正しい業務改善を実施するためには、正しい業務改善方法とその進め方を知ることが大切です。場当たりな業務改善が横行することで、改善どころが業務が悪化してしまっている環境も少なくありません。当人は「改善できた」と感じても、実際は何も変わっていなかったり、むしろ以前よりも業務が複雑になってしまっている、というケースは多いのです。
そこで今回は、より多くの方に正しい業務改善を実施していただくための、正しい改善方法とその進め方について紹介していきます。正しい改善方法は決して簡単ではなく、手間もかかります。しかし、効果の高い業務改善を実施するために、ぜひ参考にしてください。
業務改善の事前準備
まずは、正しい業務改善を実施していくための事前準備について紹介します。
業務改善の目的と目標を明確にする
業務改善を始めるにあたって、最初にやるべきことは業務改善の目的と目標、これらを明確にすることです。業務改善に関わる人すべてが、共通の認識のもとプロジェクトを進めていくためにあります。
目的や目標が定まっていない場合、人によって思い思いの業務改善を実施してしまい、最後にはまったく結果の出ない業務改善となってしまいます。こうしたリスクを避け、関係者一丸となって業務改善を進めていくためのも、目的と目標を明確にしなければなりません。
何を、どの範囲まで、どのような方法で、誰が、いつまでに、いくらで業務改善するのかを、具体的な数値で設定します。
問題点や改善案を想定する
漠然としたものでも構わないので、現状の問題点やそれに対する改善案を想定しておきます。その想定が当たっていたかはずれていたかに関わらず、簡単にイメージを固めておくことで業務改善の初動が変化します。
これらの事前準備が完了したら、業務改善を推進していきましょう。
手順1.現状把握
現状把握とは、業務改善の対象となる範囲において、現状業務がどのように行われているかを明確にすることです。そのためには、分析ツールを活用する必要があります。
BPMNを活用する
ここでいう分析ツールとは、データを取り込んで定量分析を行うためのシステムやサービスではなく、現状業務を視覚化するための、世界で標準化された、ビジネスプロセス図作成のための規格です。これを、BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記)といいます。
BPMNとは簡単にいえば、業務の流れや内容を、図や選などを利用して表したものです。「業務プロセス図」といえば、作成したことや見たことがある方も多いかと思います。
BPMNを使用することで、関係者間の共通言語として、現状業務を可視化することができます。さらに、BPMNは国際標準(ISO19510)にもなっているので、海外拠点との連携も可能です。
現場ヒアリングを行う
BPMNによって現状業務を可視化したあとは、現場ヒアリングを行います。これは、情報収集をして、次の手順である「問題点洗い出し」へと繋げるためです。このため、現場従業員に「何が問題となっている業務はないか?」「非効率な作業はないか?」をヒアリングします。
しかし、現場の問題を正直に話してくれる従業員は、ほとんどいません。皆、現状からの変化を嫌ったり、目上の相手には悪い部分を見せないためです。そこで、予め業務改善対象となっている範囲の、現場従業員を業務改善プロジェクトに巻き込んでおくことが大切です。
手順2.問題点洗い出し
現状把握が完了すれば、次に問題点の洗い出しを行います。ここで大切なのは、問題を掘り下げて具体化することです。
「なぜなぜ」を行う
製造業において品質不良が起きた際は、「なぜなぜ」という分析手法をよく使用します。これは、一つの問題に対して「なぜ?」を繰り返し、問題の原因を追究するためのものです。基本としては5回ほど「なぜ?」を繰り返せば、問題の原因まで突き止めることができます。
業務改善の現場ではよく「〇〇が遅い」「××が弱い」など、漠然とした問題提起でプロジェクトを進めていくことがあります。しかし、何が原因となって問題が起きているのか、これを明確にしない限り業務改善は不可能です。
現状分析によって問題点を把握したら、その問題の原因は何か、突き詰めて考えていきましょう。
加えて、問題が発生している業務と、関連のある業務にも問題がないかを確認しましょう。Aという業務に問題があるように見えても、その原因はBという業務にあるという可能性もあります。
手順3.改善計画作成
問題点洗い出しではいくつかの問題が見つかるでしょう。そこで、優先度を意識しつつ、改善計画を作成していきます。
改善案を提議する
いくつかの問題点に対して改善案を提議する際は、次の優先順位によって改善案を考えることがポイントです。
①排除・廃止
②標準化
③変換・代替
上から順に、改善の難易度が変わります。①の排除・廃止は、既存業務の中で明らかに無駄であり、かつ無くなっても問題のないものに対して行います。②の標準化は、業務ルールが明確に定義されていないものに対して行います。③の返還・代替は、①も②も不可能な業務に対して行う改善案です。
排除・廃止だけで業務改善が完了すれば、それに越したことはありません。既存業務の何かをやめればいいだけなので、簡単かつ、効果の高い業務改善が望めます。
変換・代替となると、業務改善はかなり大規模なものになりがちで、とくに業務システムの導入が必要になります。このため、改善案の優先順位としては、最も低くなっています。
最適な改善案の選択とKPIの設定
問題点に対しいくつか改善案を提議したら、その中から最適な改善案を選択します。このとき、事前準備にて定めて目的や目標を考慮して選ぶといいでしょう。実施する改善案が決まったら、KPIを設定します。
KPIとは、最終目標に対する中間ポイントのようなもので、いくつかの指標を設けます。例えば、1ヵ月で残業時間50%削減という目標とそれに対する改善案があれば、この50%削減という最終目標を達成するための、複数の評価指標を作ります。簡単にいえば「1週間で残業時間15%削減」などがKPIにあたります。
手順4.改善案実施
選択した改善案を実施していく上で大切なのは、不測の事態に対しても冷静に対処し、計画を調整していくことです。
細かい評価と改善を繰り返す
入念に計画した改善案も、いざ実施すると様々なトラブルが発生したり、望んでいる効果へと向かっていなかったりと、不測の事態が発生します。しかし、そうしたときも冷静に対処していくことが大切です。KPIはそのめにも存在します。
KPIを管理していると、最終目標に向かっていない場合、KPI事態にずれなどが発生します。KPI通りにいっていないと感じれば、改善案のどこかに問題があるのです。この問題を洗い出すために評価を行い、必要に応じて改善を講じます。
こうすることで、効果の高い業務改善を実施していくことができるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?たった一つの業務改善を成功させるためには、これだけの手順が必要です。簡単ではありませんし、手間もかかります。しかし、これらの手順をしっかりと踏むことで、効果の高い業務改善を実施していくことが可能です。
業務改善に取り組みたい、失敗させたくないという企業は、ここでの手順を抑え、業務改善を成功させていただければと思います。
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