規模の大きなプロジェクトを管理する際、進めるタスクの優先度を間違えれば計画全体の遅れに繋がります。個々の作業進捗が分かっていても全体が見通せないときは、タスクを重要度でわける「クリティカルパス手法(CPM)」で状況を整理しましょう。
手法の導入手順にくわえ、扱うメリットや必要なポイントも説明しているので、ぜひ参考にしてください。
クリティカルパス手法(CPM)とは
クリティカルパス手法(CPM)とは、プロジェクトの各フローを時系列順に並べて管理することで、フローごとに要する期間の長短からタスクの重要度を見積もる方法です。
最長の期間を要するフローを「クリティカルパス」と呼び、なんらかの原因でここでの作業が滞ると、プロジェクト全体に遅延が発生します。
クリティカルパスを把握し、「何が原因でスケジュールに遅れが発生しているか」「ボトルネックは何か」を特定できれば、精度の高い改善案を策定してプロジェクトをスムーズに進めることができます。
クリティカルパス手法のメリット
クリティカルパス手法を導入するメリットを4つのポイントから紹介していきます。
いずれかの内容でプロジェクトに問題が発生している、問題になったことがあるという場合は、ぜひ導入を検討してください。
重要なタスクが把握できる
メリットのひとつとして、ボトルネックとなる重要なタスク(クリティカルパス)を洗い出せることが挙げられます。
クリティカルパスを事前把握することで、問題が発生した際にも迅速かつ適切な対応が可能となります。
また期間を短縮するためにクリティカルパスへ優秀な人材をあてるなど、割り当て次第ではプロジェクト全体に余裕を持たせる運用が可能になります。
一方で重要度の低いタスクで想定より時間がかかっていても、並行するクリティカルパスの期間に収まる範囲ならば全体の遅延になり得ないので、遅延解決のためのリソース配分に無駄がなくなります。
作業の関連性が把握しやすい
クリティカルパスを特定するために各タスクの依存関係を整理することが、作業の関連性の把握に繋がります。
いくつものタスクが関連する中から、クリティカルパスである中枢的タスクを認識するには、各作業の依存関係を知っておく必要があります。
プロジェクトをタスクごとに細分化し、関連性を見極めることで、網羅的な管理を可能にします。
最適なスケジュールを組める
タスクごとに要する期間を正確に把握できれば、プロジェクト全体のスケジュールを最適化できます。
クリティカルパスを特定すると、プロジェクト全体に必要な作業日数と工数が明確になります。リソースに余裕のあるタイミングを見つけたら並列作業を進めて短縮を狙うなど、無駄のない効率的なスケジューリングが可能です。
最終的な評価・分析がしやすい
クリティカルパス手法で計画を策定すれば、事前の想定と実際の進行時の進捗を比較して事後評価を行えます。
問題発生箇所や遅延の原因となりやすいタスクを分析して、同じ内容を含むプロジェクトで発生原因を予防する、余裕を持って期間を設定するなど、より精度の高い計画を組むことができます。
クリティカルパス手法の手順
クリティカルパス手法を使用する順序を、基本的な概要から解説していきます。
1.タスクを整理する
はじめに、プロジェクトの内容をタスク分けします。
一つひとつのタスクを関連するものごとで階層的にリストアップして整理しましょう。例えば「製品設計」を想定する場合、下層で「外観デザイン」「機能設計」などのタスクにわけて設定します。
なるべく詳細にタスクを分割することも重要ですが、細分化しすぎるとそれだけ管理に手間と時間がかかり、実際の進行度の把握に問題が生じることもあります。
2.依存関係を把握する
続いて、分割したタスク間の関係をリストに上げていきます。
リストよりそれぞれの依存関係を把握し、以下3つの観点から評価していきます。
- このタスクの“前に”実行が必要なタスク
- このタスクと“同時に”終了する必要のあるタスク
- このタスクの“直後に”実行が必要なタスク
これらの関係性を持ったタスクは切り離せない関係にあり、同じフロー上にあるタスクであると言えます。
3.ネットワーク図(PERT図)を作成する
タスク同士の結びついた関係性からPERT(Program Evaluation Review Technique)図と呼ばれる、ネットワーク図を作成しましょう。
タスクをボックスで図示し、関係性を矢印で結ぶことで視覚的にプロジェクトの全体像を表します。
4.所要時間を見積もる
さらにネットワーク図へ、各タスクに必要な時間を書き込んでいきます。
各期間を検討する際には、タスクごとに「楽観値」「最頻値」「悲観値」の3つを想定しておくとよいでしょう。
「楽観値」は進行時に問題が起こらず、理想的に完了できた場合の期間です。「最頻値」は通常どおりかかる期間で、「悲観値」はトラブルが発生した場合に終えるまで必要な期間を想定します。
タスクによっては想定の違いでクリティカルパスが変化することもあるので、複数の状況を前提に計画しておけば柔軟性のある管理ができます。
5.クリティカルパスを見つける
ここまでの作業から、ネットワーク図の中で最長の期間を示す経路(フロー)がクリティカルパスであることが分かります。
なお、タスクを繋ぐ矢印が多い経路は重要度が高く見えますが、矢印の本数は必ずしも重要性に関係せず、タスクごとにかかる期間を足した数値がもっとも大きな経路をクリティカルパスとします。
ほかにも各タスクにおける最早開始日と最早終了日、または最遅開始日と最遅終了日から特定する方法があります。いずれかの開始日と終了日の差をとった数字が作業の余裕であり、これをフロート日数と呼びます。
フロート日数が0か、実作業の遅れでフロート日数を使い切った工程がクリティカルパスとなります。
6.進捗状況に応じて更新する
プロジェクトが開始したら、進行にともなって実際の進捗状況を調査します。
随時、状況に合わせてネットワーク図を更新し、実態に即したクリティカルパスを再計算しましょう。フロート日数を超える遅れや、想定していたタスクの完了が早まることでもクリティカルパスが変化する場合があります。
また、前例のないプロジェクトでは事前計画の見積もりが難しいこともあるでしょう。その状況でも、都度ネットワーク図を見直し、現状から正確に見通しを立てていくことが重要です。
このように、適切にクリティカルパスを見極めることで、的確な管理やスケジューリングを行うための判断材料を見つけ出すことができます。
クリティカルパス手法を行う際のポイント
クリティカルパス手法のおさえるべき2つのポイントを紹介します。
ツールを利用する
ネットワーク図を手書きで作成すると手間と時間がかかります。タスクの多い長期プロジェクトではクリティカルパスを特定するための計算量も膨大になり、作業進行時に迅速な更新と状況把握を行うことが難しくなります。
すばやく正確に管理するには、プロジェクト管理ツールの導入がおすすめです。
ツールを利用すれば、入力したデータから自動でクリティカルパスを判別できることにくわえ、進捗状況に応じた修正も簡単に行えます。
スケジュールを調整する
手法を用いることで正確に所要時間を把握できれば、クリティカルパスの短縮によりプロジェクト全体に余裕を持たせられるほか、遅延を取り返せる可能性もあります。
フロート日数の残ったタスクからクリティカルパスのタスクへとリソースを再分配する、ほかに余裕のない状況では追加を検討するなど、適切な配置を行うことでクリティカルパスの短縮が見込めます。
また、状況次第でタスクが終わる前に後続のタスクを前倒しして並列的に実行し、期間を短縮する方法もあります。
ただし、追加や並列作業をする際には、コストの増大や管理が難しくなるなどのリスクが生じる点には注意してください。
このようにスケジュールを調整してプロジェクト全体に余裕を作ることが、のちのち遅延が発生した場合のリスク回避や、短縮分のリソース節約によるコスト削減へと繋がります。
まとめ
クリティカルパス手法はプロジェクトの各工程を時系列で並べて管理する方法です。
タスクを細分化し、ネットワーク図を作って最長期間がかかる経路(クリティカルパス)を把握しましょう。
正確にクリティカルパスを特定し、的確な管理を行うことで、プロジェクト全体の所要時間を短縮できます。
クリティカルパス手法を活用する際にはツールの利用が便利です。「どんなツールを使えばいいか分からない」という人には、プロジェクト管理ツールAsanaをおすすめします。
- カテゴリ:
- プロジェクト管理