新型コロナウイルスの世界的流行や深刻な少子高齢化によって、経済の不確実性が増す中、企業には大胆な業務改善が求められています。そこで本記事では、業務改善に役立つフレームワークを7つピックアップして紹介します。より効果的な業務改善を図りたい方は、ぜひ参考にしてください。
業務改善の重要性とは
「業務改善」とは文字通り、組織が業務に関わる基本的なプロセスや手順を見直して、より効率的な結果を得られるようにするため、最適化に取り組むことを意味します。「改善(Kaizen)」という言葉は、主にトヨタ自動車の活動を通して、海外の企業社会においても日本の経営哲学として知られており、組織の持続的成長のために必要な概念として重んじられています。
業務改善の骨子は「無理・無駄・ムラをなくす」ことです。これらを成し遂げるために、企業は自社の業務内容全体、または従業員全体の労働量や労働環境を「見える化」する必要があります。つまり、「どこかに余計な要素が入り込んでいないか」「誰かに偏った業務負担になっていないか」など、大小の問題点を明確にして、常に安定した労働生産性が得られるように改善していくのです。
こうした業務改善の取り組みは、業務効率化・生産性向上・コスト削減といった企業利益に直結するとともに、業務の属人化を防止したり、従業員の労働環境の改善にも寄与したりします。
業務改善にフレームワークを活用する意味
業務改善に際しては、まず「フレームワーク」を学んでおくと効果的です。フレームワークの「フレーム」とは、もともと英語で「枠組み」のことを意味します。フレームワークは幅広い用途を持つ概念ですが、ここではいわば、業務改善をする際の定型的な考え方や、合理的な方法論・手順のことを意味します。
組織の多くの業務は、さまざまな経緯を通して作り上げられた伝統、ないしは習慣のもとで成り立っています。そうした習慣は往々にして、現場ならではの合理性と非合理性を兼ねつつ、「それがウチのやり方だから」という一種の愛着を伴って存続しがちです。
こうした強固な習慣にメスを入れ、業務改善を進めるためには、確固とした方法論に基づいて、客観的に問題点を洗い出していかなければなりません。そうでなくては、これまでその習慣のもとで業務を遂行してきた従業員に対して、説得力を持って業務プロセスの変革を訴えることは難しいでしょう。
社内のコンセンサスを得つつ、適切な業務改善を行っていくには、業務改善計画そのものが極めて合理的、かつ説得力に富んだものではなくてはいけません。そして、それに役立つのが、これから紹介する数々のフレームワークなのです。
業務改善に役立つフレームワーク7選
業務改善に役立つフレームワークは複数存在し、それぞれに異なる特徴や強みを持っています。以下では、厳選した7つのフレームワークについて解説していきます。
PDCAサイクル
「PDCAサイクル」とは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4つのプロセスを繰り返すフレームワークです。PDCAサイクルは以下の手順で進めていきます。
1.Plan(計画)
まずは自社の問題を特定し、その解決に役立つ情報やアイデアを出しながら、業務改善の実施計画を立てます。実施計画を立てるコツは、成功の基準を必ず明記し、「どうすれば成功となるのか」をできるだけはっきりさせておくことです。のちのチェック段階で、これらの基準を確認します。
2.Do(実行)
解決策が見つかったら、その方法を導入してテストします。この段階では、「該当の変更が望ましい結果をもたらすかどうか」をチェックすることが目的なので、限定的な運用に留めておきましょう。
3.Check(評価)
試験運用を行ったら、計画段階で定義した期待値に照らしてテスト結果を分析し、計画が成功したかどうかを評価します。もし失敗した場合は、やり方を変えて再び実施するか、計画の立案まで遡ります。無事に成功した場合は、次のプロセスに進みます。
4.Action(改善)
解決策の本格実施がこの段階です。しかし、PDCAサイクルはこれで終わりではありません。改良されたプロセスや製品を新たな基準とし、それをさらによくする方法を繰り返し探すことで、組織に継続的な成長を促すのがPDCAサイクルです。
バリューチェーン分析
「バリューチェーン分析」とは、自社の経営活動を細分化して分析し、「どの部門のどの活動が、自社ないしは顧客にとって特別な価値を創出するのに役立っているか」を分析するフレームワークです。
バリューチェーン分析においては、自社の業務を「主活動」と「支援活動」に区分することから始めます。主活動とは商品の製造過程や営業活動など、その商品が顧客に届くまでのプロセスに直接関与する業務です。
それに対して支援活動とは、技術開発や調達活動、人事・労務などの、主活動を支える業務を意味します。そして、それぞれの成果やコストが、企業全体ないしは特定のプロジェクトの成績に対し、どれくらい寄与しているのか分析をかけていきます。
バリューチェーン分析の主な効果としては、例えばコストを優先的にかけるべき分野を明確にしたり、競合他社との比較において自社が優位または不利になるポイントを明らかにしたりして、競合他社に対する自社の差別化に寄与することが挙げられます。
KPT
「KPT」とは、「Keep」「Problem」「Try」の3つの観点から業務を振り返り、継続的な成功を希求するフレームワークです。KPTは、とりわけアジャイル開発において用いられている方法です。
まず「Keep」の観点においては、自社が今後も続けるべきことを明確化します。例えば、売上の維持やプロジェクトの進行ペースなどです。次に、それを実現するうえで改善すべきことや、障害となりうる問題(Problem)を明らかにします。そして、それらを踏まえて新たにすることを確認し、挑戦(Try)していきます。
大切なのは、チームで問題を可視化して共有し、放置しないようにすることです。KPTは特別な準備が不要ですぐに始められるため、試行錯誤を繰り返しながらリアルタイムでプロジェクトを進行する際に適しています。
BPMN
「BPMN」とは「Business Process Model and Notation」の略称で、日本語では「ビジネスプロセスモデリング表記法」と呼ばれます。
BPMNにおいては、業務プロセスを可視化することを通して、課題の発見を行います。具体的には、矢印や図形などを用いて、業務全体の流れや担当者をわかりやすくフローチャート化することで、複雑な業務工程における問題点も明確にしていきます。
BPMNは1つのチームや部署単位で行うだけでなく、それらの間で互いに照らし合わせるよう実践します。これにより、各チーム間で、認識されていなかった業務の重複なども発見できます。
例えば、事業を拡大して業務が複雑化したり、スタッフが増えたりする中で、業務にブラックボックス化する部分が生まれていることもあるでしょう。こうした事態を避けるためにもBPMNは有用なのです。
ECRS
「ECRS(エクルス)」とは「Eliminate」「Combine」「Rearrange」「Simplify」の頭文字を取った略称です。この順番は、そのまま業務改善において高い効果が期待できる順番にもなっており、日本語にするとそれぞれ「排除」「統合」「代替」「簡素化」を意味します。
ECRSでまず優先されるべきは、企業の生産活動において直接・間接を問わず無駄なところや、効果の薄いところを「排除」することです。これができればコストも手間もかからず、業務のスリム化が可能になります。
次に行うのは、類似の業務を「統合」することです。これは逆にいえば、異なった業務を分離することでもあります。業務が複雑化することを避け、一元的な管理運用やスムーズな業務遂行を可能にします。
次の「代替」とは、作業の手順や作業場所、担当部門、担当者などを入れ替えることです。例えばオフィスのスペースの活用や、動線の適正化などもここに含まれます。さまざまな要素の「再配置」を通して問題解決に当たること、とも言い換えられるでしょう。
これらを経て、最後に検討すべき視点が「簡素化」です。「業務をもっと簡略化・効率化できないか」などを検討しつつ、新たな設備やツールの導入なども通して、業務全体の変革を行います。以上、ECRSの流れに沿って進めることで、過剰ないしは過小な変革を避けつつ、適正な業務改善が期待できます。
ロジックツリー
「ロジックツリー」とは、解決したい問題の原因をツリー状に枝分かれさせて論理展開する分析方法です。数学でいうところの「因数分解」に似たイメージです。
ロジックツリーにおいては、例えば「売上が伸びない」などの表面化した問題提起から始め、「売上が伸びない直接原因は何か」「その直接原因をさらに構成する原因は何か」と、思考を深めていきます。
この原因追究は多くの場合、単線的には進みません。というのも、世の中の出来事は大抵、複合的な原因によって起こるからです。つまり、Aの原因にはA1とA2があり、A1の原因にはA1-αとA1-βがあり……といった具合に、どんどん論理展開が枝分かれしていきます。
ロジックツリーは、問題を発生させている根本原因の特定に役立つだけでなく、論理展開における要素を変えることで、今後どのように行動していくかを考えるうえでも役立ちます。
5W2H
「5W2H」は、5つのW(Who・When・Where・What・Why)と2つのH(How・How much)を骨子に、業務の把握や分析を進める手法です。
「誰(Who)が」「いつ(When)」「どこ(Where)で」「何(What)を」「どうして(Why)」「どのような方法(How)で」「いくら(How much)で」行うのかは、仕事のあらゆる部分で必要となる基本情報であり、業務上のコミュニケーションや、業務改善案そのものの立案・実施においても役立てられるフレームワークです。
つまり5W2Hは、業務改善のフレームワークであると同時に、あらゆる企業活動において必須のフレームワークとも言えます。
まとめ
本記事では、企業における業務改善の必要性と、業務改善に役立つ7つのフレームワークについて解説しました。業務改善を目指しにあたっては、最初に自社ないしチームの業務内容を正しく把握し、問題点を明確にしなければなりません。そのためにはツールの活用が効果的です。
「Asana」はチームの効率的な情報共有を可能にし、ワークロードやポートフォリオなどの機能を通して、各メンバーの業務内容や業務量を可視化します。これらの機能により、大小の業務やビジネスの全体像を整理すれば、複雑な業務改善も効率的に進めることが可能です。業務改善に際しては、ぜひAsanaをご活用ください。
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