クリティカルパスとは何か、どのような分野で利用されているものかを紹介しています。また、クリティカルパスの重要性や活用例、プロジェクト管理に利用した場合のさまざまなメリット、PERT図との併用についても解説します。
プロジェクト管理におけるクリティカルパスとは
クリティカルパスとは、1950年代にアメリカで開発されたプロジェクトの分析・管理手法の1つです。端的には、「プロジェクト完了のために外すことができない重要な作業工程」に着目した効率的な作業経路を指しています。また、プロジェクトに不可欠な作業工程そのものも意味する言葉としても使用されます。
例えばクリティカルパスにあたる作業が予定より日数遅れているなら、ほかのすべての作業工程にも遅れが生じるため、プロジェクトの完了時期を変更・見直しする必要が生じます。このように、クリティカルパスという発想は、重要な作業経路を把握しやすくし、完了予定日の遅延防止や工程管理の円滑化へとつながるのです。
元々クリティカルパスは、製造業の工程を管理するために開発された方法で、現在では建築・土木・生産などのビジネスシーンでよく使用されています。医療福祉の分野でも、病院で医師や看護師、薬剤師などさまざまな職種のスタッフが連携して検査、治療、処置、指導を行う治療計画書に取り入れられるなど、幅広い分野で活用されています。
クリティカルパスの具体例
クリティカルパスとは何か、具体例を挙げて確認していきましょう。ここでは、ハンバーガー製造の際の作業工程について説明します。
1.製造時に行う全作業の確認
ハンバーグを焼く5分、バンズを焼く1分、盛付・提供5分
2.クリティカルパスの特定
ハンバーガー製造の作業工程のうち、バンズを焼く工程は1分と短いため、作業が遅れたとしてもほかの工程に大きな影響を与える恐れはありません。またほかの工程と比較して、バンズを焼く工程はメイン工程には当てはまらないと確認できます。
対してハンバーグを焼く工程と盛付・提供の工程は、どちらかが遅れると完成までに遅れが生じます。工程全体の納期に影響する作業(=クリティカルパス)はこの2つと判断できるため、メインの作業工程として計画を立てることが重要です。
3.クリティカルパスの管理
クリティカルパスを特定したら、その進捗状況に重点をおいて工程を管理します。クリティカルパスを滞りなく進めることを基軸にすれば、作業全体の流れも中断・遅延させず、スムーズに進められるでしょう。
クリティカルパスの重要性
クリティカルパスは、メイン工程として他工程より優先して行う必要があります。たとえ関連する作業全般が順調に進んでいたとしても、メイン工程が遅れてしまうと作業工程は中断されて、全体の作業がそこでストップしてしまいかねないからです。
上記のように、メイン工程が管理されずに遅れていると、作業全体にも遅延が生じて納期までに完成できません。これを避けるためプロジェクトマネージャーは、全体の予定日数に大きく影響する作業経路を発見し、作業の遅れが生じないように対策を立てる必要があります。
そのためには、「早めにメイン工程を把握して優先して業務を進め、予定よりも早く終わらせておくこと」が重要となるでしょう。集中的に取り組むポイントを特定することで、工程全体にゆとりを持って取り組めるようになれば、品質の向上にもつながります。
プロジェクト管理でクリティカルパスを活用するメリット
クリティカルパスを管理に利用すると、作業上のさまざまなメリットが得られます。
作業の優先度と全体像を把握できる
いくつものタスクが関連しているなか、クリティカルパスとして中枢的タスクを確認することで、各作業の優先度を認識可能となります。それにより、作業工程の全体像や適切な処理手順を明確に把握できるのです。
優先度に合わせて人員配置ができる
クリティカルパスは優先度が高いタスクです。優先度に合わせてそのタスクに適した優秀な人材配置を行うことで、それぞれの工程をスムーズに進められ、プロジェクト全体の生産性向上を図れます。
プロジェクト短縮が可能
クリティカルパスによりメインとなるタスクを絞り込んだ場合、優先度に応じて遅延を避けるための対策を行えます。スケジュールがタイトな場合には、優先すべきタスクに人員の配置、有効なシステムの導入などを検討して、業務時間の短縮を図ることも可能です。メイン工程を短縮できると全体のスケジュール短縮にもつながり、業務効率がアップするなどのメリットがあります。
スケジュールに余裕が生まれる
メイン工程の進捗を管理し遅延対策も講じていると、作業を順調に進めやすくなります。メインの作業工程がスムーズに進んでいると、納品日に影響しにくい並列タスクまで無理のない日程で設定でき、時間にゆとりを持って取り組めます。
スケジュール管理が効率良く行える
クリティカルパスでは、メインの作業工程を重視して作業経路を設定します。さらに、並行して行うタスクも組み合わせると、全体の作業日数や工程が明確になる点もメリットの1つです。工程を全体的に把握し、スケジュール管理の効率化へつなげられると期待できます。
クリティカルパスと併用されるPERT図とは
PERTは「Program Evaluation Review Technique(プログラム評価レビュー手法)」の略で、プロジェクト完了までにかかる時間を計算するツールのことです。1950年代にアメリカ海軍でプロジェクト構築・管理用に開発されたもので、「タスクの種類・流れ・かかる時間」を可視化するという特徴があります。
端的にはPERT図は、「タスクを丸で表示し、タスクの流れを矢印で結んだ図」のことです。PERT図では、一般的に丸の内側にタスクの順番、矢印にはタスク完了までにかかる日数を記載します。そしてタスクの上部には、「タスクに取り掛かるまでの最短日数と、障害などが生じた場合の最長日数」を記載します。
このようにしておけば、タスクごとの最長時間が一目でわかるでしょう。「業務完了までの時間・納期の厳しいタスク・時間調節が可能なタスク」など、全体と個別タスクとの作業時間を同時に分析しながら、作業工程の計画を立てられます。
PERT図ではタスクの流れを可視化して把握できるので、作業担当者のスケジュール調整が簡単にできます。
PERT図とクリティカルパス法の併用
クリティカルパスとPERT図を併用すると、計画の精度を上げられ、より確実な管理が可能です。2種類の手法を併用する場合には、PERT図を作成してからクリティカルパスを見つける方法でスケジュールの構築が可能です。
まずPERT図で作業経路を図式化し、タスクの流れを可視化します。可視化したタスクからメインの作業工程を特定し、作業それぞれの時間やメイン作業からなるプロジェクト完了までの時間を予測していくと、効率良くスケジューリングできるでしょう。
各タスクには、完了までの最短時間、一般的な所要時間、障害による遅延などを想定した最長時間をそれぞれ予測し、最短のケースから最長のケースまで、作業経路を状況別に作成しておくとさまざまな状況に対応しやすいでしょう。
まとめ
クリティカルパスとは、「プロジェクトの作業スケジュールでメインとなる重要な作業経路」・「プロジェクトの効率を上げるためのスケジューリング手法」のことです。プロジェクトにはさまざまな作業がありますが、クリティカルパスが遅れるとプロジェクト全体にも影響は及んでしまいます。逆に言えば、プロジェクトマネージャーはこのクリティカルパスに集中して進捗管理することで、スムーズにプロジェクト全体を進展させられるのです。
クリティカルパスは、PERT図と併用するとより精度の高いスケジュール管理を行えるメリットもあります。プロジェクトのスケジュール管理には、チームメンバーそれぞれが理解して常に状況を確認可能な明確さが必要です。
プロジェクトの進捗をリアルタイムで可視化する、オンラインのプロジェクト管理ツール「Asana」。これを使用すれば、タスクの優先順位・現在の状況がいつでもメンバーでチェック・共有できます。「どんな仕事がいつ必要か」をチーム内で適宜管理すれば、業務効率向上へとつなげられるでしょう。
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