働き方改革が推進される中、新型コロナウイルスの影響もあり、自宅などで仕事をするテレワークに注目が集まっています。本記事では、テレワークの1つである「在宅勤務」に焦点を当て、その概要や企業や従業員にとってのメリットについて解説します。
そもそも在宅勤務とは
在宅勤務とは、名前のとおり所属する会社のオフィスに出社せず、「自宅」を就業場所とする働き方です。働き方改革の切り札として、政府主導で推進されているテレワークの勤務形態の1つです。従来、在宅勤務が可能なのはパソコンで行える自己完結型の業務という見方が強く、Webデザイナーやエンジニアなど一部の職種に限定される傾向にありました。
しかし、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大防止策としてあらためてその有用性と必要性が見直されたこともあり、さまざまな職種で在宅勤務が進んでいます。ビジネスチャットやWeb会議システムなど、リモートワークを円滑に行うためのITツールが急速に普及しました。こうした状況も、企業における在宅勤務の実施率をさらに押し上げているのです。
総務省の「平成30年版情報通信白書」によると、2018年時点の国内企業のテレワーク導入率は13.9%で、テレワーク導入企業の在宅勤務導入率は29.9%でした。しかし、コロナ禍の2020年11月時点にパーソル総合研究所が実施した調査では、企業の正従業員テレワーク実施率は全国平均で24.7%にまでアップしています。特に従業員数が1万人以上の規模では45%と正従業員の約半数がテレワークを実施しているという結果でした。テレワーク導入率がこれだけアップしている以上、在宅勤務も同様の傾向にあると推察されます。
企業にとって在宅勤務を導入するメリット
企業にとって在宅勤務を導入するメリットは幅広く、やり方次第では期待以上の効果をもたらします。多くの企業に共通するメリットは次の4つです。
人材確保の強化
在宅勤務導入は、離職率の低減と新たな人材確保につながります。まず離職率の低減についてですが、育児や介護、配偶者の転勤などのライフイベントによって物理的に出社が難しくなるケースでも、在宅勤務という形で仕事を継続できます。
また、こうした事情以外にも、「就業場所をオフィスに限定せずに柔軟に働きたい」というニーズに応えられるでしょう。少子高齢化によって労働力不足が深刻化している日本では、仕事の効率化に加えて、いかに今いる人材を流出させないかという点が重要です。
採用においても在宅勤務も可能と間口を広げれば、居住地の対象エリアを拡大でき、自社が希望する条件にマッチする人材を獲得するチャンスも増えます。在宅勤務は個人のライフスタイルに寄り添う柔軟な働き方というイメージもあるため、制度を導入している企業の魅力もアップします。従業員一人ひとりが長く働きやすい環境を積極的に整えている企業というイメージがつけば、ワークライフバランスを重視する優秀な人材の目にも留まりやすくなるでしょう。
費用の削減
在宅勤務を導入することで削減可能な費用も多くあります。削減効果が高いものは2つあり、1つ目はオフィスの維持費です。在宅勤務者が増えれば、オフィスに設置する作業デスクや椅子などの備品を減らせます。オフィスの稼働率や利用スペースも減らせる分、光熱費や人件費も削減できます。従業員のすべてを在宅勤務へ切り換えれば、オフィスそのものをなくすことも視野に入ってくるでしょう。
2つ目は従業員の交通費です。各自宅を就業場所にすることで、オフィスまでの通勤費が不要になります。さらに、在宅勤務時のWeb会議の活用によって、出張費や移動費も削減可能となるでしょう。特に従業員数が多い企業、海外出張が多い職場では、相当な費用削減を実現できるはずです。
在宅勤務の導入には自宅で円滑に仕事を行うための環境整備に多少の初期費用がかかりますが、長い目で見たときのコスト削減効果は見逃せません。これまで述べた以外にも、在宅勤務によって業務のペーパーレス化、オンライン化が進むことが見込まれるので、資料の印刷代や保管にかかる費用なども圧縮できます。
非常時の業務継続対策
在宅勤務の体制を整えておくことは、すなわち災害や感染症拡大など企業活動を停滞させる恐れのある事態への備えとなります。オフィスが災害で損壊したり、通勤が不可能な事態になったりしても、在宅勤務者が仕事を続けられる状態であれば、企業活動は継続可能です。事業の損失軽減へつながるでしょう。就業できるエリアが広く数も多ければその分だけ、リスク分散になるというわけです。
感染症が発生した際には、3密を避けて感染の危険性を減らすことが重要です。従業員同士の接触機会を減らせる在宅勤務は、その有効な対策の1つです。仮に社内に感染者が出た場合も、すぐにフロア全体を在宅勤務に切り替えることで、感染拡大を早期に抑え込める可能性が高まります。
生産性の向上
在宅勤務を取り入れることで、生産性の向上も見込めます。まず、前述の人材確保の強化は生産性の向上に直結します。経験豊富な従業員の定着率が上がれば、高いアウトプット品質を維持しながら育成やフォローの手間も省けるので一石二鳥です。
通勤可能エリア以外から、高い語学力など専門スキルを有する人材が即戦力として仲間入りしてくれる可能性もあるでしょう。海外との交渉などを、通訳を介さずに1人で推進できる人材がいれば、生産性は上がります。
詳しくは後述しますが、生産性の高い社員によっては、在宅勤務に切り替えることで、より業務に集中してもらいやすくなる場合も少なくはありません。
加えて、在宅勤務環境を整えるためには、「各メンバーの役割と業務範囲の明確化」「業務の標準化やマニュアル化」「データ共有手段の整備」などを事前に準備しておく必要もあります。必然的に業務の棚卸しが進み、無駄な作業やプロセスを見つけることができるでしょう。
従業員にとって在宅勤務を導入するメリット
在宅勤務は、従業員の立場からしても多くのメリットが期待できます。前述のパーソル総合研究所の調査結果によると、コロナ収束後のテレワーク継続希望率は78.6%と極めて高く、2020年春頃と比べても継続希望率は上昇し続けています。テレワークが従業員にとってメリットの多い働き方だということの裏付けであり、具体的にどのようなメリットが期待できるのか順番に見ていきましょう。
業務効率の向上
まず、自分のペースで仕事を進めやすくなります。周りに人がいる環境ではどうしても集中力を妨げられやすく、計画通りに仕事を進められない場合もあります。まず多いのは、電話対応や来客対応です。アポイントを取らずに急に来社されても、取引先である以上対応しなければならないケースも多いでしょう。
このほか、急な打ち合わせや無駄な雑談も減ります。通勤や移動に費やす時間も削減可能です。Web会議であればその場から参加できますし、会議場所の手配も不要です。仕事への身支度にかかる時間も大幅に短縮されます。従業員個々人が、1人静かな場所で、仕事のアイデアをゆっくり練ることもできるでしょう。
通勤ストレスの解消
通勤ストレスから解放されるのも大きなメリットです。通勤には、満員電車・長時間通勤・公共交通機関の遅延・悪天候での出勤など、さまざまなストレスがつきまといます。従業員をこれらのすべてから解放すれば、心身ともにリラックスして仕事に臨んでもらえるでしょう。
人によっては、自宅とオフィスとの距離によっては往復の通勤時間だけで2~3時間かかっているケースも珍しくありません。さらに通勤ラッシュや渋滞する道路を利用するとなると、会社に行くだけでかなりの体力を消耗します。
中には、通勤時間短縮のために、わざわざ都市部のエリアに引っ越した従業員もいるかもしれません。「間取りが狭い・家賃が高い」という住まいを無理に選ぶ必要もなくなるので、従業員の日常的なストレスも溜まりにくくなると期待できます。
プライベート時間の確保
通勤時間がなくなる分、プライベートに使える時間が増えます。睡眠時間を多めに取る、趣味や自己啓発の時間に充てるなど、1日の時間をより有意義に使ってもらえるでしょう。
家族のいる従業員なら、一緒に過ごせる時間や会話を増やせるでしょう。家事や育児、介護の時間を増やせるのはもちろん、休憩時間を使って家族と一緒にご飯を食べるなどの柔軟性の高い選択も、在宅勤務であれば可能です。
企業にとっても従業員のワークライフバランス実現が、在宅勤務導入の一番のメリットといっても過言ではありません。ワークライフバランスの実現によって日常生活が充実すれば、従業員の心身にも余裕が生まれやすくなります。心身の余裕は、仕事へのやる気や挑戦意欲の原動力となります。結果的に、企業のメリットへとつながってくるというわけです。
在宅勤務にはデメリット・注意点もある
在宅勤務を導入した企業において、課題や改善点が挙げられているのも事実です。在宅勤務を導入する際には、あらかじめ想定される課題を踏まえたうえで、その対処法についても十分検討しておく必要があります。在宅勤務のデメリット・注意点として代表的なものをいくつか例として紹介します。
まず、企業として無視できないのが、コミュニケーションの希薄化や勤怠管理の難しさ、セキュリティリスクの問題です。お互いの顔や状況が見えないため、報告や連絡の機会が減り、テキストベースのやり取りがメインになる状況では認識のズレも懸念されます。情報漏えいやウイルス感染などのリスクも高まりますので、企業として対策を取っておかねばなりません。
従業員としても、コミュニケーションの機会が減少することで、業務上の判断に迷う場面が増えるかもしれません。自宅という、視界にテレビや雑誌などの誘惑が入り込んでくる環境でいかに成果を維持するか、自己管理能力も問われます。勤怠管理が難しくなった結果、成果主義が進みすぎて適正な評価が受けられなかったり、長時間労働やサービス残業が常態化してもチェックすることができなかったりする恐れもあります。
まとめ
在宅勤務におけるデメリットや注意点の多くは、ITツールの活用によって解決できる可能性があります。
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