その内容や活用方法がいまいちわからないというPMやPLも多いのではないでしょうか。本コラムでは、PMBOKとは何なのか、その目的やプロジェクトマネジメントの知識管理体系を確認しながら、PMBOKの活用方法と注意点を解説しますジェクトマネジメントを学ぶときに必ず知っておきたいのがPMBOK。しかし、その内容や活用方法がいまいちわからないというPMやPLも多いのではないでしょうか。本コラムでは、PMBOKとは何なのか、その目的やプロジェクトマネジメントの知識管理体系を確認しながら、PMBOKの活用方法と注意点を解説します。
PMBOKとは
PMBOK(ピンボック)とは「Project Management Body of Knowledge」の略称で、プロジェクトをマネジメントする上で必要な考え方や知識を体系化した参考書です。
PMBOKが出版される以前は、プロジェクトマネジメントに関する用語やノウハウなどについて、各国・各企業に統一された定義がありませんでした。しかし、PMBOKでそれらが体系化され、今ではプロジェクトマネジメントの国際標準として利用されています。
PMBOKは、1987年に第1版が発表され、2021年8月現在では第7版が最新版です。第7版については、2021年7月4日に英語版が発行されていますが、日本語版はもう少し後になる予定です。(2021年8月14日時点)
参考)What's New with PMI Standards & Publications
PMやPLなど、プロジェクトマネジメントに携わる人は国際標準のプロジェクトマネジメントをPMBOKから学び、その内容を理解しておくことが望ましいといえます。
プロジェクトマネジメントについては【プロジェクト管理を成功に導くツール10選!】にて詳しく解説していますので、合わせて参考にしてください。
PMBOKの目的
PMBOKが発表された目的は、上述の通りプロジェクトマネジメントを体系化することです。
プロジェクトマネジメントを体系化することで、PMやPLがプロジェクト管理の指針として利用できます。プロジェクトを管理するためにどのようなプロセスが必要なのかを、国際標準の方法にのっとって進められるのです。
また、プロジェクトマネジメントに必要なQCD(後述)というゴールを達成するためのプロセス管理がしやすくなるというメリットもあります。
QCDとは
QCDとは、「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」のことで、製造業における生産管理で重要な3要素を指しています。
この3つの要素は、どれかひとつが欠けても顧客満足度を向上させることができず、1つの要素だけを改善すると他の要素に大きく影響するバランス関係で成り立っています。
例えば、品質を上げるためにはコストと時間がかかりますし、コストを下げると品質が落ちる可能性があります。つまり、QCDの改善にはバランスが必要であるということです。
そして、QCDをバランス良く改善するためのプロジェクトマネジメントについても、PMBOKは活用できます。
PMBOKにおける知識管理体系
それでは、PMBOKの内容について確認していきましょう。ここでは「プロセス」と「知識エリア」「パート」をみていきます。
それぞれの項目を確認した後、イメージしやすいよう最後に体系を表にしています。
5つのプロセス
プロセスは、プロジェクトが進む工程の順番を大きく5つに分類したものです。
- 立ち上げ
- 計画
- 実行
- 監視・管理
- 終結
プロジェクトは上記5つのプロセスの順に進んでいきます。
10の知識エリア
知識エリアは、プロジェクトを進める上で「管理しなければならないこと」を大きく10種類に分割した考え方です。知識エリアの項目は、上記5つの各プロセスに対応させる形になります(後述の表を参照)。
- 総合マネジメント
- スコープマネジメント
- スケジュールマネジメント
- コストマネジメント
- 品質マネジメント
- 組織マネジメント
- コミュニケーションマネジメント
- リスクマネジメント
- 調達マネジメント
- ステークホルダーマネジメント
3つのパート
パートは、各プロセスの中での各知識エリアで、「何を考え」「どのように加工して」「どのような結果を出すのか」を示したものです。
- 入力
- ツールと技法
- 出力
「5つのプロセス」「10の知識エリア」「3つのパート」の関係表
ここまでに確認した「5つのプロセス」「10の知識エリア」「3つのパート」は、表にするとイメージしやすいでしょう。
まず、横軸に「5つのプロセス」、縦軸に「10の知識エリア」を配置します。また、双方の交差するマスには「3つのパート」にて各プロセスで行うべき「入力」「ツールと技法」「出力」などのノウハウが入るイメージです。
例えば、「計画」プロセスの「総合マネジメント」ではノウハウを生かし、「プロジェクトマネジメントの計画書作成」で、結果として「プロジェクトマネジメントの計画書」が出力されるといった具合です。
|
立ち上げ |
計画 |
実行 |
監視・管理 | 終結 |
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総合 | プロジェクト憲章の作成 | プロジェクトマネジメントの計画書作成 | プロジェクト実行指揮のマネジメント | プロジェクト差魚の監視コントロール | プロジェクトあるいはフェーズの終結 |
スコープ | スコープの定義 など | スコープのコントロール など | |||
スケジュール | アクティビティの定義 など | スケジュールのコントロール | |||
コスト | コストの見積もり など | コストコントロール | |||
品質 | 品質マネジメントの計画 など | 品質マネジメント | 品質コントロール | ||
組織 | リソース計画 など | チームマネジメントや育成 など | リソースコントロール | ||
コミュニケーション | コミュニケーションマネジメント計画 など | コミュニケーションマネジメント | コミュニケーションコントロール | ||
リスク | リスクマネジメント計画やリスク特定 など | リスク対応 | リスク監視 | ||
調達 | 調達計画 など | 調達実行 | 調達のコントロール | ||
ステークホルダー | ステークホルダーの特定 | ステークホルダーマネジメント計画 など | ステークホルダーマネジメント | ステークホルダーマネジメントの監視 |
PMBOK・PMI・PMPの関連性
PMBOKの内容を理解する上で、「PMI」と「PMP」といった用語を理解しておく必要があります。PMPに関してはPMやPLが取得しておきたい資格でもありますので、PMBOK・PMI・PMPそれぞれの関連性を把握しておきましょう。
PMIとは
まず、PMIとは「Project Management Institute」の略称で、PMBOKを作成した組織のことです。
PMIは、アメリカに本部を置く非営利組織のプロジェクトマネジメント協会で、日本にも一般社団法人PMI日本支部があります。また、PMIはプロジェクトマネジメントにおける標準策定や資格認定などを行っています。
PMPとは
PMPとは「Project Management Professional」の略称で、プロジェクトマネジメントの国際資格のことです。PMPはPMIが認定する資格で、プロジェクトマネジメントスキルを認定します。
PMBOK・PMI・PMPは以下のような関係性です。
- PMIがPMBOKを作成
- PMBOKに基づいた認定試験がPMP
- PMPはPMIが認定する国際資格
PMBOKの上手な活用方法
それでは、実際のプロジェクトマネジメントにPMBOKを活用する方法をみていきましょう。また、PMBOKを利用する際の注意点に関しても合わせて確認していきます。
活用方法
PMBOKは、プロジェクトマネジメントを円滑に進めるための参考書・指針として活用します。
比較的規模の大きなプロジェクトを管理する場合に、10の知識エリアと5つのプロセスの内容を当てはめながら、プロジェクトに使える指針だけをチョイスして考える方向性を補助するものだととらえましょう。
ですので、実際のプロジェクト管理には、プロジェクト管理ツールなどを利用するのが効率的です。PMBOKの内容を参考にプロジェクト管理の大まかな道筋をイメージしてから、プロジェクト管理ツールを使って具体化していくといった手順が一般的な活用方法だといえるでしょう。
注意点
PMBOKは、プロジェクトマネジメントを進める上で何をすればよいのかを具体的に示しているわけではありません。あくまでも、方向性に対するヒントを得るための参考書や辞書的なものだと意識したほうが良いでしょう。
PMBOKは、「さまざまなプロジェクトに対応したマネジメント方法が詳しく書いてある攻略本ではない」ことを知っておく必要があります。
まとめ
PMBOKは、プロジェクトマネジメントを円滑に進めるための指針を示したものです。プロジェクトの規模にもよりますが、プロジェクトマネジメントの考え方を学べるものですので、 PMやPLなどのポジションでプロジェクトマネジメントを担う人は、知識として触れておくことをおすすめします。
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