「プロジェクトマネジメント」は、一定の期間で実行されるプロジェクトを成功に導くために必須とされる業務です。成果を上げるには、プロジェクトの構成要素や発生する作業、またその所要時間など、さまざまな項目を把握・管理する必要があります。そこで本記事では、プロジェクトマネジメントの役割や、実践に役立つ手法を詳しく解説します。
プロジェクトマネジメントは「有限の期間・メンバーでの目標達成」へ導く業務
「プロジェクトマネジメント」とは、特定の目標を一定の期間で達成するために、計画を立ててコントロールする業務です。たとえば、「納期に向けて新たなシステムを開発・導入する」「今期中に売り上げを20%伸張させる」などのプロジェクトに取り組む場合、それらの目標達成に至る具体的なプロセスを構築し、必要なタスクを洗い出したうえで進捗などを管理します。
プロジェクトには、複数のメンバーで取り組むことが一般的です。その中でプロジェクトマネジメントを務める人は「プロジェクトマネージャー」と呼ばれ、プロジェクト進行にまつわるさまざまな業務を担います。
有限の期間・メンバーで目標を達成するにはプロジェクトマネジメントが必須
プロジェクトマネジメントの目的は「QCD」を守り、よりよい成果を上げることです。QCDとは「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の頭文字を取ったもので、生産管理において重視すべき3要素を指します。
複数人が関わるプロジェクトでは、それぞれのメンバーが連携し、効率よく目標達成に向かって進まなくてはなりません。そのためには、誰かがプロジェクト全体を俯瞰し、メンバーを調整したり、個々のタスクを管理したりすることが必須です。さらに、期限付きのプロジェクトの場合、稼働時間や予算といった限られたリソースをコントロールする必要もあります。そのため、プロジェクトマネージャーの業務は計画立案・タスク管理・メンバー調整・予算管理など多岐にわたります。
よりよいプロジェクトマネジメントを実践するには、全体を俯瞰する能力や計画性、高いコミュニケーションスキルが求められます。特に現代のビジネス環境では、市場や顧客のニーズの移り変わりが非常に早く、確度の高い将来予測が難しい傾向にあります。それゆえプロジェクトも立ち上がりやすくなっており、よりプロジェクトマネジメントの重要性が増しているのです。
プロジェクトマネジメントには「PMBOK」という代表的な型がある
有名なプロジェクトマネジメント技法に、「PMBOK(Project Management Body of Knowledge)」と呼ばれるものがあります。これは1987年にアメリカの非営利団体「PMI(Project Management Institute)」が発表し、現在では世界標準となっている技法です。ちなみに、PMIは日本支部も存在し、定期的にプロジェクトマネジメントに関連した資格試験やセミナーを開催しています。
PMBOKは、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや情報を整理した知識体系です。内容は「10の知識エリア」と「5つのプロセス」に大別されており、縦軸に知識エリア、横軸にプロセスを配置したマトリクス図になっています。
10の知識エリア
知識エリアは、全10項目の要素で構成されています。内訳は、プロジェクトで守るべきQCDの管理に加え、要件定義といったプロジェクトの作業範囲に関するスコープ管理、要員管理、コミュニケーション管理、リスク管理、調達管理、ステークホルダー管理、そして全体を管理する統合管理です。達成すべきQCDに向けたスケジュール管理や、要員管理といった要素が存在し、それらを統合管理でコントロールするとイメージすればわかりやすいでしょう。
5つのプロセス
プロジェクト進行のプロセスを5つに分類し、それらが始まってから終わるまでの一連の流れを時系列に沿ってまとめています。具体的には、「立ち上げ」→「計画」→「実行」→「監視・管理」→「終結」というプロセスです。縦軸の知識エリアと照らし合わせることで、どのプロセスで何をすべきかがわかります。
最新のPMBOK(第7版)では新しい概念も誕生している
PMBOKは技術革新や組織、市場の変化に適応することを目的に、これまで定期的に改訂されており、直近では2021年8月に最新版となる第7版が登場しました(日本語版は11月予定)。第7版は、従来のプロセスを重視する内容が大幅に刷新され、プロジェクトマネジメントで一般的に受け入れられ、実践されている原則や原理に重きを置いた内容となっています。
具体的には、10の知識エリアはチームやステークホルダー、開発アプローチとライフサイクル、不確実性などを盛り込んだ「8のパフォーマンス・ドメイン」へと変更。5つのプロセスはスチュワードシップやチーム、バリュー、システム思考などからなる「12の原則」に変更されています。
第7版についてもっと詳しく知りたい方は、下記URLをご参照ください。
https://www.jpsol.co.jp/info-pmbokguide-7th/
プロジェクトマネジメントで便利なフレームワーク4つ
PMBOK以外にも、プロジェクトマネジメントに取り組むにあたり知っておきたいフレームワークがあります。以下では、その中から4つピックアップしてご紹介します。プロジェクトの性質によってフレームワークを使い分けると、よりよい成果につながるでしょう。
フレームワーク①:WBS
「WBS(Work Breakdown Structure)」は、プロジェクトで生じる作業を分解して図式化する基本的な手法です。必要な作業を分解することで、体系的に捉えられるのが特徴です。人員とスケジュールを把握しやすいためリソース管理に有効で、特にプロジェクトの計画段階では役立つでしょう。
なお、現状把握に適したWBSですが、将来的に発生する作業を整理するには、いささか不向きな場合があります。不確実性を伴うタスクはあえてWBSで整理せず、プロジェクトの進捗に応じて都度柔軟に分解していくとよいでしょう。
フレームワーク②:ガントチャート
「ガントチャート」は、主にWBSとセットで使われている手法で、分解した作業の担当者や進捗を管理できます。タスクに漏れがないかを改めて確認し、作業の順序や必要期間の妥当性を分析する際に適しています。また、現状や課題をプロジェクトメンバー間で共有できるのも、ガントチャートのメリットです。
ガントチャートの利用で失敗しないためには、あらかじめWBSで各項目の作業内容や工数をしっかり洗い出しておくことがポイントです。この下準備を怠ると、ガントチャート上で無理なスケジュールを引きがちになってしまいます。
フレームワーク③:アローダイアグラム
「アローダイアグラム」は「PERT図(PERT:Program Evaluation and Review Technique)」とも呼ばれる手法で、各作業にかかる所要時間やプロジェクトの流れの全体像を把握できます。ガントチャートとは違い情報の粒度が細かく、工数や所要時間、それぞれのタスクの関係性が一目で把握できる点がメリットです。そのため、スケジュールの遅れを防げるとともに、メンバー間でのコミュニケーションも円滑になります。とはいえ、ガントチャートのように進行状況を把握するための手法ではないため、使い分けが必要でしょう。
フレームワーク④:マインドマップ
プロジェクトに関係するキーワードや事柄を思いつくままに列挙していく手法が「マインドマップ」です。新しい情報を簡単に追加したり、各要素の相関関係を視覚的に理解したりできる点がメリットです。思考やアイデアの整理に適しているほか、プレゼンテーションの資料作りなどでも活用されています。
まとめ
プロジェクトマネジメントは、目標達成に向けて効率よく業務を進めるうえで重要です。特に2021年8月のPMBOK改訂以降は、変化が激しい現代ビジネスにおいて、ますますプロジェクトマネージャーの柔軟性が試される形となっています。
プロジェクトマネージャーがその役割を発揮するには、さまざまなフレームワークの特徴を理解し、組み合わせるスキルを磨くことが重要です。また、規模や人員数が多いほど、プロジェクトマネージャーの業務は多岐にわたります。
プロジェクトを成功に導くためには、「Asana」のようにプロジェクト全体を一括管理できるツールの積極的な活用がおすすめです。日々の業務が効率化され、その分リソースに余裕が生まれるため、より時間を割くべき作業に集中できるようになります。プロジェクトをスムーズに進めるためにも、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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