企業や組織の運営には、常に複数のリスクが存在します。リスクを回避するためには、リスク分析が必要不可欠です。この記事では、リスク分析の意義や目的、リスク分析の進め方や流れについて解説します。リスク分析のフレームワークや手法について把握する際に役立ててください。
リスク分析とは?
リスク分析は、リスクマネジメント、もしくはリスクアセスメントのプロセスのひとつです。
リスクは、不確実性(発生可能性)と影響の二つの要素で構成されます。企業や組織において、リスクに対処して資産を守るためにはリスクマネジメントが必要です。
リスクマネジメントとは、各リスクがどのようなものかを理解したうえで対策し、発生可能性がある損失を防ぐことです。
リスクマネジメントは以下のプロセスで行います。
- リスク特定: リスクの種類を洗い出す
- リスク分析: リスクの大きさ(発生頻度、発生可能性、損害の影響)の評価
- リスク評価: リスクに対応する必要性を検討
- リスク対処: 具体的なリスクへの対策を実施
リスクマネジメントと混同されやすいリスクアセスメントは、リスクの特定から評価までのプロセスです。
上記プロセスの中で、「リスクを分析する」のプロセスがリスク分析です。リスク分析とは、リスク特定によって洗い出されたリスクがどのようなものかを調べることです。リスクが発生する可能性の大きさ、発生する頻度、発生時の影響の大きさなどを評価します。調べることで重要度がわかるため、リスクのレベルが定まり優先順位をつけられます。
リスク発生前にリスク分析を行って優先順位を決めておけば、リスク発生後もすぐに適切な対応をとれるでしょう。
リスク分析の進め方と流れ
リスク分析には、望ましい進め方があります。重要な三つのステップの流れや内容をしっかり理解しましょう。
1. 情報資産に関する情報や価値を把握する
リスク分析における最初のステップは、情報資産に関する情報や価値の把握です。
情報資産とは、企業・組織が保有するすべての情報と、情報を集めて処理し、保管するための設備等を指します。情報資産の例として、顧客の情報や、財務状況、使用システムの情報などが挙げられます。
有形・無形の膨大な情報資産について、保存場所や責任者などを含めてリスト化しましょう。情報資産の情報・価値を正確に把握することで、迅速かつ効率的なリスク分析や、重要度に合った適切なセキュリティ対策が可能になります。
2. リスクに関する分析を行い評価する
次のステップは、リスクの分析・評価です。リスト化した情報資産について、どのような脅威や脆弱性があるのかを明らかにする必要があります。想定される脅威が発生する頻度や可能性、発生した場合の損害レベルや影響について分析しましょう。
発見された脆弱性について、現在はどのような対策がされているのか、対策は十分なのかを評価することが重要です。
3. 対策を選択し運用する
最後のステップは、対策の選択と運用です。リスク分析・評価の結果をもとに、対策を選択し、運用しましょう。
対策にはコストがかかり、人的コストの場合は業務にマイナスの影響を及ぼす恐れもあります。リスク発生時の損害額と、対策に必要なコスト、対策することで得られる利益などを比較検討したうえで具体的な対策を決めるとよいです。
すべてのリスクに対応することは現実的ではありません。より重要なリスクに限定して対策するなどして、コストを節約できます。
リスクは常に変化するため、定期的にリスク分析を行いましょう。
リスク分析はフレームワークに落とし込むことがおすすめ
リスク分析の結果は、リスクマップとしてまとめるとよいでしょう。リスクマップとは、リスクの影響や発生頻度を俯瞰的にとらえられる図表です。リスクマップを作成すればリスクの優先順位をつけやすくなり、対策を考えるうえで有用です。
リスクマップにはさまざまな種類があり、固定のフォーマットはありませんが、縦軸をリスクが与える影響の大きさ、横軸をリスクの発生可能性・頻度として設定をしたものが多用されています。リスクマップを作れば、全体を以下の四つのエリアに分け、リスクが存在するエリアごとに傾向やとるべき対策が明らかになります。
- 発生可能性が高く影響度が高いリスク: 回避し、発生させないようにする
- 発生可能性が高く影響度が低いリスク: 予防・低減方法を考える
- 発生可能性が低く影響度が高いリスク: 保険などを導入して備える
- 発生可能性が低く影響度が低いリスク: 影響力が小さければ受け入れる
リスクマップを見れば、リスクの特性や大きさを瞬時に把握できます。課題の発見や、どのリスクから対応すべきなのかという優先順位も可視化できます。新たな事業を展開するヒントになるかもしれません。
しかし、注意すべきポイントもあります。リスクの数が増えるにつれて、個別のリスクの把握が難しくなる点です。リスクの性質・内容を正しくとらえることが大切です。さらに、リスクマップは完成した時点で満足しないようにしましょう。重要なのは、完成後に具体的な対策を立てることです。
リスクマップは、有効な手法や手段のひとつとして活用しましょう。
リスク分析に用いられる手法
リスク分析には、さまざまな手法が用いられます。求めるセキュリティレベルやコストによって、用いるべき手法は変わります。
「ベースラインアプローチ」「非形式的アプローチ」「詳細リスク分析」などの手法について、特徴やメリット・デメリットをとらえて使い分けましょう。
対策の適合性を確認する「ベースラインアプローチ」
ベースラインアプローチでは、既存のセキュリティレベルを達成目標として設定します。対象となるシステムが目標の基準に達しているかを調査し、必要な対策を適用するという流れです。
既存のレベルを基準にするため、短時間かつ低コストで行えます。しかし、既存のレベルであるがゆえに、対象システム独自の状況に対応していない可能性があります。そのうえ、未知のリスクには対応できません。
メリット:コスト、時間があまりかからない
デメリット:対象システム環境・条件に合わない恐れあり
これまでの経験に基づいて分析する「非形式的アプローチ」
非形式的アプローチは、個人の経験をもとにしたリスク分析です。この場合の個人とは、リスク対策の担当者や外部のコンサルタントなどです。
個人の経験に基づいて行われるため、短時間かつ低予算でも行える手法です。一方、個人の経験に大きく依存するため、分析漏れや判断ミスが想定されます。セキュリティレベルを高め続けるのは困難であり、担当者が知らないリスクにはノウハウがないため通用しません。
メリット:コスト、時間があまりかからない
デメリット:個人の経験レベルに依存する
重要度・脅威・脆弱性の3要素で分析する「詳細リスク分析」
前述した二つのアプローチよりも精度が高い手法が、詳細リスク分析です。
詳細リスク分析では、あらゆる情報資産の価値を評価したうえで、対象を重要度(資産価値)、脅威、脆弱性という三つの要素で分析します。
自社のシステム環境や構造に合わせた詳細なリスク分析を行うことで、正確に状況を把握できます。自社独自のリスク対策を開発できるため、セキュリティレベルを向上させ続けることも可能でしょう。
ただし、分析の担当者には専門的な知識やノウハウが要求され、コストや時間もかかります。企業やシステムの規模に応じて、分析は煩雑・複雑化するでしょう。情報資産の脅威レベルが深刻な場合は効果的な手法ですが、低レベルの場合はあまり効果が出ない可能性があります。
メリット: リスクの詳細を把握可能、対策を立てやすい
デメリット: コスト、時間がかかる、ノウハウが必要
まとめ
リスク分析によって、リスクを評価し、リスクレベルを決定できるため、ビジネスにおいてとても重要なプロセスです。
リスク分析は、情報資産にかかわる情報・価値の把握、リスクに関する分析・評価、対策の選択と運用という流れで行います。分析の結果は、リスクマップなどのフレームワークに落とし込むとよいでしょう。リスク分析にはベースラインアプローチ、非形式的アプローチ、詳細リスク分析などの手法があります。
しかし、リスク分析にかかわる内部チームの取り組みや仕事を把握する作業は煩雑であり、困難です。そこで役立つのがプロジェクト管理ツール「Asana」です。Asanaを使えば、プロジェクトをリアルタイムで一元的に管理・把握できます。チームで行う仕事の進捗状況について全員が共有でき、仕事が効率化されるため、生産性も向上するでしょう。
リスク分析を効率的に行いたいのであれば、Asanaの導入をおすすめします。
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