人事評価制度とは?その種類やメリット・デメリットについて理解しよう

 2021.03.15  2023.03.30

企業における人材の管理や活用を担う人事部門の仕事は、人を適切に評価することなしには成り立ちません。本記事では人事部門の仕事の根幹である人事評価制度について基本的な事柄を解説します。人事評価制度とは何か、評価基準や評価方法はどんなものがあるかなど、人事評価制度について一通り学びたいという方はぜひご覧ください。

人事評価制度とは?その種類やメリット・デメリットについて理解しよう

人事評価制度とは

はじめに、人事評価制度とは、企業における各社員の勤務態度や実績、能力などを評価し、それらを該当の社員の処遇に反映させる制度を意味します。多くの企業は人事評価を年に一度から数度定期的に実施し、各社員の人事異動や報酬を算出する際の根拠資料とします。

また、社員にとっては、公平で透明性の高い人事評価制度が運用されることで、企業が自分達にどんなことをも求めているのか明確に理解することが可能になり、「頑張れば報われる」という信頼のもと、業務に対するモチベーションを高めやすくなります。

そして、社員のモチベーションの向上は、企業にとって労働生産性や業績の向上に寄与するものとして捉えられます。すなわち、人事評価制度とは、企業が社員に提示する一種の行動規範であり、報酬の根拠であり、社員が仕事に勤しむための動機づけの1つであると言えます。

人事評価制度の基準

人事評価制度において企業は、社員のどんなところを具体的に評価しているのでしょうか。ここでは3つの評価基準を取り上げてみていきましょう。

第一の評価基準は、業績ないしは成果に基づく評価です。これを重視する場合、企業は一定期間内における社員の業務達成度を人事評価の大きな基盤に据えます、例えば営業職のように、売上高などの数字で示せる職種は、特に業績評価に向いていると言えるでしょう。しかしその反面、総務や経理のような事務職や、長期間の開発時間を必要とする研究職などは評価の指標となるような数字が出にくいため、別の評価基準が必要になるというデメリットも存在します。

第二の評価基準は、社員の能力に基づく評価です。評価の対象となる能力としては、当然ですが企業の利益になるようなスキルや知識などが挙げられます。例えば、企画力や実行力、コミュニケーション能力や指導力などもここに含まれるでしょう。能力評価は先の業績評価とは反対に、明確な数字の出にくい職種を評価する際に重宝されます。

第三の評価基準は、情意評価です。これも能力評価と同じく、数字に表れにくい社員の特性を評価するのに向いています。情意評価においては、職務に対する勤勉さやほかの同僚との協調性など、いわば企業の求める理想像にどれほど近いかが問われます。企業によっては能力評価と情意評価を統合ないしは連携させている場合もあるでしょう。

能力評価や情意評価は本質的に仕事のプロセスを評価するもので、職場が極端な成果主義に走らないようにするためにも有用です。しかし他方で、評価者の主観が入りやすいというデメリットもあります。企業や人事部門は自社の業態や経営方針に合わせて、人事評価における業績評価と能力・情意評価のバランスをよく吟味することが大切です。

人事評価制度の種類

人事評価制度の方法は多くのものがあり、その種類によってメリットやデメリットも異なります。以下では、そのなかから主要な3種類の人事評価制度をピックアップして紹介します。

MBO

MBOとは、「Management By Objectives and self-control」の略で、「目標管理制度」と呼ばれることもあります。MBOを提唱したのは現代経営学の父とも言われるピーター・ドラッカーで、1954年に彼の著書で言及されて以来、未だ根強く多くの企業で採用されています。

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MBOは「self-control」という言葉に示されるように、社員の主体的な行動や自己管理を重視する評価制度で、評価者は社員が自分で決めた目標の達成度を基にして査定を行います。先述の3区分にあてはめると、業績評価を重視する制度であると言えるでしょう。

MBOは「自ら動ける人材」を育成する上で効果を期待できます。しかしその反面、「評価を得るためにあえて目標を低く設定する」「自分の目標の達成にこだわる余り、ほかの業務がおろそかになる」といった社員が出る恐れも生じるなど、明確なデメリットも存在します。

そのため、上司は社員の自主性を尊重しながらも、部下の目標について高さや確かさ、あるいはそれを達成するためのタイムスケジュールなどについても気を配る必要があります。社員の目標と企業の利益が合致するように、適切なサポートをすることが求められるのです。

コンピテンシー評価

「Competency」とは元々、「能力」や「適格性」を意味する言葉ですが、ビジネスにおいては業務の遂行や成功につながる行動特性のことを意味します。例えば先に説明したように、人事評価においては具体的な業績ないしは成果を評価する項目が存在します。しかし、この成果とはどのようにして挙げればよいのでしょうか。100の成果を挙げた人と80の成果を挙げた人を並べて、「後者より前者の方が優れている」と評価して終わり、ではそこに発展性はありません。

優れた成果を挙げる人には優れた成果につながる背景、つまり行動特性があります。コンピテンシー評価とは、こうした行動特性を社員自身に獲得してもらえるよう推奨する評価方法です。具体的な成功モデルから企業の求める成果につながる行動特性を分析し、その行動、あるいはその背景に流れる思考や動機づけのプロセスを明確化して、評価基準として設定するのです。

コンピテンシー評価には、「成功モデルから適切な成功要因を取り出すことが困難である」という弱点も存在します。しかし、企業における成功例を今後に役立て、各社員の能力育成や企業全体の生産性をさらに高めていこうとする野心的な狙いが根底には流れています。成果そのものよりも、そこに至るプロセスを重視するという意味では、能力評価に向いた評価制度と言えるでしょう。

360度評価

360度評価は多面評価という呼ばれ方もする評価制度で、上司以外の同僚、部下など、業務上関わりのある全員から該当社員の評価を聴取する方法を意味します。360度評価のメリットは、多くの人が評価者となることで評価に客観性や公平性が期待できることです。

というのも、例えば直接の上司一人が評価者となる場合は、もし該当の社員と上司の折り合いが悪かったときに、評価にマイナスのバイアスがかかってしまう可能性があります。上司から見たら扱いづらい部下でも、後輩から見たら面倒見のいい先輩だという場合もあり、見る人の立場によって評価がまるで変わるという状態は十分に起こりえることです。

その意味で360度評価は社員を多面的な方向から評価することを可能にする優れた方法ですが、その反面、評価に一貫性がなくなったり、部下の心証を過剰に気にした上司が、適切な指導を行えなくなったりするような事態も考えられます。とはいえ、これは換言すれば、上司の高圧的な振る舞いや、職場におけるハラスメントの抑制を期待できるとも言えるでしょう。360度評価は主に情意評価を行う場合に有効な手法です。

人事評価制度の導入で期待できるメリット

ここまででは、人事評価制度における主な評価基準や手法について紹介しました。以下では、こうした評価制度を導入することによって企業はどのようなメリットを期待できるのかについて改めて解説していきます。

社員のモチベーション向上

人事評価制度とはいわば、「このような基準を満たせば会社はあなたを評価します」と、企業が社員へ明確な目標を与えることだと言えるでしょう。公平で透明性の高い人事評価制度を実施することによって、社員は「頑張れば評価してもらえる」という期待感を持ち、仕事に対してモチベーションを抱きやすくなります。

モチベーション向上は、社員個人のキャリア形成に役立つだけでなく、企業にとっては生産性や業績の向上につながります。さらには、社員の企業へのエンゲージメントを高め、離職率を下げるなどの効果も大いに見込めるでしょう。

コミュニケーション促進

人事評価制度を活用することによって、社員間、特に上司・部下の間でコミュニケーションの促進が期待できます。自分が挙げた成果や仕事への取り組みに対して企業や上司からフィードバックが帰ってくることで、社員はそれを自分の能力開発やキャリア形成に役立てられます。

あるいは人事評価の際に社員と個別面談などを実施することにより、社員はもちろん、企業側も社員が企業になにを求めているのか率直に意見を貰う貴重な機会を得ることになり、相互の関係強化につながるでしょう。

人材情報の把握

人事評価制度は企業にとっても、社員の給与や待遇を決める参考資料以上の価値を持ちます。特に人事部門にとって、人事評価はどのような実績や能力、適性、あるいは問題点のある社員がいるのか把握する上での基礎的なデータになります。このデータは、人材配置を見直しや人材開発、育成へ大いに活用可能です。

人事評価制度の導入で注意すべきデメリット

人事評価制度は企業や社員にとって多くの利点を持ちますが、運用方法を誤ったり、評価方法が自社の実情に沿わなかったりすると、かえって悪影響が出る場合もあります。こうした場合、社員は「自分が適切に評価されていない」と不満を溜め込みやすくなるでしょう。ときには会社へ不信感を持ってしまい、モチベーション低下や離職に至るケースもあります。

また、人事評価制度自体は適切に運用されている場合でも、問題は起こり得ます。例えば、社員が人事評価を気にするあまり、評価を得られやすい仕事ばかり選好みしてしまう。または、ほかの社員の評価を落とすような行為に走ったりすることもあり、これらは生産性低下につながります。

このような事態を避けるため、人事評価制度を導入する前に、「各部門の業務を評価するためには、どのような方式が適しているのか」を入念に考えましょう。そして導入後も、必要に応じて評価体制を適宜アップデートしていくことが肝心です。

まとめ

本記事では、人事評価制度とはどんなものなのか、その基本的な概要や評価基準、主な評価方法やメリット・デメリットに至るまでを概観しました。

適切で公平感のある人事評価制度を運用することによって、社員は仕事へのモチベーションや会社への帰属意識を高め、ときにはそれが企業に大きな利益をもたらすこともあります。「Asana」のワークマネージメントツールは、社員間の情報共有の効率化や、各社員のワークフローを「見える化」し、人事部門や上司が社員の働きぶりを適切に把握できるようにサポートします。

ぜひAsanaを導入し、人事評価の効果的な運用に役立ててください。

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