いつの時代でも、「業務改善」は喫緊の課題であり、多くの企業では組織的に取り組まれています。しかし、思うような成果が上がらず、その原因を「現場の頑張りが足りないからだ」と決めつけて、さらに改善に向けた取り組みを強化するというケースが少なくありません。従業員はそれに辟易し、次第に仕事へのモチベーションが下がっていきます。
実は、こうした事態に陥っている企業は決して少数派ではありません。正しい業務改善に取り組めておらずに、組織の生産性が下がっているケースは多々あるのです。本稿では、今すぐ実践できる業務改善の手法をご紹介します。思うように成果が上がらない、方向性が見えなっているという方は、ぜひ参考にしてください。
業務改善の基本
まずは基本的なプロセスをご紹介します。大きく分けると5つのプロセスから成り、全部で12の作業で業務改善を進めていきます。以下にご紹介するプロセスを意識するだけでも、非常に効率的かつ成果の上がる取り組みが行えるので、念頭に置いておきましょう。
<業務改善の基本プロセス>
プロセス |
No. |
作業内容 |
概要 |
---|---|---|---|
改善要求 |
1 |
改善要求 |
現場から業務改善を始めるきっかけになる要求(アイディア)が提案される。 |
実施確認 |
2 |
実施確認 |
業務改善を本当に実施してもよいものかを確認し、どこから取り組むのかを明確にする。 |
3 |
実施必要性調査 |
業務改善実施を判断した後に、論拠が事実であるかどうかを調査する。 |
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4 |
コンセプト設定 |
業務改善の目的や方向性などのコンセプトを決定し、業務改善によって何を得たいのか、どこに着したいのかを具体的に定義する。 |
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問題定義 |
5 |
ヒアリング&実測 |
業務改善の理想と、現実の業務にどれくらいのギャップがあるのかを現場へのヒアリングや実測をもとに評価する。 |
6 |
問題定義 |
評価の結果、それらのギャップはどこに原因があるかなどの問題を掘り下げて定義する。 |
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解決策立案 |
7 |
条件確認 |
業務改善に取り組むにあたり目標/予算/期限/メンバー等を事前に確認し、業務改善に投じることができるリソースを確認する。 |
8 |
優先順位付け 実施改善策決定 |
上記条件によって実施できる業務改善は変化するため、実施できる範囲で優先的に取り組むべき改善を決め、実施可能な改善策を決定していく。 |
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解決策実行 |
9 |
利害関係者への調整および管理責任者指名 |
実施する業務改善内容が具体的に決定したらメンバーへの調整を行い、業務改善責任者とそれぞれの役割を任命する。 |
10 |
パイロット運転 |
業務改善を大きく実行するためにごく一部のところでパイロット運転(スモールスタート)を実施し、問題点を吸い上げて新しい改善策を立てる。 |
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11 |
改善策実施 |
最終的な業務改善策を目的のところで実施する。 |
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12 |
PDCAサイクル |
業務改善本番を評価し、問題点があれば期限内で改めて改善を繰り返していく。 |
皆さんがこれまで進めてきた業務改善に比べると、長いプロセスを経ることになります。しかし重要なのは、如何に短期間で取り組みを完了するかではなく、如何に成果の上がる取り組みを実施するか?です。従って、プロセスは長くても以上の作業を順番に実施することで、しっかりと成果の上がる業務改善が実施できます。次項では、業務改善の具体的な手法をご紹介します。
業務改善の手法3つ
BPR
BPRは「Business Process Re-engineering」の略であり、日本語では「ビジネスプロセス再設計」といいます。1990年代に世界中でブームになったことから、記憶に残っている方も多いでしょう。BPRの目的は既存の業務プロセスを一度破壊し、新しく設計することでビジネス目標をより効率的に達成できるプロセスを築くことです。
そのためには、企業が掲げるビジネス目標を再認識し、中長期的なビジョンを掲げてから既存の業務プロセスに潜む問題を洗い出していきます。その上で、システム導入を伴わせた業務改革を実施し、従来よりも高い生産性を手にする業務改善手法です。
BPRには細かい業務改善よりも高いコストがかかりますが、従来の伝統や風習にとらわれない新しい発想での業務改善を実施して、現代ビジネスに沿った業務プロセスを構築できる利点があります。コラボレーションツールやERP(Enterprise Resource Planning)など、組織のコミュニケーションを促進したり、統合的なシステム環境を構築するITがよく用いられます。
BPM
BPMは「Business Process Management」の略であり、日本語では「ビジネスプロセス管理」と呼ばれています。概要的にはBPRと同じですが、BPMでは「継続的に業務プロセスの再設計を実施する」という要件が加わっています。
業務改善というのは1回の取組で完了するものではなく、継続的な取り組みがあって初めて高い成果が得られます。そのため、BPMでは1回の業務改革で終わらせるのではなく、継続的に取り組むことに重点を置いています。
それ故にBPRとは内容が若干異なります。BPRが大きな業務改革を成すために中長期的なプロジェクトを推進するものならば、BPMは細かい業務改革を繰り返し行っていくのが特徴です。ソフトウェア開発手法でいうところの、ウォーターフォールモデルかアジャイルモデルのような違いです。
BPRとBPMは、どちらも手法が確立されているものなので、企業ごとに最適な手法を選ぶのがベストです。
ECRS
ECRSは「Eliminate(無くす)」「Combine(まとめる)」「Rearrange(組み替える)」「Simplify(簡単にする)」の頭文字を取ったものです。業務改善を実施するにあたり、この順番で施策を考えることで効率よく改善が行えます。
① Eliminate(無くす)
日常業務の中には、本来不要なものも含まれています。伝統や習慣にこだわるのではなく、「ビジネス目標を達成するのに本当に必要な業務課?」という視点から、必要な業務を仕分けしていきましょう。
②Combine(まとめる)
複数の業務を1つにまとめることで効率化できる場合があります。たとえば定例会議はその代表格で、他の会議を1つにまとめることで大幅に時間削減が期待できます。
③Rearrange(組み替える)
業務を実行する際の順序や作業手順を組み替えるだけでも、業務改善に成功するケースがあります。日々当たり前のように行っている業務の中には、手順が原因で効率が悪くなっている可能性も高いので、慎重に監視してみましょう。
④Simplify(簡単にする)
最終的には、業務を簡素化することを検討します。業務内容やチェック手順等を簡素化できれば、微々たる力ながら業務改善に貢献します。組織全体で簡素化が実行されれば、大きな成果が得られるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?業務改善にはさまざまな手法があるので、基本プロセスを押さえつつ対策を進めていくことで効果を体感しやすくなります。
また、ほぼ全ての業務が何かしらツールやシステムを使用しています。業務に特化したアプリケーションからコラボレーションを効率的に行うツールなど、クラウド環境で簡単に利用することもできるようになっています。
そのため、課題や目的にマッチしたシステム構築を選定し、採用していくことも業務改善には不可欠な要素になっています。
業務の基本プロセスを抑えつつ、最適なソリューションを選択することで、大きな成果をあげることも可能となります。
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