プロジェクト管理を徹底すれば、プロジェクトを遅滞なく進めて納期を守ることにつながるでしょう。プロジェクト管理に使える手法はいろいろありますが、この記事では代表的な手法として知られるWBS(作業分解図)を取り上げ、混同されがちなガントチャートとの違いを明示します。また、WBSを作るメリットを踏まえたうえで、どのように作るかを解説します。
WBSとは
WBSとは、Work Breakdown Structureという英語の頭文字を取った略称で、作業分解図や作業分解構成図などと和訳されます。
WBSはプロジェクトの全体像を明らかにするため、必要不可欠な作業を分解し、細かくなったひとつひとつの作業を構造化することによって過不足が出ないように作業内容を整理する手法です。WBSでは、はじめにプロジェクトを大きな作業要素(タスク)に分け、それを分解して小さなタスクに分割します。さらに、それらを細分化して、これ以上分割できなくなるまで分解を繰り返すことで、構成図を組み上げる部品となる最小単位のタスクが得られます。タスクを分解するたびに、大きなタスクから小さなタスクへと枝分かれするようにタスクを書き出していけば、大きなタスクから最小単位のタスクまで、すべての作業が網羅されたツリー構造ができあがります。
プロジェクトを管理して大きなトラブルなく達成させるのに役立つWBSは、業界を問わずプロジェクトマネジメントで使われる手法ですが、IT関連でもよく利用されています。
WBSとガントチャートの関係
ガントチャートは、1910年代にヘンリー・ガントというアメリカ人の経営コンサルタントが考案したグラフ形式のスケジュール表です。縦軸にはタスクを配置し、タスクごとに担当者・作業開始日・作業完了日などを書き入れ、横軸に時間を配置して棒や矢印で作業の進捗状況を表します。
このガントチャートがあれば進捗状況が一目でわかるので、プロジェクト管理や生産管理を行う際に作成しておくと非常に便利です。
WBSはガントチャートと一緒に活用されることがありますが、それはガントチャートの縦軸にくるひとつひとつのタスクがWBSのそれと同じであるという両者の関係性があるからです。したがって、ガントチャートを作成する際にはあらかじめWBSを作ってすべてのタスクを洗い出し、それを縦軸に配置してグラフ化していきます。
WBSの目的
WBSを作成する主要な目的は、プロジェクト全体から必要となるタスクを洗い出して明らかにし、行わなければならないすべてのタスクを把握することです。また、プロジェクトを計画するにあたって必要なタスクが抜け漏れることを防止し、プロジェクトの遂行を効率化することもWBSの大きな目的です。
WBSのメリット
WBSを作成すると、さまざまなメリットが得られますが、ここでは代表的な3つにしぼって紹介します
作業の明確化
WBSを作成すると、行うべきタスクと行わなくてよいタスクがプロジェクトを担う誰の目にもわかりやすいように可視化されて明確になります。
このように作業を明確化できれば、どの作業を誰に割り振るかといった分担がしやすくなり、どの作業で問題が起きたり時間を取られたりしそうかといった予測などもしやすくなるでしょう。また、プロジェクトについての関係者同士の情報共有もより容易にできるようになります。
トラブルの防止
前述のWBSの目的でも触れたように、WBSは行うべきタスクの抜け漏れを防ぐ対策としても活用できます。
プロジェクトを遂行に入る前の計画段階で必要な作業の抜け漏れや作業の重複が発見できれば、プロジェクトの進行を妨げるような手戻りやトラブルの発生防止につながるでしょう。
進捗の把握
WBSを利用すれば、プロジェクト全体における各作業の関係性について把握できるとともに、今どの部分の作業を行っているのか、プロジェクト全体の進捗状況を把握するのも容易になります。
WBSを見れば、予定よりも遅れている場合には一目瞭然になるため、すばやく対策を考えて対処できるようになるでしょう。
WBSの作り方
それでは、ここからは実際にWBSを作る方法について考えてみましょう。WBSは以下のような4つの手順で作成します。
プロジェクトの目指すところを確認する
WBS作りではじめに行うことは、プロジェクトが目指すところの確認です。
プロジェクトの目指すところには、クライアントの公式サイト作成や社内教育プログラムの構築など多種多様なものがあるでしょうが、それが具体的に何であるかによって、必要となる作業が変わってきます。特にソフトウェアを成果物として納品する場合には、機能要件だけでなく、セキュリティや拡張性など非機能要件についても確認が必要です。
まずはチーム全員で、プロジェクトがどのようなゴール、目標、目的をもち、何をもって成功とするのかを明確化しましょう。
作業を洗い出す
2番目に行うことは、プロジェクトを成功させるために不可欠な作業を細かく分解して、漏れなく洗い出すことです。
まずはプロジェクト全体の流れを考え、大きなフェーズや作業プロセスでタスクをとらえてから、フェーズや作業プロセスごとにタスクの分解を繰り返していくとよいでしょう。分解をしながら、抜け漏れをチェックし、タスクごとにかかる時間や工数についての見積もりも行います。
分解したそれぞれの最小タスクが数時間から数日で終わるタスクとなっていれば、そこで分解を終了して構いません。
作業同士の関係性を考える
3番目に行うことは、作業同士の関係性を考えることです。行わなければならないタスクがすべて出そろったところで、作業の順序を決めましょう。
ひとつひとつのタスクについて、作業の内容や範囲を確認していくと、Aというタスクを先に終わらせなければ、Bというタスクに取り掛かるのは不可能というように、作業同士の依存関係が見えてきます。
このような関係性を考えながら、最適な順番で効率よくタスクを行えるように整理しましょう。
作業を構造化する
4番目に行うことは、すべての作業を構造化することです。プロジェクトの開始から完了まで作業順にタスクを並べ、階層やプロセス、作業の粒度を意識してツリー構造を作りあげます。この際、同じプロセスのタスクは可能な限り近くにまとめましょう。また、同じ階層にあるタスクの難易度がバラバラで作業にかかる時間がそれぞれ大きく異なるといったことがないように、階層内のタスクの粒度をそろえることが重要です。
構造化ができたら、下位の階層に配置されたタスクの総和が上位階層のより大きなタスクと完全に一致することを確認し、タスクの抜け漏れや重複があれば、その都度追加や削除をしましょう。
まとめ
WBSやガントチャートといった手法を活用すると、プロジェクトやタスクの管理を効果的に行えるので、プロジェクトの成功につながるでしょう。プロジェクト管理を行う場合には、WBSやガントチャートに対応しているプロジェクト管理ツールを導入すると大変便利です。
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