日本の通信業の課題とは?将来性や今後の動向を解説

 2023.05.03  2024.03.08

最近では5G対応エリアが拡大し、携帯通信の高速大容量化はますます進んでいます。ただし、インフラを扱う通信業にも直面している課題はあり、ひとつずつクリアしていく必要があります。本記事では、日本の通信業の将来性や抱える課題、今後の展望について解説します。通信業のあり方について考える際には、ぜひ参考にしてみてください。

日本の通信業の課題とは?将来性や今後の動向を解説

通信業とは?

通信業とは、総務省がまとめた「日本標準産業分類(平成25年10月改定)」によれば、「有線、無線、その他の電磁的方式により情報を伝達するための手段の設置、運用を行う事業所が分類される」と定義されています。具体的には、NTT東日本・西日本の各事業所やネットワークセンター、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)やインターネット・データ・センター(IDC)、NTTドコモやau、ソフトバンク、楽天モバイルといった携帯電話業や衛星携帯電話業などが含まれます。

通信業の提供する通信サービスは、大きく二つに分けられます。

自宅やオフィスなどのあらかじめ決まった場所に固定回線を敷設し、固定電話やパソコンでのインターネット接続サービスなどを提供する「固定通信」と、屋外や移動中でも利用可能なインターネット接続サービスなどを提供する「移動通信」です。固定通信には現在おなじみの「光回線」や、かつて主流であった「ADSL」などが含まれます。

一方、移動通信は、1979年に当時の日本電信電話公社が世界で初めてセルラー方式の自動車電話サービスを提供しましたが、これが第1世代移動通信システム「1G」のはじまりとされています。その後、「2G」以降はデジタル方式になり、現在の主流は2010年に提供が開始された第4世代の「4G」です。近年は「5G」がサービスエリアを拡大してきているところで、次世代の通信インフラとして、さまざまなビジネスへの活用が期待されています。

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日本の通信業の課題とは?

通信インフラを提供する通信業はさまざまな業種とリンクしており、今後も大きな成長が期待されています。しかし、乗り越えなければならない課題も存在します。ここでは、通信業が抱える主な課題三つについて解説します。

IoTや5G拡大への対応

近年は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の活用が進んでおり、世間の耳目を集めています。例えば、スマートスピーカーやスマートホーム、自動運転のように、スピーカー、家、自動車をインターネットに接続することにより、人の作業をサポートするサービスを提供します。IoT機器にはカメラやセンサーなどが組み込まれており、Wi-Fiを使ってモノの状態や動きを感知したり、データを収集したりします。入手した情報を人やモノに伝送することで、遠隔地からでもモノがどのような状態にあるのかを把握できるようにするのがIoTの仕組みです。

現在は、家電や自動車など、あらゆるモノがインターネットに接続することで、利便性が高まるツールとしての可能性を持つようになりました。IoTの実用化はすでにはじまっています。ただし、上述のようにIoTを実現するためにはモノが常時インターネットに接続され、稼働していなければなりません。多数のモノが消費する電力量をいかに供給するかがIoT普及の課題です。さらに開発コストや費用対効果もハードルになっています。これらの課題をクリアできれば、今後IoTは一般家庭にも広く浸透していくでしょう。

対応エリアの拡大が進む5Gの特徴は「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」です。こうした特徴を持つ5Gの電波を送受信するためには、スマートフォンが5G対応でなければならないことはもちろん、各地に5Gの基地局を設置しなければなりません。しかし、基地局を1基作るのにも多大なコストや労力がかかることが大きなネックです。総務省の資料によれば、2022年3月時点での5Gの人口カバー率は約93%。2023年度末には95%、2025年度末には97%、2030年度末には99%まで上げることが目標になっています。

通信業界としては、今後5GやIoTの拡大を促進するためにも、通信インフラの整備を進めていく必要があります。

セキュリティの強化

インターネットが普及し、あらゆる場所で通信が行われるようになった結果、いかに情報セキュリティを確保するかも大きな問題となっています。昨今は、スマートフォンやサーバーなどを介してネットワークに入り込み、データを盗み取ったり、改ざんしたり、システムを破壊したりするサイバー攻撃が巧妙化し、予期せぬうちに被害を受けるケースは少なくありません。

企業がサイバー攻撃で不正アクセスされると、社内の機密情報が外部に漏えいする恐れがあります。万が一、情報漏えいが起こってしまった場合は、取引先や消費者、ひいては社会全体との信頼関係が一気に崩れてしまうだけでなく、経済的にも甚大な損失を被ってしまいます。特に通信インフラを取り扱う通信業においては、最新のサイバー攻撃に関する情報を入手するとともに、攻撃から身を守るためのセキュリティ対策には万全な準備が求められています。

カスタマーサービスの需要増

カスタマーサービスは、ユーザーから問い合わせやクレームを受ける窓口として、通信業のみならず、多くの企業に設置されています。カスタマーサービスでは応対の品質次第、つまり「クレームなどを含めたお客様の声をいかに真摯に受け止め、今後の製品やサービスの改善につなげていけるか」で、企業としての評価が劇的に変わることがあります。そのため、各企業はカスタマーサービスの品質を向上させるためにツールを導入したり、人材教育の強化を進めたりしています。

顧客の窓口は電話のみではありません。最近ではさまざまな方法でカスタマーサービスが行われています。例えば、TwitterなどのSNSやライブチャットなどをカスタマーサービスに使っている企業は数多くあります。ユーザーは自分が好きな方法で企業に問い合わせたり、クレームを入れたりできるため、利便性が向上し、結果的に顧客満足度も向上します。企業にとってもメリットは大きく、真摯かつスピーディに対応することで、ステークホルダーをはじめ、社会からの信頼を得られるようになります。

日本の通信業における今後の動向は?

日本の通信業は、インフラを支えるデジタル技術の発達によって急速に成長してきました。さらに今後も、さまざまな変化を遂げることが予想されています。ここでは、今後の動向として見逃せない「オープンデータの活用」と「6G」について紹介します。

オープンデータの活用推進

「オープンデータ」とは、すべての国民がインターネットなどを通じて、無償かつ容易に二次利用できる公共データのことです。2017年5月には、総務省が「オープンデータ基本指針」を公表し、オープンデータの活用によって社会経済全体を発展させようと提言しました。

しかし、日本の企業はまだオープンデータを活用しきれているという状況にはありません。通信業では、社会経済全体を発展させるという「オープンデータ基本指針」の提言を実現させるためにも、オープンデータの活用推進に取り組んでいく必要があります。総務省の「令和2年版情報通信白書」によれば、2019年時点で地方自治体の約半数がオープンデータ化の取り組みを行っていないことが明らかになっています。オープンデータとして使えるデータの種類を増やしたり、利用者が使いやすい形で公開したりすることで、オープンデータがより広く活用されるように取り組んでいくことが求められています。

2030年頃から6Gが開始

モバイル通信は、アナログの1Gから約10年ごとに次世代の規格が採用されてきました。現在、対応エリアの拡大が進む5Gの次に控える第6世代移動通信システム「6G」は、2030年頃からのサービス提供開始が予定されています。6Gは、5Gの特徴である「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」が改善され、「超高速・大容量通信」「超低遅延」「超多接続&センシング」「超カバレッジ拡張(宇宙までをも視野に入れたカバーエリアの大幅拡張)」「超高信頼通信」「超低消費電力・低コスト化」が要件になっています。

6Gを支える技術には三つのポイントがあります。ひとつは無線の送受信技術の仕様をオープン化して、さまざまなベンダーの機器やシステムが相互接続できるようにする「Open RAN(Open Radio Access Network)」です。Open RANが広く導入されることにより、ネットワークの構築を低コストかつ迅速に行えるようになります。二つめにネットワークの負荷を自動で最適化できる機能、三つめは超高速・大容量通信に対応するための100GHz超の高周波数帯の活用です。

総務省は2020年6月に「Beyond 5G 推進戦略」を公表しました。6Gを含む5G以降の次世代通信規格を活用すれば、持続可能で新たな価値を生み出せるとして期待を寄せています。

まとめ

日本の通信業は、IoTや5Gの拡大にともない、サイバーセキュリティ対策やカスタマーサービスの需要増など、さまざまな課題を抱えています。一方、6Gのサービス提供開始も見えはじめており、課題の解決と新しい技術の登場とが密接に絡み合いながら、新しいビジネスが生まれていくでしょう。

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