自動車産業は100年に1度の変革期が訪れており、今後発展していくためにも、抱える課題を解決しなければなりません。本記事では、日本の自動車産業が抱える四つの課題やDX化の必要性、今後を左右する「CASE」について解説します。自動車産業が抱える課題や解決法を理解するために、ぜひ参考にしてください。
日本の自動車産業が抱える課題とは?
変革期にあると言われている日本の自動車業界は、現在いくつかの課題を抱えています。ここでは、日本の自動車業界が抱える課題を四つ解説します。
人手不足
日本の代表的産業である自動車業界でも、人手不足の傾向にあります。その原因として、社会問題である少子高齢化による労働人口の減少だけでなく、若者の車に対する関心が薄れていることや、職業選択の多様化も挙げられます。
国土交通省の資料では、自動車整備業における従業員数は近年約53万人とほぼ横ばいに推移しています。しかし、自動車整備要員の有効求人倍率が一気に上昇していることから、人手不足が深刻です。また、自動車整備学校への入学者数も約15年間で半減し、自動車整備要員の平均年齢も上昇傾向にあることから、今後の担い手不足も問題となっています。
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消費者行動の劇的な変化
近年における、消費者行動の劇的な変化への対応も大きな課題です。都会に住む若い世代の間では、充実している公共機関を移動手段として多用し、車の所有には消極的な傾向があります。車の所有がステータスであった世代が高齢化する中で、車の所有をステータスにせず、むしろ経済的負担となるものと考える若者も少なくありません。なぜなら自動車の所有には、車検代や保険代、駐車料金、ガソリン代などの維持費用がかかるからです。そのことから、近年では車を個人で所有するのではなく、費用対効果の高い共有やレンタルという手段を選択する若者が増えています。
このように、近年の経済状況や自動車に対する価値観の変化も、自動車業界にとっての大きな課題となってのしかかっています。
デジタル需要の増加
近年のデジタル需要の増加に伴い、自動車の運転にもあらゆるデジタルの応用が進んでいます。例えばカーシェアリングでも、デジタルキーを採用したり、車の利用状況確認やキャンセル待ちの登録ができるようにしたりと、ユーザーの利便性向上につながるデジタル技術が欠かせません。中でも、IoT(モノのインターネット)を搭載したコネクテッドカーは、車両の状態や道路状況など、あらゆるデータをセンサーで取得・分析することで、安全性や快適性を実現します。近年では、交通情報サービスや運転手支援だけでなく、緊急通報システム、盗難車両追跡システムなどが備わり、さらなる市場の拡大も予測されている状況です。
今後も高まるコネクテッドカーへの需要に応えるためにも、自動車業界は研究を新しいコネクティビティ技術にシフトして、技術革新へさらなるアプローチをすることが求められています。
自動車生産台数と販売台数の減少
自動車の生産台数および販売台数の減少も大きな課題です。減少した要因として、少子高齢化や人口減少、若者の車離れなどのほかに、世界的な半導体不足という深刻な問題があります。近年の自動車は電子部品の塊であり、運転支援システムにも半導体は必要不可欠です。その一方で、あらゆる業種におけるデジタル化が推進され、半導体の需要が急速に拡大しています。それは自動車の生産に大きな悪影響を及ぼすこととなり、生産できないことで販売もできないという状況に陥ります。
自動車産業の課題を解決するにはDX化が不可欠
DX化とは、単にアナログな手法をデジタル化して便利にすることではなく、AIやIoTなどのデジタル技術を用いて商品やサービス、さらにはビジネスモデルに変革をもたらすことを言います。日々進化する市場では、あらゆる業界のさまざまな企業が、競争優位性を保つために新しい商品やサービスを展開しています。その競争優位性を維持、もしくは強化させるために必要な手段がDXです。
自動車業界におけるDX化は主に製造面で進んでおり、産業用ロボットやシステムを導入し、製造工場を自動化する動きが顕著です。一方で、顧客対応やオフィス業務におけるDXは、製造面に比べて進んでいません。顧客対応などの自動車の販売業務において、デジタル技術により業務を効率化すると、従業員も本来の業務に集中でき、なおかつ顧客対応にかける時間を増やせます。さらに、顧客満足度の向上や、利益向上も期待できます。また、効率が上がることで時間外労働が削減でき、従業員満足度の向上や働き方改革にも寄与するでしょう。
DX化の具体例としては、Web会議ツールなどの利用による従業員同士のコミュニケーション効率化、CRM(顧客管理システム)やAIチャットボットを活用した、顧客情報や商談情報の一括管理などが挙げられます。他にも、動画やVRの活用により、技術継承および新人育成の効率化や、クラウドシステム導入によって、ペーパーレス化および遠隔での業務遂行が実現できます。
自動車産業の今後の動向:CASEの促進
経済の不安定化や購買に対する価値観の変化など、自動車業界を取り巻く環境変化により、100年に1度と言われる自動車産業の変革期が訪れています。2030年に向けて自動車の生産台数は鈍化していくとの予測もある中、注目されているのが「CASE」です。CASEとは、「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(シェアリング)」「Electric(電動化)」の頭文字から名付けられた造語で、自動車業界に新たな変革をもたらす考え方として広まりました。
- Connected(コネクテッド)
自動車に通信機器やセンサーを搭載し、車とドライバーまたは車同士、さらには外部サービスとつながることができる技術です。自動車自体がIoT(モノのインターネット)となり、車両の状態から道路状況、緊急通報、盗難車両追跡などを実現します。
- Autonomous(自動運転)
完全自律型の自動車を意味する言葉であり、自動運転により安全性を高めようとする動きのことです。自動化の度合いで段階的にレベル分けされており、運転支援のレベル1から完全自動運転のレベル5に分類されています。
- Shared(シェアリング)
自動車の所有者が減少していることから、所有から共有に移行することを目的とした動きです。車両を共同所有したり利用したりするカーシェアリングや、所有者に同乗してガソリン代などを負担しながら移動手段として使うライドシェアリングなどがあります。日本においてカーシェアリングの需要は拡大傾向にありますが、法的な問題から、ライドシェアリングはまだ普及には至っていません。
- Electric(電動化)
環境への負荷軽減のために、自動車を電動化する動きです。近年の日本ではハイブリッド車の人気が高いですが、世界各国では電気自動車(EV)への移行が進んでいます。今後日本も追従すると見られており、各自動車メーカーが電気自動車の開発に力を注いでいます。
CASEが注目される背景には、温室効果ガスの削減などの気候変動対策や、国外メーカーとの競争激化などの理由が挙げられます。また、消費者における購買行動の変化や価値観の変化、経済状況の変化なども大きな影響を与えています。「CASE」は自動車業界が時代のニーズに対応するために必要不可欠といえる取り組みです。
まとめ
日本の自動車産業では、人手不足や消費者行動の変化、デジタル需要の増加、生産台数および販売台数の減少など、さまざまな課題を抱えています。課題解決にはDX化が必要不可欠であり、DXにより業務効率化や顧客満足度・従業員満足度の向上などのメリットが期待できます。DXに欠かせないのはシステムの導入であり、タスクやプロジェクトを一元管理できるソフトウェアの導入がおすすめです。
今後、日本における自動車産業では、環境対策や国際競争を優位に保つためにも「CASE」の取り組みに対する重要性が高まっていくでしょう。
- カテゴリ:
- DX(デジタルトランスフォーメーション)