日本の飲食業が抱える課題とは?解決策のDX促進も解説

 2023.05.17  2023.05.18

少子高齢化に伴う人材不足や新型コロナウイルスの感染拡大、原材料費や物流コストの高騰など、飲食業界は多くの課題を抱えています。とくに2020年から猛威を振るった新型コロナウイルスの影響は大きく、その余波で今なお厳しい状況に置かれている企業が少なくありません。本記事では飲食業界が抱えている課題や改善策、DXの推進事例などについて解説します。

日本の飲食業が抱える課題とは?解決策のDX促進も解説

日本の飲食業が抱える課題とは?

一般社団法人日本フードサービス協会が2021年12月に公表したデータ(※1)によると、2020年の外食産業における市場規模の推計値は前年比30.7%減と大幅なマイナスとなっています。その要因となったのが、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言の発令と、それに伴う不要不急の外出自粛や営業時間の短縮要請、入国制限によるインバウンド需要の減少などです。そして、アフターコロナの飲食業界が抱える重要課題として挙げられるのが以下の3点です。
  • 慢性的な人手不足
  • 売上の低下
  • 食材と必要経費の高騰

慢性的な人手不足

アフターコロナの飲食業界が抱える深刻な経営課題のひとつは慢性的な人手不足です。コロナ禍による時短営業や稼働席数の減少によって多くの飲食店が売上不振に陥り、人員の削減やシフトカットなどを実行せざるを得ない状況に追い込まれました。来店客数の減少や時短営業などが重なって人手不足は一時落ち着きを見せたものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの規制解除に伴って人手不足の状況が再び悪化しています。現状では削減した人員の穴埋めができていない店舗が多く、少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少といった社会的背景も相まって、飲食業界では慢性的な人手不足が深刻な経営課題となっています。

売上の低下

新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店では時短営業や不要不急の外出自粛などの影響を受け、多くの店舗が売上の大幅な減少に見舞われました。また、「密閉」「密集」「密接」の3密を避ける必要があったため、稼働席数を減らさざるを得なかったことも売上減少の要因です。さらにコロナ禍でテレワーク制度を導入する企業が増加し、常連客の来店数が減少した点も無関係ではないでしょう。そして、先述したように2020年の飲食業界における市場規模の推計値は前年比30.7%減となっており、飲食事業からの撤退を余儀なくされた企業も少なくありません。

食材と必要経費の高騰

新型コロナウイルスの感染拡大によって地域封鎖や移動制限を設ける国も多く、原料需要の急増や輸送コンテナの不足といった要因から、食材や原材料などの価格が大きく高騰しました。さらに感染症対策としてマスクや消毒液、パーテーション、体温測定器などの設備費や消耗品費が増加したため、とくに小規模事業者にとって大きな負担となっています。こうしたコストは新型コロナウイルスの影響だけでなく、外国為替市場の動向や国際情勢、貿易収支、天候不順といった要素によっても変動します。したがって、飲食店の経営では国際的な社会経済の動向を踏まえながら、継続的に損益計画を見直さなくてはなりません。
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飲食業の課題を改善する方法

慢性的な人手不足や売上の減少、食材と必要経費の高騰といった課題を解消するためには、どのような施策が求められるのでしょうか。具体的な改善策として挙げられるのは以下の3点です。
  • コスト削減と適正化
  • 人材育成の強化
  • 労働環境の改善・人材の確保

コスト削減と適正化

飲食店のコストは基本的に「Food(食材費)」「Labor(人件費)」「Rent(家賃)」の「FLR」で構成されています。そして「FLR比率=(食材費+人件費+家賃)÷売上×100」という数式によって算出されるのが売上高のうちFLRコストが占める割合です。仮に1ヶ月の食材費が100万円で人件費は70万円、家賃が25万円であればFLRコストは195万円となり、売上が300万円だった場合のFLR比率は65%と算出されます。一般的に理想的なFLR比率は食材費が35%で人件費は25%、家賃は10%程度とされています。とくに食材費と人件費は飲食店の経営におけるコストの大部分を占めるため、仕入れや食材廃棄ロス、オペレーションなどを見直してコストバランスの適正化を推進しなくてはなりません。

人材育成の強化

飲食店の1日当たりの売上は「売上=客席数×客単価×回転率」という数式で構成されており、この3要素を最大化するためにはリピーター戦略の推進が非常に重要です。飲食店の経営はロイヤルカスタマーとリピーターによって成り立っているといっても過言ではなく、常連客の多い店舗はコロナ禍によって一時的に売上が落ちたものの回復の兆しを見せつつあります。ロイヤルカスタマーとリピーターの獲得には顧客満足度の最大化が必須であり、そのためには人材育成の強化によるサービス品質の向上が欠かせません。したがって、飲食業が抱える課題を改善するためには、人材育成の強化に向けた制度や仕組みの整備が求められます。

労働環境の改善・人材の確保

飲食業界は他業種に比べて離職率が高い傾向にあります。厚生労働省が2022年8月に公表したデータ(※2)によると、国内の主要産業別で見た離職者数は「宿泊業・飲食サービス業」が約127万人と最も多く、離職率に関しても25.6%と最も高い値となっています。人手不足が常態化している飲食業界では、まずは労働環境の抜本的な変革を推進し、優秀な人材を確保する体制を確立しなくてはなりません。ワークライフバランスを実現できる労働環境を整備すれば、離職率や定着率の改善によって多様な人材を確保しやすくなります。ベテランの従業員や応対品質に優れる人材を確保することで顧客満足度の向上に寄与し、ひいては経営基盤の総合的な強化につながります。

飲食業の課題解決はDXがカギ

国内の飲食業界では経営体制の抜本的な変革が求められており、その実現に欠かせないのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進です。DXとは「デジタル技術の活用による変革」を指す概念であり、業務プロセスのデジタル化に留まらない、組織構造やビジネスモデルそのものの変革を意味します。最先端のデジタル技術を事業領域に活用することで経営体制に変革をもたらし、市場における競争優位性を確立することがDXの本質的な目的です。

飲食業は人間によるオペレーションが不可欠なビジネスであり、事業領域にデジタル技術を取り入れることが難しいと思われがちです。しかし、モバイルオーダーシステムやキャッシュレス決済、予約管理システム、顧客管理システムなど、先進的なITシステムの活用によってDXを推進している企業は少なくありません。さまざまな課題を抱える飲食業界の現状を打破するためには、中長期的な経営ビジョンと事業計画に基づくDXへの取り組みが必須です。

老舗洋食レストランの事例:DXでコロナ禍でもV字回復

1948年に創業された銀座の老舗レストラン「銀座 日東コーナー 1948」では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言や時短営業の要請によって数百以上の予約がキャンセルされ、経営危機の窮地に追い込まれていました。また、コロナ禍の影響によって店内における対面での意思疎通が困難となり、コミュニケーションの希薄化から業務連携に支障が生じていました。

そこで同社が事業を立て直すべく推進したのが、ワークマネジメントツール「Asana」の活用です。具体的にはプロモーションの企画やタスク管理、ペルソナに合わせたコース料理の開発やメニュー設計などをAsanaで管理し、関係者全員がタスクやプロジェクトの全容を俯瞰的に確認できる状態を構築しました。その結果、オペレーションの効率化によってスムーズな店舗運営が可能となり、落ち込んでいた経営状況のV字回復に成功しています。

まとめ

近年、国内の飲食業界はさまざまな社会的背景の影響から、人手不足や売上の低迷、原材料費の高騰といった課題が深刻化しています。このような現状を打破するためには、適切なコスト管理や人材育成の強化、労働環境の改善といった施策に取り組まなくてはなりません。とくに重要なのがデジタル技術の戦略的活用による経営改革「DX」の推進です。DXの実現を目指す飲食店は、ワークマネジメントツールAsanaの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
Asanaの導入事例集

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