■企業情報 みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社 ■従業員数 ■取材対応者 数理コンサルティング・データアナリティクスグループ コーポレートアドバイザリー部 経営企画部 兼 業務・技術推進部 フィナンシャルエンジニア |
■導入効果
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みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社 代表取締役社長 安原 貴彦 氏(左)、数理コンサルティング・データアナリティクスグループ コーポレートアドバイザリー部 副部長 野原 眞 氏(中央)、経営企画部 兼 業務・技術推進部 フィナンシャルエンジニア 田所 雅大 氏(右)
みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社(以下、MDFT)は、「『サイエンス』と『インサイト』で未来を照らす」というミッションのもと、最新の金融理論や数理科学、IT、データ分析技術を駆使し、経営管理やリスク管理高度化についてのコンサルティング業務、データアナリティクス技術の研究開発と活用、投資や運用の助言に戦略開発、新商品や新金融スキーム開発のサポートを行っている企業です。
同社のミッション、ビジョン、バリュー(MVV)のもとに全社員が一丸となって業務を推進するために、ワークスタイル変革を進めることが急務でした。Asanaを導入し約一年半経った今では、社内に大きなワークスタイル変革をもたらしています。Asana導入の経緯とその効果について、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー 代表取締役社長 安原 貴彦 氏、経営企画部 兼 業務・技術推進部 フィナンシャルエンジニア 田所 雅大 氏、数理コンサルティング・データアナリティクスグループ コーポレートアドバイザリー部副部長 野原 眞 氏にお聞きしました。
人的資本経営のために大切な
3つのポイントの実現へ向けて
安原氏は、「人的資本経営」への取り組みとして、「ワークプレイス」「ワークフロー」「ワークスタイル」の3つの取り組みが必須だと考えています。ワークプレイスについては、チェンジマネジメントを実現するオフィスづくりのためにリニューアルを実施し、ワークフローについては社内DX推進プロジェクトを立ち上げて挑んでいます。そしてワークスタイルについてはAsanaをハブとして改革を推進しています。
みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社
代表取締役社長 安原 貴彦 氏
「ワークフロー、ワークスタイルに関しては、様々な課題を感じていました。案件管理システムが古く、機能を継ぎ足ししながら運用していたため、柔軟性が無くなっていました。さらに工数も正確には管理できておらず、労務管理的にも課題のある状況でした。また新たに制定したMVVの浸透という面でも更なる工夫の余地があるのではないかと思っていました」(安原氏)
MDFTの人的資本経営への取り組み
2022年4月、当時入社2年目だった田所氏も現場社員の一人としてワークスタイルに対して課題感を抱えていました。様々な業務が社内で数多く行われているにもかかわらず、タスク管理ツールが無いことに不便さを感じていたのです。「私はOutlookのTodo機能でタスク管理をしていたのですが、各社員がそれぞれのやり方でタスク管理をしている状況でしたので、業務の抜け漏れが発生しないか疑問に感じていました。また、そのような環境では他の人のタスクや業務状況が不透明で、相談事があっても上司や先輩に声をかけづらい。そんな折に上司から案件管理、タスク管理ツールの導入検討をするように指示を受けたのがきっかけでした」と、田所氏は当時を振り返ります。
田所氏はまず案件管理ツールやタスク管理ツールに関するデスクトップリサーチを実施しました。複数のツールを調査する中で、「シリコンバレーで勢いのある企業の多くはAsanaを使っているらしい」という米国在住の知人からの情報を得て、Asanaについても調査を開始しました。その後、Asanaの担当者に話を聞いていくうちに、Asanaは単なる案件管理やタスク管理だけではなく、社内のコミュニケーションやコラボレーションも促進できるツールだと気づき始めました。
「なかでもゴール機能については、我々に大きなメリットがあると感じました。単にマネージャーが日々の案件管理に利用するだけではなく、それぞれのタスクや案件が、我々の掲げる本源的な社会課題の解決や事業計画における目標に紐づいているということが、視覚的に理解できるのです。これなら社員も、日々の業務の中で社会貢献や事業計画とのアラインを感じられるのではないかと考えました。更にコラボレーションがAsanaの中で完結できる点も独自の良さだと感じました」(田所氏)
とはいえ、その効果を検証するための本番環境でのトライアル実施に際し、セキュリティの壁が立ちはだかります。MDFTは、親会社の金融機関と同様に、厳格なセキュリティ要件を満たした運営が必須です。みずほ銀行、第一生命、損保ジャパンの3社の出資を得ていることもあり、情報の受け渡しにも細心の注意が必要でした。そこで田所氏はIT担当者だけでなく、リスク・コンプライアンス担当者にも声をかけ、本番環境でのトライアルを実施するための方法を模索しました。
みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社
経営企画部 兼 業務・技術推進部 フィナンシャルエンジニア
田所 雅大 氏
トップダウンとボトムアップで
検討開始から本格導入まで一年で達成
検討プロセスを経て、本番環境で安全にトライアルが実施できると判断した2022年10月、単一の案件からトライアルをスタートしました。しかし、トライアル中の案件以外では従来通り既存のメールやTeamsを利用したコミュニケーションが行われており、複数のツール併用に疲弊する社員もいました。そこで、Asanaのトライアル使用を単一の案件から社内の全案件に拡大しましたが、Asanaに作成されるタスク数は思うように増加していきません。
2023年1月、田所氏はどうにかもっと多くの社員にAsanaを利用し評価してもらいたいという思いから、Asana Japanによるレクチャー動画を全社員に共有しました。それが、企業のトップとしてワークスタイル変革の旗振りをしていた安原氏の目にも留まります。
「田所君から共有されたAsanaのレクチャー動画を、最初はちょっとだけ見てみようと思ったのですが、その面白さに興味を惹かれ、一気に2時間分の動画を視聴しました。特に上司から部下へのアサイン方法に魅力を感じました。気心の知れたチームメンバーだと『うまくやっておいて』などと、つい適当な指示をしてしまうこともありますが、Asanaではいつまでに誰が何をするかを明確にアサインしなければなりません。また、ゴール機能により、すべての案件が会社のゴールに紐づいていることがわかる点も良いと思いました。これまで、本源的社会課題の解決に向けた全社的な進捗管理をExcelで管理していましたが、各社員の日々の業務とのリンケージは可視化されていませんでした。しかし、Asanaでは自分が携わっている案件をドリルアップしていくと、そこにゴールが明記されているので、何のためにその業務をやっているかがわかる。この2点を評価しました」(安原氏)
安原社長からの評価をきっかけに社員の間でも一気に認知が進みました。そこから話は順調に進み、2023年4月からAsanaの本格導入が決定、検討開始から約一年で本格導入までこぎつけることに成功しました。
導入後の次の課題は社員へのAsanaの浸透でした。田所氏はワークフロー変革に取り組んでいた社内DX推進プロジェクトに参画し、プロジェクトのメンバーと毎週「Asanaナレッジセッション」を開催し、社内向けレクチャーを行いました。
ここで、前職でAsanaを利用していた野原氏も社内DX推進プロジェクトに加わります。
野原氏はAsanaを社内に浸透させること、また部署ごとに異なる細かな要件を調整する役目などを担っています。
「Asanaの使い方を教えるチームを編成し、各部に一人ずつ担当を配置しています。毎月、各部のAsana利用に関する悩みなどをヒアリングして、チームで対応策を検討、還元しています。一方的に教えるのではなく、インタラクティブに進めるよう心がけています」(野原氏)
みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社
数理コンサルティング・データアナリティクスグループ
コーポレートアドバイザリー部 副部長
野原 眞 氏
全社員が日々Asanaを活用
ゴール機能でミッションへの意識も向上
MDFTの事業計画では、「本源的社会課題の解決」「研究開発」「人材育成」「経営基盤強化」の4つに対してそれぞれ目標を掲げ、その目標に対してさらにブレイクダウンされた下位目標を各部が負っています。この目標のツリー構造をAsanaゴール上に実装し、各ゴールと案件の紐づけを設定することで、各業務と本源的社会課題や事業計画とのリンケージを可視化しています。各ゴールのオーナーは定期的にゴールに対するステータスを更新し、目標に対する達成状況を可視化します。安原氏はAsanaゴールを使うことによりこのPDCAサイクルを効率的に回すことができると話します。
Asanaを導入し、果たしてどんな効果があったのか。社長の立場から見た変化について、安原氏に率直な意見を尋ねました。
「Asanaのゴール機能で、社員が常に目標を意識するようになったと感じています。会議中も、頻繁に課題解決の話が出てくるようになりました。また、Asanaで業務報告をする部長もいます。私や各マネジメントメンバーからの課題はAsanaに登録し、部下にタスクの形式でアサインしています。自分を起点に、マネジメント、その部下にまで同じプラットフォームでコラボレーションできる。とても良い使い方だと思っています」(安原氏)
一方の社員側でも、ゴール機能は意識を変える機能だと認識しています。Asanaではプロジェクトを作る際、MVVを見ながらゴールを設定するため、個々のプロジェクトマネージャーも自然とMVVを確認する機会が増えているのです。
「たとえば、お客様から分析依頼があり、プロジェクトをAsanaで作成する際に、必ずゴールに紐づける必要があります。その時に案件の先に解決すべき本源的な社会課題があることを認識し、より高い意識をもってその案件に取り組まなければならないことに気づかされます。目先の業務だけでなく、何のためにその案件やタスクを行うのかが明確になり、視座が上がったと感じています」(野原氏)
実際のAsana画面。常に会社の目標と自身の業務との紐づきや達成度がひと目で認識できる
社内では、Asanaがあらゆるシーンで活用されています。コンサルティングの案件では案件管理やタスク管理に利用し、総務部では名刺の発注などのルーティン業務にフォーム機能を使っています。人事部では非公開プロジェクトを作成し、個人情報に留意しながら管理しています。コンプライアンス管理部署では研修のタスクを作成し、全社員の受講状況を管理するなど、その活用は広がりを見せています。
野原氏は、マネジメント面としてはレポート機能も便利だと話します。
「案件に工数がどれくらいかかったのかを入れるようにしています。レポート機能で各人が費やした時間を見ると、個々の業務量や内容を把握できることから、担当者の繁忙度や本人の希望業務とミスマッチがないかを振り返ることができるため、リソース配分に役立てることができます」(野原氏)
また野原氏は、担当者が属人的に保有しているTipsを他の社員に共有するためのプロジェクトも作っているとのこと。社員が見つけたTipsをタスクとして作成するとともに定期的に発表する機会を作り、良いアイディアは全員で使うように促していると話します。
全社導入から1年半経った今では、約200名のすべての社員がそれぞれの目的に沿ってAsanaを活用しており、その活用の幅は徐々に広がっています。ミドルマネジメント層がAsanaを使ってコミュニケーションしたり、タスクを投げたりするようになったことで、部下の間でも段々とAsanaの活用が増えています。
「ボトムアップとしてレクチャーの機会を作ってきましたが、経営側からのトップダウンもあり、両側から挟みこむことでAsanaを活用する雰囲気が醸成できたと思っています」(田所氏)
人的資本経営の「ワークスタイル」改革は、Asanaで着実に進んでいるようです。
ワークスタイルの確立から
ワークフローの改良へ
来期以降は、Asanaのタイムトラッキング機能で実際にかかった工数を入力し、全社レベルでそのデータをマネジメントに使っていく計画を進めています。「Asanaで実績の工数を把握し、将来のワークロードの『見える化』計画を考えています。ひとつひとつのタスクに時間を入れていくのはハードルが高いため、方法を模索しているところです」と野原氏は説明します。
人的資本経営の「ワークスタイル」の変革として導入されたAsanaを、「ワークフロー」改善にも活かしていこうという計画も進んでいます。
MDFTでは、「ワークフロー」改善を目的とした社内DX推進プロジェクトの中で、労務(工数)管理や案件の採算管理にかかわるワークフロー全体の見直しを図っています。これまで利用してきたMicrosoft 365や経費管理システム、人事システムなどの各業務ツールに関して、会社全体での運用コストを低減しながら、効率的なデータ活用を促進できるような体制整備を進めています。
「Asanaの利用が浸透してきたので、次のフェーズとしてそのデータを経営判断に活かすことを考えています。安原さんはよく『ビルトインマネジメント』と表現するのですが、Asanaで仕事を管理することで、自然に必要なデータが収集されて活用できるようにすれば、業務の抜け漏れがなく負担感もない。予定・実績の工数データの収集やそのデータのツール間融通、社内データ全体の整備・利活用に挑戦している最中です」(田所氏)
「Asanaはなくてはならないツール」―田所氏と野原氏は口を揃えて言います。導入することで、ただのタスク管理ではない「ワークマネジメントツール」であることを実感してきたそうです。
「Asanaを使うことで業務の無駄を排除し、可能な限りお客様のために時間を使いたい。本業に注力するためにもAsanaの活用を広げていきたいと思います」と野原氏は話します。Asanaをワークマネジメントの中心に据えて、MDFTは今後も本源的な社会課題の解決への取り組みを加速させていきます。
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