プロジェクトライフサイクルという用語について「聞いたことはあるけれど意味はよくわからない」という方は多いのではないでしょうか。企業でプロジェクト管理を担当するなら知っておく必要があります。そこで本記事では、プロジェクトライフサイクルの概要や特性、種類などについて解説します。しっかりと理解し、プロジェクト管理に役立てましょう。
プロジェクトライフサイクルの意味
どのようなプロジェクトにおいても、始まり・中間・終わりというフェーズ(段階・区切り)が存在します。プロジェクトの種類や目的、タスクが異なったとしても、各フェーズがあることは共通しています。
こうしたプロジェクトを、「開始(立ち上げ)」「計画(準備)」「実行(作業・モニタリング)」「完了(終結)」という4つのフェーズに分けて考えた上で、これらのフェーズを順番に行うことを「プロジェクトライフサイクル」と呼びます。
このプロジェクトライフサイクルを理解すれば、各フェーズにおいてどのようなタスクを実行すればよいのかが把握できます。特にプロジェクトマネージャーや管理者、責任者がしっかりと理解して管理をすれば、プロジェクトの遂行をより円滑に進められるでしょう。
プロジェクトライフサイクルの特性
プロジェクトを進める上で、目標を達成できないリスクや失敗するリスクが存在します。プロジェクトライフサイクルには、「各フェーズを経過していくに連れてそれらのリスクが変遷する」という特性があります。
開始段階、つまり初期のフェーズではリスクがもっとも高く、計画、実行へと進むに連れて次第にリスクが低減していき、完了のフェーズでのリスクがほとんど消滅します。反対に考えると、プロジェクトが進行するに連れて成功する可能性が上がっていくとも言えます。
また、かかる費用や要員数は中間フェーズでもっとも大きくなるという特性もあります。開始時には費用や要員は少なく、計画・実行のフェーズで実際に作業が進んでいくと増加していきます。そして、完了に近づくに連れて減少していくこととなるでしょう。
プロジェクトライフサイクルの種類
プロジェクトライフサイクルは、それぞれの特性ごとに「予測型」「反復型・漸進型」「適応型」の3種類に分けられます。プロジェクトマネージャーや管理者は、それぞれの特徴やどのような場合に適しているのかをしっかりと理解した上で、適切な種類を選択し、プロジェクトを進行させましょう。どの形式のライフサイクルにも対応できるようにしておくことで、今後どのようなプロジェクトにも役立ちます。
予測型
1つ目に、「予測型」と呼ばれるライフサイクルが挙げられます。これはプロジェクトにかかるコストや時間、スケジュール、範囲などを初期のフェーズで予測して決定する方法です。滝(waterfall)のように上から下へ向かって進むという例えから、「ウォーターフォール型」とも呼ばれます。
プロジェクト遂行に必要となるさまざまな情報を可能な限り初期段階で決定するため、その後のフェーズごとに目標やコスト、時間が厳密に区分けされているという特徴があります。初期段階においてさまざまな事項を厳密かつ明確に定めることがもっとも重要です。その後のフェーズでも、決められた内容に従って厳格に進めていくことが求められます。
反復型・漸進型
2つ目は「反復型・漸進型」です。これは、サイクルを繰り返し行う方法です。反復型は、一連のサイクル・作業を繰り返し行うことでプロジェクトを遂行させます。漸進型は、繰り返すという点では反復型と共通していますが、これに新たな機能を継続的に加えていくという点が大きく異なります。
いずれもプロジェクトの複雑性が高い場合に適している方法で、チームメンバーがプロジェクトおよびプロダクトへの理解を深めながらサイクルを繰り返し行うという特徴があります。
適応型
3つ目は「適応型」です。これは、サイクルの反復によって要求の変化に対応していく方法です。「アジャイル型」または「変化駆動型」と呼ばれることもあります。「反復型・漸進型」とサイクルを繰り返すという点では似ていますが、非常に短い期間で反復する点が特徴です。一般的に2週間~4週間という短いサイクルで反復を繰り返すため、環境の変化が激しい場合や、事前の見通しが難しいケースに有効な方法です。
プロジェクトライフサイクルの段階
続いて、プロジェクトライフサイクルのフェーズ、つまり「開始(立ち上げ)」「計画(準備)」「実行(作業・モニタリング)」「完了(終結)」の4段階について、項目ごとに詳しく解説していきます。
なおプロジェクトの種類や目的によってはフェーズの分け方が異なる可能性もあるため、この区分けはあくまでも一例であることに留意してください。
開始(立ち上げ)
プロジェクトの始まりである立ち上げの段階では、メンバーとの顔合わせや計画書の作成、管理ツールの選択などを行いますが、その中でも「プロジェクトの定義」がもっとも重要です。
プロジェクトの定義とは、そのプロジェクトに関する目的・目標・要件・成果物など、「プロジェクトを遂行する上で必要となるあらゆる項目について検討し、確定すること」をいいます。わかりやすくいうと「なぜそれが必要なのか、現実的かどうか、具体的な作業の内容や要員の配置などを考えて決定する」ということです。
これらの定義づけが完了したら、プロジェクトに関わる利害関係者からの承認を得ます。ここで、関係者やステークホルダーの意見が一致し、賛同が得られることで初めて次の段階へと進めるのです。承認を得るためには、プレゼン方法などについても、立ち上げメンバーで深く考える必要があるでしょう
計画(準備)
プロジェクトの定義を定めた上で利害関係者からの承認を得られたら、計画(準備)のフェーズに移ります。ここでは主に、プロジェクトに関するあらゆる項目を洗い出し、計画書の作成に取り組んでいきます。
必要なタスクや費用、スケジュール、人員配置、ワークフロー、緊急トラブル時の代替策・解決策など、さまざまな事項について検討します。「いつまでに何をしなければならないのか・予算がどれくらい必要なのか・誰が何を担当するのか」などを明確にして、計画書に細かく記載するステップです。
なお実際は、計画書の作成と併せて、「WBS」や「ガントチャート」なども多く活用されています。WBS(Work Breakdown Structure)とは、作業工程を細かく分解して構造化するスケジュール管理の手法です。必要な作業を洗い出した上で、できるだけ細かく分解していくことになります。その後、細分化したタスクごとに役割分担やスケジュールを考えます。タスクを細分化することによって、タスクの抜けや漏れを防止する効果が期待できます。また次のフェーズである実行時には、関連するタスクの相関関係がわかりやすいため前後のタスクを意識しながら取り組めるという利点もあります。
ガントチャートも、WBSと同様にスケジュール管理のため手法です。これは、タスクや担当者を縦軸に、時間を横軸に配置して帯状グラフにしたもので、プロジェクトの全体像や進捗状況を視覚的に把握できます。これらの手法を用いながらタスク管理・スケジュール管理の計画を立てるとよいでしょう。
実行(作業・モニタリング)
あらゆる計画(準備)が完了したらいよいよ実行のフェーズに移行しますが、実際の作業に移る前のステップとして「キックオフミーティング」を行います。ここでは、プロジェクトの概要と具体的な計画、目標やスケジュール、役割分担、管理ツールなどの確認が、主な作業です。メンバーのプロジェクトへの理解を深め、モチベーションを向上させましょう。
キックオフミーティングにおいてメンバーからの承認・賛同を得られたら、計画書に沿ってそれぞれの作業を進めていきます。
ここでの責任者・マネージャーの大きな役割として、定期的な進捗状況のモニタリングが非常に大切です。当初の計画と比べて遅れていないか、遅れている場合はその原因の追究と解決策を考えます。「人員は足りているか・人員の配置に誤りはないか」など適宜考え、必要であれば計画の修正や変更を行います。
また、プロジェクトメンバーからの定期的なヒアリングもプロジェクトを効率的に進めていく上では有効な手段です。困っていることや改善したいことを聞き出すよい機会となるため、率直な意見や悩みを聞き出せる場を設けましょう。例えば週1回・月1回と頻度を決めてミーティングやヒアリングする機会を設けたり、ツールを使って円滑にコミュニケーションを取れる場を用意したりすることもよいでしょう。
完了(終結)
最後の段階であるプロジェクト終結のフェーズでは、完成した成果物の最終確認とクライアントへの引き渡しを行います。
その後、プロジェクト全体の振り返りを行います。チームメンバーで意見を出し合い、うまくいった点や問題点、改善点などをまとめ、得られた知見を次のプロジェクトに反映させましょう。
まとめ
プロジェクトライフサイクルについて、概要や特性、種類などについて解説しました。プロジェクトを円滑に進行させて成功に導くためには、管理ツールの選択が重要です。法人向けのワークマネージメントツール「Asana」なら、チーム全体の進捗をリアルタイムで確認可能です。加えて、プロジェクトに関するあらゆる取り組みが1ヶ所で確認できるため、プロジェクト管理に役立つでしょう。プロジェクトライフサイクルをサポートするツールとして活用してみてはいかがでしょうか。
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