フィンテック×信託業務にも柔軟に対応
工数管理を劇的に改善したTrust Base

 2024.12.16  ワークマネジメント オンライン編集部

■企業情報

Trust Base株式会社 ロゴ

Trust Base株式会社

■従業員数
約80人(信託銀行は約14,000人)

■取材対応者
Trust Base株式会社 取締役CEO
田中 聡 氏

Trust Base株式会社 デジタルオペレーションセンター シニアマネージャー
立神 豪祐 氏

■導入効果
  • 業務の可視化で、根深い課題だった縦割り組織を脱却
  • 中途入社も翌日からスムーズに業務開始
  • ポートフォリオのクロスマネジメントで業務を時短

Trust Base株式会社 取締役CEO 田中 聡 氏(右) Trust Base株式会社 デジタルオペレーションセンター シニアマネージャー 立神 豪祐 氏(左)Trust Base株式会社 取締役CEO 田中 聡 氏(右)
Trust Base株式会社 デジタルオペレーションセンター シニアマネージャー 立神 豪祐 氏(左)

三井住友トラストグループのDX推進の中核を担うTrust Baseは、母体となる三井住友信託銀行から独立した環境のなかで、フレキシブルな開発環境や手法の高度化、更なるデジタル人材の登用と定着、ビジネス創出力の活性化などを目的に、2021年4月に設立されました。「共創と革新」をビジョンに掲げ、新しい可能性へのチャレンジを後押しするような支援も行っています。

会社としての二大事業のひとつは、「データドリブンな意思決定メカニズムの構築」です。これまで銀行の複数の事業やグループ会社に多くの情報がストックされています。データの品質を保証し、ガバナンスを効かせ法令を遵守しながらも、銀行の各事業やグループ会社に散在するデータを使っていかにお客様にグループ全体で価値を届けられるかを追求しています。

そしてもうひとつは「生成AIを活用した業務改革」です。信託銀行ビジネスは、お客様に寄り添い、数多くの選択肢から最適なソリューションをお客様ごとに提案する、まさにフルカスタマイズ型の商品提供をできることが強みですが、同社ではさらにこのノウハウ・知見に生成AIを組み合わせることで、より効率的に多くの方へ信託ビジネスが展開できるよう研究・検証を進めています。

これら二つを実現するために、データ処理の方法や、提案に至った背景といった業務プロセスを可視化することは必須かつ共通の課題でもありました。

そのような中で、Trust BaseがAsanaを導入したのは、2022年のこと。会社の成長に伴ってメンバーが一気に増えたことにより、様々な課題が浮上したことがきっかけでした。導入に至る経緯や活用法について、取締役CEO 田中聡氏、そしてデジタルオペレーションセンター シニアマネージャーの立神 豪祐 氏に詳しくお話を伺いました。

組織拡大により属人的な知識では非効率に
プロセス管理ツールの必要性を実感

Trust Baseは社員と協力会社のメンバーを含め計150人ほどの組織です。部署はセンターごとに分かれており、「UXデザインセンター」、「ビジネスデザインセンター」、「データサイエンスセンター」、「デジタルオペレーションセンター」、「DXプラットフォームセンター」「企画管理部」の6部門で構成されています。Asanaの運用を担当している部署は、業務プロセスの改革やデジタル化などを推進するデジタルオペレーションセンターです。

Trust BaseがAsanaの検討を始めたきっかけは、設立時は30名ほどだった社員が、一気に約150名に増えた時のことでした。新入社員は銀行員にとどまらず、事業会社、SIer、コンサルティング会社など、多岐に渡る業界から異なる職歴を持ったメンバーが数多く入社しました。しかし組織が大きくなるにつれて、少しずつ縦割りの組織文化が芽生え始めていたのです。

「毎月のように新しいメンバーを迎え入れていたため、以前のようにただ目標を立てて共有するだけでは、全員に同じ方向を向いて走ってもらうことが難しくなると感じていました。隣のチームの人が今何をしているのか把握できない。誰が、いつ、何に、どれほどの時間とコストをかけているのか、どんな悩みを抱えているのかが可視化されていないことは、組織として大きな課題だと考えていました」(田中氏)

中途入社する社員が増えるにつれ、新たなメンバーに対するレクチャーにも課題が見えてきました。Trust Baseでは、Microsoft Officeの各種アプリやシステム開発プロジェクト管理ツール「Jira」など所属部署や業務によって多くのツールが使われています。銀行と協業する業務については、業務のプロセスやルールがMicrosoft Word換算で何千ページにも相当するドキュメントに記載されています。そのため、新たに入社した人は、その膨大な資料から必要な手続きに関する情報を自分たちで探す必要があったのです。

「例えば、何か一つ手続きを進めようと思っても、膨大なドキュメントから必要な手続きを探さなければなりません。先輩から検索のコツを教えてもらっても、それが口頭で行われているとすれば、サステナブルとは言えません。今日入社した人が明日からすぐにでも活躍してもらえるような職場を目指すために、仕組みを見直す必要がありました。同時に、リモートワークしていても、しっかり成果が把握できるプロジェクト管理ツールの必要性も感じていました」(田中氏)

Trust Base株式会社 取締役CEO 田中 聡 氏Trust Base株式会社 取締役CEO 田中 聡 氏

そんな中、三井住友信託銀行との連携を通して、Trust BaseはAsanaの存在を知ることになります。Asanaの有用性を検証してほしいとの同行の要望に応える形で、2022年6月頃からAsanaを利用し始めました。将来的に銀行で活用する可能性も踏まえて、Asanaが銀行の堅牢なセキュリティに準拠する高い安全性レベルで運用できるのか、検証が必要でした。

そこで、業務の品質向上を目指すオペレーション改革を推進していた、デジタルオペレーションセンターのシニアマネージャーである立神氏が中心となり、仕様や機能に関して、実務に活用できるか、セキュリティが確保されているか、等の視点から検証しました。その結果、実務で利用することができ、信頼に足るセキュリティが担保されていることが確認されたため、Trust Baseは2023年12月から全員にライセンスを付与し、本格運用へと進みます。

しかし、当初は「使いたい人が使う」といった状況で、社内への浸透は思うように進まず、2024年4月に全体的な運用方法を見直すことになりました。

プロジェクトを色分けし
ひと目で進捗状況と重要度を把握

Trust Baseではプロジェクト始動の際、プロジェクトごとに各センターからメンバーが集まります。田中氏はその仕組みについて、「アジリティを保つための体制です。プロジェクトがうまくいけば、銀行に還元するか、我々で継続します。うまくいかない場合は早めに諦め、なぜダメだったかという知見を各センターに持ち帰って次の糧にしているのです」と説明します。

この体制に基づいてAsanaの運用を見直すため、組織の「ゴール」に中期経営計画の内容を設定、その下に経営計画で取り上げる目標を設定しました。さらにその下に「プロジェクト」を紐づけることより、今やっている仕事がどの中期経営計画に対して紐づいているのかを常に意識できる仕組みにしました。中期経営計画に紐づかないものの、組織としては重要といった業務についてもゴールを設定し、その下に目標とプロジェクトを作っています。

複数のプロジェクトを横断して管理する「ポートフォリオ」はフル活用しています。所属する部署や提供する銀行の事業ごとにポートフォリオで仕分け、プロジェクトも階層化するようにしました。プロジェクトを重要度や属性で7つのレベルに分け、各レベルが視覚的に分かりやすいよう、それぞれにカラーも設定しています。もっとも重要な「T1」プロジェクトは「銀行の経営計画と紐づくプロジェクト」で赤色、経営計画に紐づかない「B3」は「自己啓発プロジェクト」で紫色に設定しています。プロジェクトの承認者ベースで階層分けしています。

No Ticket, No Work」を標語とし、日々のどんな業務をおこなうときも、必ずタスクを設定し、どのプロジェクトを遂行するために今のタスクがあるのかを意識して働くよう社員に呼びかけました。

プロジェクトはレベルごとに色分けされておりひと目で重要度などを把握しやすいプロジェクトはレベルごとに色分けされておりひと目で重要度などを把握しやすい

この運用ルールを社内に浸透させるにあたり、トップである田中氏が全社員に直接説明しました。「組織の中の一員として行うことは全てAsanaに書いてほしいと伝えました。例えば、業務時間中にAIを学ぶための勉強会をした場合、それをAsana上で『業務に活用できる可能性のある自己啓発』であると全員の前でコミットできれば、その書籍代をサポートするといった支援ができるようになるからです。色分けしたことにより、ある社員は『会社に役立つ業務はしているが、チャレンジはしていない』といったこともひと目ですぐ分かります。収益に役立つ重要度の高いプロジェクトも、自己啓発につながるようなチャレンジングなプロジェクトも両方に取り組んでもらうことで、個々人の取り組むプロジェクトを見たときにバランス良くカラフルになっていることが理想ですね」(田中氏)

ルールをまとめた立神氏は、「トップメッセージとして発信されたことが大きかった」と振り返ります。

「元々新たなツールを使うことに抵抗を感じない同社のメンバーではありますが、田中がAsanaで管理するように伝えたおかげで、社内への浸透が一気に進みました。新たなメンバーが入社した際も、何をすればいいのかはすべてAsanaに集約されており、自分に関連するプロジェクトで機能を使いこなす練習もオンボーディングに設定できるので、仕事の進め方を自然に学べます」(立神氏)

横と縦のマトリックス的視点で
プロジェクト管理もより効率的に

ポートフォリオを活用した取り組みはそれだけにとどまりません。進捗報告におけるマネジメントの工数を減らす取り組みも開始しています。ポートフォリオによって、プロジェクトの進捗を縦串と横串から多角的に見られるように工夫しています。縦串は、ゴールと経営計画単位のポートフォリオ、横串はサービス提供する銀行の事業単位でのポートフォリオです。これにより、Trust Base全体でのサービス提供状況の管理が、経営者が意識するマクロな視点と、担当者が関心を持つミクロの視点で視覚的に捉えられるようになりました。かつてのように、マネジメント層が担当者からExcelで報告されたミクロの進捗を会議前に慌ててマクロな視点にまとめなおすといった必要もありません。

また、他の人の仕事が自分の仕事と同じ粒度で可視化され、かつては相手に聞かなければわからなかった進捗や作業の内容が、いつでも自分で調べられるようになりました。

田中氏によるとこのポートフォリオの良さは、「見るべきスコープごとで組むことができ、それぞれのダッシュボードが作れること」だと言います。マネジメントを行う側としては、簡単に尺度や切り口を変えて見られることは工数削減にも繋がります。

立神氏は日誌を作る際にAsana AIも使っていると話します。

「報告のための日誌づくりもポートフォリオでやっています。自分が関わっているプロジェクトをすべて入れて、Asana AIにまとめてもらっています。かなり精度が高く、ほぼ自分で手を入れる必要がないほど、しっかり要約してくれます」(立神氏)

また、「感謝」機能も立神氏のお気に入りです。メンバーがタスクを完了した際に、コメントで「ありがとうございました」と書くよりも、感謝を示す可愛らしいキャラクターなどのスタンプを送れば気軽にお礼の気持ちを表せます。「この機能で気軽にお礼の気持ちを示すことができるのはありがたいと思っています」(立神氏)

Trust Base株式会社 デジタルオペレーションセンター シニアマネージャー 立神 豪祐 氏Trust Base株式会社 デジタルオペレーションセンター シニアマネージャー 立神 豪祐 氏

Asanaを組織知が集約する場所に
タイムトラッキングで時間管理にもトライ

最後に、今後のAsanaの活用について、田中氏に尋ねました。

「Asanaを使ってプロセスを記録することで、評価基準について社員にも納得できるような説明責任を果たせるようにしていきたいと考えています。例えば、経営目標に基づいてAというマイルストーンを当初設定したとします。しかしプロセスを進めていく中で、Aのマイルストーンではなく、 代わりにBにチャレンジした方が良いと判断した、というように各自が意思決定していく経緯までも、Asana上に記録することが可能なのです。技術の発展が目まぐるしい中で業務を進める我々のような企業にとって、Asanaの柔軟性はフィットしていると感じています」(田中氏)

また、タイムトラッキング機能の利用も促進する予定です。

「最初は1日4時間分だけでも良いので、タスクのところにタイムトラッキングを入れることで、定量的に時間を把握できるようにできればと思っています。また、No Ticket, No Workは効果があると社内に腹落ちしてもらうことで、社員が進んでタスク登録をする文化醸成にもチャレンジしていきたいと考えています」(田中氏)

さらに田中氏は「本来はAsanaに求める機能ではないかもしれない」と前置きしつつ、「困った時にここに聞けば何でも仕事のやり方がわかる場所であってほしい」と、Asanaをナレッジの蓄積場所として活用していきたい胸の内も明かしました。

信託銀行の場合、少量多品種の仕事が多く、ルール通りにはいかない個別のプロセスが頻繁に発生します。その点、Asanaは自由度が高く、柔軟にプロセスを追加したり削除したりすることができます。今までは属人的なノウハウとして蓄えられていた知見を組織知とするプラットフォームとしての役割をAsanaが果たしていくことにも期待が寄せられています。

「我々がAsanaを使いこなすことで銀行にも導入が進み、最終的にはこの成果をお客様に還元できればと願っています」と、田中氏は今後の展望を熱く語りました。

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