「コーポレートガバナンス・コード」は2015年に公表されて以来、2021年にも改訂されました。この記事では、改訂版の内容に沿って、コーポレートガバナンスを強化する目的やポイントを5つ解説します。概要や注目される背景、メリットについても紹介していますので、理解を深めて自社でも取り組んでみてはいかがでしょうか。
コーポレートガバナンス(企業統治)とは
コーポレートガバナンスは、日本語では企業統治と言い、企業の不正や不祥事を防ぐために第三者により企業の経営を監視する仕組みのことです。ここでは、コーポレートガバナンスの概要と注目されている背景について説明します。
コーポレートガバナンスの概要
コーポレートガバナンスは、ステークホルダーの利益を守ることを主眼に置いている仕組みです。株式会社の所有者は株主であり、経営者は経営を委託されている立場であるという考えをベースにしています。
経営者はときに目先の利益を優先するあまり、粉飾決算や偽装、過重労働や残業時間未払いといった不祥事を引き起こすことがあります。一旦不祥事が発覚すると、株価は暴落して株主は多大な損失を被りますし、取引先や顧客などその他のステークホルダーも影響を避けられません。コーポレートガバナンスは、企業での不正や不祥事を防ぎ、中長期的な利益を目指した健全な経営を行うよう、社外から統制するものです。
近年では、企業が取るべき行動の指針を示すものとして、金融庁と東京証券取引所により「コーポレートガバナンス・コード」が公表されました。
コーポレートガバナンスが注目されている背景
日本では、従来銀行が企業を統制していましたが、バブル崩壊後の1990年代に銀行の影響力が弱まり、企業の不祥事が次々と起こりました。不祥事発生によって株の暴落が頻発すると、株に投資しようとする人は少なくなってしまいます。そのため、健全な経営を行うよう経営者を監視することで株主が投資しやすい環境作りを進める必要が生じました。
また、近年はグローバル化が急速に進んだことにより外国人株主が増え、企業経営にはこれまで以上に透明性や公正さが求められています。コーポレートガバナンスを徹底している信頼性の高い企業へ投資資金が集まりやすいことから、コロナ禍で落ち込んでいる経済を盛り返す手段としても注目されています。
コーポレートガバナンス強化の目的とポイント
企業の行動指針を示すコーポレートガバナンス・コードでは、次に示す5つの項目を掲げています。
- 株主の権利・平等性の確保
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
- 適切な情報開示と透明性の確保
- 取締役会等の責務
- 株主との対話
以下、これらの項目についてそれぞれ説明します。
1.株主の権利・平等性の確保
株主総会で意見を述べたり、賛成・反対などの意思表示を行ったりして経営に関与することは、株主の権利です。全ての株主が平等に意見できるように、株主総会の日程を最低2週間前に召集通知を発送するのはもちろん、可能な限り早くインターネット上で開示します。
また、議決権をオンラインで行使できる仕組みを整えたり、通知を英訳したりするなど、海外を含む株主への配慮を尽くすことも今後ますます必要になるでしょう。
2.株主以外のステークホルダーとの適切な協働
企業は株主だけではなく、従業員や顧客、取引先、金融機関、地域社会、債権者など、多くのステークホルダーに支えられることで持続可能な成長を遂げられます。ステークホルダーの声に耳を傾けて協働しながら経営を行う姿勢が不可欠です。SDGsをはじめとする社会的課題にも積極的に取り組み、社会や経済全体に貢献することを意識すべきでしょう。
また、企業の不祥事は従業員の内部告発によって明るみに出ることが少なくありません。内部通報が行いやすいように、経営陣から独立した窓口を設けたり、通報者が不利益を被らないような体制を作ったりすることも必要です。
3.適切な情報開示と透明性の確保
法令で定められている情報だけでなく、経営方針や経営戦略、抱えているリスク、サステナビリティへの取り組みなどの非財務情報を積極的に開示します。役員報酬の決定方法や役員選出の方法を明らかにするなど、透明性を高めることも必要です。
このようにすることで、株主や債権者をはじめとするステークホルダーは企業の将来性を見通しやすくなり、リスク回避のために対策を講じたり、適切な意見を述べたりできます。また、情報が公開されていることで企業への信頼感が高まり、さらなる投資にもつながるでしょう。
4.取締役会等の責務
取締役会は企業から独立した存在であり、客観的な視点による経営の監視が求められます。独立社外取締役を複数人選任するなど、取締役会の実効性を担保するように努めなければなりません。
また、企業としての持続的成長を促す役割も持っており、経営陣が必要に応じてリスクを取れる環境を整えることが必要です。経営陣の報酬制度も業績に見合ったものにして、起業家精神を発揮しやすいようにします。
5.株主との対話
株主との対話を通じて、株主が抱いている疑問の解消や意見の抽出を行い、経営に反映する姿勢が求められます。株主総会をはじめ、投資家説明会やIR活動などの対話の場を積極的に設けることが重要な取り組みといえるでしょう。
対話で得られたことを経営に反映させられるよう、IR担当と他の部門との連携体制を整えることも重要です。
コーポレートガバナンスのメリット3点
コーポレートガバナンスを強化することでどのようなメリットがあるでしょうか。端的に言えば、不正が起こりにくい体制を整えることで、資金調達がしやすくなり、企業価値の向上につながります。以下、メリット3点について説明します。
株主からの信頼が高まり企業価値が向上する
企業の透明性や公正さが広く知られ、ステークホルダーから信頼を得られるようになるでしょう。社会的な信頼を得て健全な投資対象として見なされると、株主をはじめとする投資家からの資金が集まりやすくなります。資金繰りが良くなることで経営の安定性が増し、集まった資金を成長投資に活用することで企業価値のさらなる向上も見込めるでしょう。
企業の不正を防止しリスクを回避する
経営陣による企業の私物化や不正を防止し、それによるステークホルダーの損失を回避できます。企業の不正が明らかになると、株価の暴落、賠償責任の発生、信頼の失墜などにより、取引先や顧客、株主などすべてのステークホルダーが多大な損失を被ります。取引停止、ひいては倒産に追い込まれることさえあります。
コーポレートガバナンスへの取り組みによって健全な経営を維持し、このようなリスクを回避するのは重要です。
資金調達へのハードルが下がる
コーポレートガバナンスに取り組み、適切な情報開示によって経営および財務の透明性が高まると、金融機関から資金調達がしやすくなります。社外取締役や、税理士ならびに監査法人によって財務がチェックされているため、不正が起こりにくい体制が構築されている優良企業として認識されやすいでしょう。社会的な信頼性を得ることで、資金調達のハードルが下がることが期待できます。
まとめ
コーポレートガバナンス(企業統治)に力を入れることで、経営および財務体制の透明性が高まり、株主や金融機関、取引先や地域社会などのステークホルダーから信頼を得やすくなります。優良企業と見なされることで、資金調達も比較的容易になるので、持続的成長に向けての経営戦略も立てやすくなるでしょう。
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