■企業情報 トランスコスモス・アナリティクス株式会社 ■従業員数 ■取材対応者 |
■導入効果 |
トランスコスモス・アナリティクス株式会社 取締役CDO兼CFO 篠田 洋輔 氏(右)
プラットフォームサービス推進部プラットフォーム基盤開発2課 課長 北島 祥光 氏(中央)
プラットフォームサービス推進部プラットフォーム基盤開発2課 DBエンジニア 浅野 雄信 氏(左)
世界28の国と地域・171の拠点に展開するグローバルアウトソーシング企業であるトランスコスモス。その100%子会社として、2012年に創業したトランスコスモス・アナリティクスは、顧客企業のデータ分析やマーケティングリサーチに加え、AIやディープラーニングを活用したDX支援まで幅広く行っています。
同社は、2021年10月に「時間価値の最大化」をコンセプトとする新組織「プラットフォームサービス推進部」を発足しました。同部署では開発や営業・分析といったチーム間の壁を取り払い、スピーディなサービス提供を実現するため、日常業務はもちろんビジネス戦略に至るまでAsanaを広く活用しています。社内の「働き方改革賞」も受賞したというAsana導入がもたらした効果はどのようなものだったのでしょうか。導入をリードした同社取締役CDO兼CFOの篠田 洋輔 氏、プラットフォームサービス推進部プラットフォーム基盤開発2課 課長 北島 祥光 氏、同課DBエンジニア 浅野 雄信 氏にお話を伺いました。
自動化と組織改革で
顧客へのサービス提供のスピードアップ
近年、めまぐるしく変化する市場のニーズに対して、いかに早くサービスや製品を提供できるかはどの業界においても重要課題となっています。激化する競争の中でこうした流れに遅れを取ってしまう企業も多い中、同社のプラットフォームサービス推進部は独自のコンセプトと強みを活かした取り組みでPDCAサイクルの高速化を図っています。
同社のデジタル戦略を統括する取締役CDO兼CFOの篠田洋輔氏は、新組織発足の背景について次のように語ります。
「お客様の課題は刻々と変化します。それに応えるために求められるのはスピードです。サービスの開発から提供、改善までのサイクルを最速で回し、最大の価値を提供しなければなりません。つまりいかに時間価値を最大化できるかが重要だと考えます」
この目的のために、プラットフォームサービス推進部では二つの改革を実行しました。一つは、データ分析業務の標準化・自動化です。AIやRPAを採り入れながら、機械に任せられる仕事はできる限り自動化し、人は人にしかできない仕事に集中できる仕組みを作りました。テクノロジーと人、それぞれの強みを活かしながらスピードアップを図る環境を整備したのです。
そしてもう一つは、スピーディなサービス提供のための組織改革です。時間価値の最大化を突き詰めるため、それまで縦割りだった営業、分析、開発、カスタマーサクセスの各部門を1つの部門に統合し、顧客の課題解決に一気通貫で動ける体制へとシフトしました。
プラットフォームサービス推進部で開発チームのマネージャーを務める北島祥光氏は、業務を横断した新体制がもたらした効果について、次のように語ります。「メンバー全員が同じ目標を共有し、組織の壁を意識することなく会話ができるようになったことで、チーム間の意思疎通がスムーズになり、これまでの縦割り組織では手間取っていた社内外の調整時間が大幅に短縮されました。その結果、これまでにないスピードで仕事が進められるようになりました」
複数のデジタルツール活用で
陥った情報の分散と埋没
新体制が始動し、エンジニアや営業など、これまでバラバラだったチームが同じ部内にいるメリットを感じていたところ、コロナ禍によるリモートワークへの移行もあり、社員全員が物理的な距離をとって仕事をすることを余儀なくされました。
そこで同社では、リモートワークに対応するさまざまなコミュニケーションツールを導入しました。ビデオ会議をはじめ、ビジネスチャットやオンラインのホワイトボード、バーチャルオフィスなどあらゆるツールの活用を試みました。こうした取り組みは、一定の成果をあげた一方で新たな課題も生みました。多くのツールを使うほど情報が分散し、必要な情報がスピーディに検索できなくなったのです。
株式会社トランスコスモス・アナリティクス 取締役CDO兼CFO 篠田 洋輔 氏
篠田氏は、当時の混乱した状況をこう語ります。
「複数のツールを使っていると、どこで誰が発言したかがわからなくなり、後から必要な情報が見つけられません。コミュニケーションによって創出した価値がうまくシェアされないという、本末転倒な状態に陥っていました」
情報が分散・埋没されてしまうという新たな課題に対し、「情報の一元管理」と「コミュニケーションプロセスの標準化」が急務でした。そこで、こうした課題をすみやかに解決し、業務の仕組みを整備するために、中枢として機能するコミュニケーションツールの導入に乗り出しました。
チームを超えて誰にでも使いやすく
組織のコンセプトにも合う理想のツール
同社チームには、業務マネジメントにデジタルツールを使った経験がないメンバーもいました。そこで、導入にあたっては、誰もが使いやすい簡単な操作性と、直感的なUIを備えたツールであることを条件としました。また、チームを超えて複数のプロジェクトを同時進行で管理でき、Gmail、Google Chatなど社内ですでに使われているツールと連携できることも必須でした。慣れ親しんだツールとの連携によるメリットを感じてもらうことで、デジタルツールに不慣れなメンバーの抵抗感を少しでも払拭するためです。
これらの条件を整理し、いくつかのツールを比較検討したところ、Asanaが要件を満たすという結論になりました。しかしツール選定にあたって重視したポイントが、実はもう一つあったと篠田氏は明かします。それは、「ベンダーがユーザーの要望に迅速に対応してくれるかどうか」です。
篠田氏は同社とAsanaの共通点を引き合いに出しながら、採用理由について次のように語ります。「変化の激しい時代において、ユーザー要望に真摯に向き合い、スピーディな機能改善を提供してくれる企業かどうか。最終的にはこの点が決め手になりました」
Asanaの機能もコンセプトも組織にフィットしていると判断したことから、まずはプラットフォームサービス推進部全員で1カ月間のトライアル導入を開始しました。
北島氏はトライアル時の第一印象から、Asanaはユーザーファーストの思想が貫かれている設計だと評価します。たとえば「保存」ボタンを押す必要も無く、常に最新の情報が保持される仕様、リアクションに使える「いいね」ボタン、タスク完了や感謝を示すアニメーションなどはその思想の表れだと捉えています。こうした機能によって、ユーザー同士がスムーズに連携でき、楽しんでコミュニケーションをとれることが、部内の心理的安全性の獲得にも役立っているそうです。
株式会社トランスコスモス・アナリティクス
プラットフォームサービス推進部プラットフォーム基盤開発2課 課長 北島 祥光 氏
2021年11月から始めた1カ月のトライアル導入では、ほとんどのメンバーがAsanaをスムーズに使うことができました。これを受けてすぐにAsanaを使った運用ルール作りを開始し、12月には本契約に切り替えて、既存のコミュニケーションプロセスの刷新を開始しました。課題の抽出からツール選定、試験導入、本番稼働まで、わずか2カ月強というスピード導入でした。北島氏は「これまで取り扱ったなかで、導入までの時間が一番短かったツールです」と振り返ります。
これほどスピーディに導入できた理由について篠田氏は、トライアル期間中に経営、マネージャー、現場社員の3レイヤーで一丸となって課題解決に取り組んだことが時間短縮につながった、と分析しています。
社内アンケートで見えたAsanaの導入効果
9割以上が業務効率の改善を実感
2021年12月に本格導入がスタートしたAsanaは、すでに多方面で活用されています。例えば、各チームから開発チームへのリクエストは、Asanaフォームで管理しています。開発責任者によって対応可否と優先度が判断されたタスクは、各開発チームマネジャーがAsana上で各メンバーの業務負荷を見ながらアサインします。こうすることで、対応の抜け漏れが無く、メンバーの負担も適正化されました。また、さまざまなルートから押し寄せていた開発依頼を整流化、標準化することができました。
Asanaの依頼フォーム画面の一部。
要望の締め切り日を設定できるほか、画像や書類などのファイルも必要に応じて添付できる
集まった情報はAsana上で一元管理できるため、課題となっていた情報の分散や埋没も解消されました。さらに、それまでスケジュール調整、会議や報告に費やしていた時間も劇的に削減され、マネージャーが案件確認のミーティングをするだけで、開発がスムーズに進むようになりました。
Asanaの活用が浸透したプラットフォームサービス推進部において、導入後の利用者アンケートを実施したところ、86.1%がAsanaをほぼ毎日利用しており、91.7%が業務の効率化を実感したと答えるなど、ほとんどの社員がAsanaの導入効果を実感していることがわかりました。
また、アンケートでは、Asana導入による変化として「自分のタスクや期日が明確になった」「他のチームとの情報共有が楽になった」といった声が上位を占めました。篠田氏は、「Asanaによって各自のタスクや期日が明確化され、情報が上司と共有される安心感が主体的な行動を生んでいます」と効果を語ります。今では、とりあえずタスクはAsanaに入れる、という習慣が生まれています。
一方、アンケートではAsanaに対する機能面の改善要望も多数挙がりました。どの要望もAsanaの各機能を深く使い込んでいるがゆえのフィードバックで、Asanaを業務の基盤として広く使って行くという意欲が表れています。
Asanaの利用ルール策定から、利用者アンケートも取りまとめた浅野雄信氏は「Asanaにはタスク管理にとどまらず、これまでに使ってきたデジタルツールのいいところが全て詰まっていると思います。アンケート結果から、Asanaを業務の中枢としてもっと使い込みたいというメンバーの意向が感じられます」と語ります。
今回のAsana導入と効果検証のプロセスは社内からも高い評価を得ており、同部のAsana推進メンバーは、同社の2021年度「働き方改革賞」を受賞しました。
株式会社トランスコスモス・アナリティクス
プラットフォームサービス推進部プラットフォーム基盤開発2課 DBエンジニア 浅野 雄信 氏
経営層のAsana活用から全社導入へ
全社で目指す「時間価値の最大化」
プラットフォームサービス推進部での成功を受け、次にAsanaの導入を決定したのは同社の役員たちでした。その使いやすさ、きめ細かな仕様が受け入れられ、今では、経営会議の運営や経営課題の管理ツールとしてマネジメント業務の基盤として機能しています。
こうして経営層が実際にAsanaを使い、その有効性を認識したことで、Asanaの全社導入が決定しました。2022年7月からは、同社の全部門、91アカウントでの利用が始まっています。ツールの選定からほぼ8カ月後に全社導入に至るというスピード導入で、まさに「時間価値の最大化」が図られた格好となりました。
また、Asana導入による工数削減についても検証が進んでいます。プラットフォームサービス推進部では「仕事のための仕事」が減り、1人あたり月間15時間が創出されたと試算しています。篠田氏は単純計算による数字と前置きをしながらも「これはつまり、他社に対して月間2営業日分のアドバンテージを持つことに他なりません。そして、この時間価値こそが私たちの競争力を向上させているのです」と、Asana導入がもたらした効果について語りました。
Asanaが全社へ導入されて以来、北島氏と浅野氏のもとへ各部門からの問い合わせが寄せられており、Asana推進の中心メンバーとしてその対応にも積極的に取り組んでいます。社員向けのFAQをまとめたWebページやAsanaプロジェクトを開設し、ノウハウの共有を進めています。
最後に篠田氏は、次のように語り、Asana活用の展望を明かしてくれました。
「Asanaは単なる現場の業務ツールではなく、弊社のビジョンや戦略を実現するキーパーツとして捉えています。今後も弊社の成長を支える原動力の1つとなってくれると考えています」
Asanaがもたらす時間価値の最大化は、同社の今後のビジネス展開において重要な成長ドライバーとなりそうです。
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