人事部門が知っておきたいコンピテンシーとは?3つの活用方法を紹介

 2021.09.08  2021.12.26

コンピテンシーとは、人事評価や人材育成に関係する場面でよく使われる用語です。しかし、コンピテンシーとはどんな意味なのか、どんなときに使用するものなのかなど、詳しくはわからないという方も多いでしょう。本記事では人事部門で活用されるコンピテンシーについて解説していきます。

人事部門が知っておきたいコンピテンシーとは?3つの活用方法を紹介

コンピテンシーとは

「コンピテンシー(competency)」とは、高い業績をあげているハイパフォーマーと呼ばれる社員の行動に共通してある特性のことです。このコンピテンシーを分析し、まとめあげ、目指すべき評価基準としたものをコンピテンシーモデルといい、人事評価や採用・面接、社員教育などに活用されています。コンピテンシーモデルを活用した採用面接や、人事評価面接は「コンピテンシー採用(面接)」、「コンピテンシー評価」などと呼ばれます。

コンピテンシーモデルを用いて採用や人事評価を実施することで、企業が求める社員像が明確になり、社員の目指すべき姿を共通認識として広げることが可能です。また、コンピテンシーモデルを策定することにより、業務を実施する際の行動や考え方、仕事への姿勢などがはっきりするため、社員のスキルや行動を公平に確認できます。

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コンピテンシーの活用方法とメリット

コンピテンシーは、主に能力開発や人事評価、採用・面接などに利用されています。それぞれの場面でどのように活用できるのか、その方法と、生じるメリットについて解説します。

人材育成

社員教育にコンピテンシーを取り入れた「コンピテンシー研修」では、最初に企業内のハイパフォーマーの行動特性について明示します。このコンピテンシーモデルを基準にして、社員一人ひとりが自己の能力向上のために必要な考え方や行動などの目標を設定していくのです。

コンピテンシーを活用した社員教育は、実在のモデルを元にした行動特性を元にして目標を考えられるので、成果につながる行動をイメージしやすいところが大きなメリットです。自分自身で目標を設定するため、目標達成に向けた積極性や自発的な行動が生まれやすく、研修後の成長が期待できます。社員個人の業務への取り組み方の変化、能力向上により生産性が向上し、企業全体の業績向上にもつながるでしょう。

人事評価

部門や事業所、部署など、区分ごとにコンピテンシーは異なります。コンピテンシー評価を実施する場合には、区分別にハイパフォーマーの行動特性をまとめることが大切です。それぞれの部門でハイパフォーマーにインタビューを行い、行動特性を分析して共通点を明確にしましょう。調査したハイパフォーマーの行動特性がコンピテンシーモデルの基準となるため、実務に即した行動特性を分析する必要があります。事務職に営業職のコンピテンシーモデルを採用してしまうと、実務との剥離が起き、効果があがりません。

コンピテンシー評価では、コンピテンシーモデルを元にして、目標が達成できたかどうかを評価します。評価項目は、マネジメント、コミュニケーション、成果達成志向、論理的な問題解決など、人事評価項目に基づいてそれぞれコンピテンシーモデルを設定しましょう。

通常の人事評価では、評価項目の内容や、何をもって評価項目を達成したとするかが曖昧なことが多く、各社員や評価者の主観に左右されることも少なくありません。しかし、コンピテンシーモデルを評価に取り入れることで、目標が明確になり、納得感の高い評価を行うことができます。

採用・面接

これまで企業が社員を採用する際には、面接者の持つ専門知識や出身校などが重要視されるケースが多くみられました。しかし、専門的な知識を有する人材や高学歴の人材であっても、入社後に成果があげられないなど、採用後のミスマッチに悩む企業は少なくありません。

また、学歴や知識以外にも、面接時の雰囲気や受け答えなどを見て、面接担当者が直観で人材の評価を行うケースもよくあります。ですが、この方法には面接者担当の主観が入ってしまうため、採用後のミスマッチを解消できるとは言えないでしょう。

このような従来の面接方法とは異なり、面接の結果をより確実なものにするために、現在では具体性のある判断が行えるコンピテンシーを活用した面接が注目されています。

自社のハイパフォーマーのコンピテンシーを元に採用基準を設定しておき、応募者がこれまでに成果をあげたエピソードや、成果・業績をあげるために行っていた工夫、問題が起きた際にどう対処するかなど、行動面を掘り下げた質問を行います。これにより、企業の求める成果をあげる行動特性があるかどうかを判断するのです。

コンピテンシー面接では、入社後にハイパフォーマーとなれる素質をもっている人材を登用できるほか、面接担当者により質問内容が大きく異なったり、評価の差がでたりしないなどのメリットがあります。

コンピテンシーモデルの設計方法

コンピテンシーとは概念であり、実用化するには企業ごとに内容を定める必要があります。コンピテンシーを社員教育や人事評価、採用・面接などに取り入れるためには、自社に適したコンピテンシーモデルを設計しなければなりません。

コンピテンシーモデルの設計方法には、実在するハイパフォーマーから設計する方法と、企業が求める人物像から設計する方法があります。コンピテンシーモデル設計方法の特徴や注意点について説明します。

実在するハイパフォーマーから設計

これまでも説明してきたように、コンピテンシーモデルは、企業に実在するハイパフォーマーを基にすることで設計可能です。自社で高い実績を持つ優秀な社員にインタビューやアンケートを行い、業績につなげるための行動や周囲とのコミュニケーション、時間管理方法など、行動の背景まで聞き出します。

精度の高いコンピテンシーモデルを作るためには、「コンピテンシー・ディクショナリー」をもとに、自社に適した項目を使用した質問を行いましょう。さらに、できる限り多くのハイパフォーマーに対するデータを集める必要があります。

コンピテンシー・ディクショナリーとは、1993年にライル・M・スペンサーとシグネ・M・スペンサーが編み出した、コンピテンシーをモデル化するための基本となる考え方のことです。コンピテンシーを引き出すための項目を、6領域、20種で体系的に整理したものとされています。

ただし、企業によって理念や事業戦略が異なるため、コンピテンシー・ディクショナリーから自社に必要な項目を選択もしくは追加してインタビューする項目を作成しなければなりません。また、部門、部署によって業務向上のために必要とされるスキルや行動特性は異なるため、それぞれにコンピテンシーモデルを設計する必要もあります。

企業が求める人物像から設計

コンピテンシーモデルを実在しない理想の人物像から設計するケースは、社内にモデルとなるハイパフォーマーが存在しない場合に適しています。企業が業績を向上させるために必要とする人物像を作り上げて、コンピテンシーモデルにする方法です。実在する人物がいないため、企業側の理想を前面に出してしまい、高すぎる目標を設定してしまないよう注意しましょう。比較対象となるモデルがいない場合でも、現実から大きく外れないようにモデルを設計してください。

また、コンピテンシーモデルを全てゼロから作り上げるのではなく、実在する人物像と理想の人物像を組み合わせて作るハイブリッド型コンピテンシーモデルもあります。実在するモデルでコンピテンシーを一度設計してから、企業が理想とする人物像をプラスして設計する設計方法です。理想像を組み合わせる際に、設計したモデルが実際と大きくかけ離れたものにならないように注意しなければなりません。コンピテンシーモデルが経営に則した人物像かどうか、充分にチェックして設計することが大切です。

コンピテンシーモデルを設計する時の注意点

コンピテンシーモデルは、ハイパフォーマーの社員の行動特性を分析して設計します。ただし、コンピテンシーモデルの基準となった社員の、実績をあげた行動をただマネするのでは、コンピテンシーを有効に活用することができません。社員全員が同じ行動を取ったところで同じ成果が得られるわけではありません。

コンピテンシーを活用するためには、ハイパフォーマーが「何をしたのか」ではなく、ハイパフォーマーが「なぜしたのか」、どんなケースで何を考え行動を起こしたのかという、行動の裏にある状況や考え方を理解する必要があります。

また、コンピテンシーモデルは、定期的に見直すことが大切です。企業の経営環境や社会情勢、経済状況は常に変化しています。業務実績をあげる社員や、実績をあげるための行動なども徐々に変化していくため、コンピテンシーモデルは時々に見直しをしなければなりません。見直しする期間を長くあけすぎず、定期的に見直し修正を行うことで、コンピテンシーを効果的に活用することが可能になります。

まとめ

コンピテンシーとは、ハイパフォーマーの行動特性を指します。この行動特性をまとめたコンピテンシーモデルを基にして行う人事評価や人材育成、採用・面接には、具体性がありわかりやすい、高い育成効果が得られる、公平に評価が行えるといったさまざまなメリットがあります。

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