「自分が成果を出すよりも、部下に成果を出させることのほうが何倍も難しい」と悩んでいるマネジメント担当者は少なくないでしょう。部下の業務効率を高めたい場合は、ドラッカーの「目標管理」を導入してみてはいかがでしょうか。本記事では、企業のマネジメント担当者に向けて、ドラッカーの目標管理のポイントやメリットについて詳しく解説します。
ドラッカーの言う目標管理の概要
マネジメントの父として知られるピーター・ドラッカーは、組織における目標管理について、「MBO」という概念を提唱しています。MBOとは「Management By Objectives and Self-Control」の略で、「目標管理」や「目標管理制度」とわけされます。MBOの一番のポイントは、社員一人ひとりが組織や自分の目標を考え、達成に向けた進捗や実行を「主体的」に管理していく点です。
本人の自主性を尊重することでモチベーションを維持し、より生産的な仕事を実現するという理論であるため、いわゆるノルマ管理とは真逆の考え方です。プロセスを主体的に組み立てられる社員が増えれば、組織は大きく生まれ変われます。MBOは、「社員の自己成長」と「組織全体の成果」、この両方を実現することに主眼を置いており、トップマネジメントにも役立つ経営の本質論でもあります。
目標管理導入のメリット
ドラッカーの目標管理を導入するメリットとは何なのでしょうか。期待できるメリットは、主に以下の3点です。
人事評価が容易になる
MBOのよい点は、目標と成果を具体的に示すことで、人事評価が容易になることです。目標の難易度や達成率を数値で設定すれば、さらにわかりやすくなります。MBOのような目標管理の考え方が浸透するまで、日本企業の人事評価は、年功序列と終身雇用とを前提とする「職能資格制度」が中心でした。
しかし、これには明確な評価指標がないため、個人の成果よりも勤続年数が優遇されることも少なくなく、若手社員には不評な点も多い制度でした。目標管理の仕組みがあれば、年齢問わず誰もが正当な評価を受けられます。評価の根拠も明確となり、当然、優れた成果には昇給や昇進で報いることができます。
社員のモチベーションにつながる
人事評価の透明性を上げれば、評価の良し悪しにかかわらず、社員に納得感が生まれます。自身の評価への納得感は、モチベーション維持に不可欠です。高い評価を与えられても、「具体的に何を評価されたのか」が明確でなければ、達成感にはつながりません。
自分のどの働きが、チームや組織にとってどのように貢献しているのかを知って、初めて仕事へのやりがいや、責任感が生まれるというものです。また、たとえ戻ってきた評価が低くても、根拠が明確であれば、そこから見えてきた弱みを克服しようと思えるなど、努力する方向に向かっていけるはずです。
能力開発が期待できる
モチベーションが上がれば、挑戦意欲も生まれ、次は少し難易度の高い目標設定にしてみようと思えるでしょう。円滑に遂行するためにはどうすればよいか、自ら仕事のプロセスを組み立て、積極的に関係部門から情報収集するなど、目標達成に向けた創意工夫も活発になります。
また、スキルや能力を磨くため、研修を受けたり資格を取ったりするなど、自己啓発にも励むようになるでしょう。それによって得られた成功体験は、さらに大きな仕事へのモチベーションになるはずです。上司がお尻を叩かなくても、部下自らが進んで成長してくれるようになれば、効率のよい組織経営が実現できます。
目標管理導入の注意点
目標管理を導入する際には、留意したい点もあります。具体的なポイントについて詳しく解説していきます。
弊害や逆効果の可能性も考える
まず、目標管理を人事評価と連動させることは、必ずしもプラスに働くとは限りません。確実に達成して高い評価を得るために、あえて目標を低めに設定する社員が続出する恐れもあります。達成そのものが目的となり、目標のレベルを下げてしまっては本末転倒でしょう。
難易度の高い目標を設定したことで、かえって低い評価を与えられるようでは、優秀な人ほどやる気が削がれてしまいます。また、結果ばかりに目が向き、そこに至るまでのプロセスが軽視されたり、目標に直接関係ない業務が後回しになったりといった弊害も起きやすくなります。
対策を検討する
前述した弊害や逆効果を生まないためには、上司と部下との間でコミュニケーションを取ることが肝心です。目標設定時には難易度のすり合わせを行いましょう。組織やチームの目標と個人の目標とが連動しているかをチェックし、かつ部下の強みが最大限に引き出される目標設定をサポートするのもポイントです。
設定後も、部下の進行管理状況に応じてアドバイスしていきましょう。目標達成に向けて、どんな工夫や努力をしたのか把握する評価軸も用意すべきです。
目標管理において、もっとも肝心なことは、最後のフィードバックだと言っても過言ではありません。一対一で話せる場を設定し、結果を丁寧に伝えましょう。未達の場合でも、反省点や改善点を本人に考えさせ、次の行動に活かせるような、前向きなフィードバックを心がける必要があります。
まとめ
組織の成果は、社員の働き次第で大きな差がつきます。ドラッカーが提唱する目標管理は、社員のやる気を引き出し、自発的な行動を促すのに大変効果的です。ただし、適切な目標設定や管理がなされないと、かえって社員のモチベーションを低くださせてしまう恐れもあります。
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