「メトリクス管理」は、客観的な数値におけるデータを用いて、プロジェクトの進み具合を把握する手法です。勘や経験に頼らずに管理ができる優れた手法として、プロジェクトの現場で注目されています。本記事では、メトリクス管理の概要やプロジェクトを成功に導くための知恵を解説します。メトリクス管理について知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
そもそも「メトリクス」とは?
そもそもメトリクスとは、様々なプロジェクト活動を定量的に捉えて数値データ化し、それを管理に適するように手を加えて、よりわかりやすい形に変換して可視化したものです。つまりメトリクスは、勘や経験に頼らず客観的にプロジェクトを進めるために必要な情報を、計算や分析といった手法により、プロジェクトに関わる人々が進捗状況を把握しやすくするために作られた指標とも言えます。
メトリクス管理とは?
このメトリクスという指標を使って、できるだけプロジェクトが滞りなく進むように管理することをメトリクス管理といいます。メトリクス管理には一連の流れがあり、以下の手順で1つのサイクルが構成されます。
最初に、基準となる見積もり式を作り、これを用いてプロジェクトの進行予定を見積もります。次に見積もりに沿って行ったプロジェクト活動の数値データを集めて加工し、実績を作成します。そしてプロジェクトの進行中は、最初に見積もって出した予定と実績を比べて、そのズレから導き出される作業の進行過程を管理していきます。最後にプロジェクトが終了したら、最初に作った見積もり式を修正して改善します。これで、1つのサイクルが完成です。
メトリクス管理ではこのサイクルが繰り返されるたびに、基準となる見積もり式が改善されていく仕組みとなっています。
メトリクス管理の目的と重要性
メトリクス管理の目的は、計画されたプロジェクトや業務を予定通りにスムーズに進めることです。そして円滑なプロジェクト進行のためには、メトリクスという客観的な指標を用いることが重要になります。特に大勢が関わるようなプロジェクトの場合、数値データを各責任者で共有できることからメトリクス管理の重要性は高まります。
メトリクス管理の手法とプロセス
メトリクス管理とは、実際にどのように行うものなのでしょうか。手法とプロセスについて説明します。
1.管理対象の可視化
プロジェクト管理では、管理すべきプロジェクトについて分析し、ものごとを数値データという常に見える形に変換して管理します。プロジェクトが見える状態、つまり可視化されていれば、管理をより簡単かつ効果的に行うことができます。
ここで重要となるポイントは、プロジェクトのどこの部分を測定する項目として設定するかです。大事をとって測定項目を細かく設定して増やしすぎると、それだけ手間がかかって管理が大変になりプロジェクトの効率を下げる結果を招きかねません。そもそも、効率的に管理を行いたいので、余計な測定に時間を割くのは本末転倒です。プロジェクト管理では、測定に過不足が出ないように、必要最小限の測定項目に絞って設定を行うことが非常に大事です。
2.基本メトリクスセットの把握
プロジェクトの進捗管理を行うために重要となる、必要最小限の測定項目一式を「基本メトリクスセット」と呼びます。基本メトリクスセットは、工数、作業要素、作業成果物、不具合・課題という4項目の指標から構成されます。これらすべてを可視化して把握することで、効率的で効果的なプロジェクト管理が実現されます。
ここで工数というのは、プロジェクトに関わるメンバーが、各々の作業に費やした時間を測定したものです。メンバーという重要な人的資源が、無駄なく有効に活用されているかを検証する必要があります。
作業要素とは、プロジェクトの遂行に不可欠な1つ1つの作業のことです。例えば、作業ごとに見積もり式で定めた着手予定日や完了予定日を実際の着手日や完了日と比べて、遅れている作業の数を集計すれば、プロジェクトの進み具合がわかります。
そして、作業成果物とはプロジェクトの活動を通じて生まれる成果物のことです。工程ごとに生成した成果物の量を測定することで進捗状況が把握できますが、すべての作業に成果物があるとは限らないので注意が必要です。
さらに不具合・課題とは、プロジェクトの活動中に発生した不具合や課題のことで品質評価や試験を行い、発見された不具合の数を測定します。不具合・課題は、作業や成果物の品質レベルを示す重要な指標となります。
3.「アクティビティ」軸と「プロダクト」軸の2軸で管理
プロジェクトについてその進行を管理する際には、基本メトリクスセットについて、4つの項目それぞれが予定と実績の差ができるだけ出ないように制御するのが基本です。予定と実績のズレ幅を最小にコントロールするために、プロジェクト活動における数値データを集めて、「アクティビティ軸」と「プロダクト軸」という2つの独立した軸を使って進捗状況を管理します。
メトリクス管理では要となる数値データの収集が大変手間のかかる作業になるので、その手間を最小限におさえるための工夫として、アクティビティとプロダクトという2つの軸を設定しているのです。メトリクス管理を行ううえでどのようなデータも、この2軸を使って特定できるようにあらかじめ分解して管理を行えるようにしておくと、効率の良いデータ収集が可能になります。
この2軸のうち、アクティビティ軸というのは、任意のプロジェクト活動が現在どの作業工程に属しているのかを示す軸で作業の流れを特定する軸でもあります。これに対してプロジェクト軸というのは、最終成果物を完成させるまでの作業を詳細に階層化したときに、任意のプロジェクト活動がどの段階の作業まで進んでいるのか示す軸です。
なお、アクティビティ軸は作業の観点からの指標であり、プロダクト軸では作業成果物の観点を指標として、それぞれを用いてプロジェクトの進捗を管理します。
アクティビティ軸に着目した場合には、例えば定義された開発段階が「調査、計画、設計、実施、評価」であるとします。「予定通りに計画段階から設計段階に移行しているか」「評価にかけるべき時間が十分にとれているか」などの作業としての観点から進行を管理します。そしてプロダクト軸に着目した場合には、例えば各段階で作られるべき成果物が順調に作られているか、どこかの段階の成果物ができないせいで最終成果物の完成に支障が出ていないかなどの観点から進捗管理します。そして、この2軸を利用した管理で業務を滞りなく効率的に進行していけるのです。
まとめ
メトリクス管理は、プロジェクトにおける進行状況を客観的な数値で示して効率的に管理できる大変優れた手法です。メトリクス管理を実践するためには、対象となるプロジェクトの状況を測定し、数値化したデータを収集する必要がありますが、業務全体を効率化できる切り札となります。
一方で、プロジェクトの進捗状況確認のような仕事は、「仕事のための仕事」とも言えます。このような仕事で他の本来やるべき業務が圧迫されるようであれば、プロジェクト管理ツールの導入を検討してはいかがでしょうか。「Asana」というワークマネージメントツールは、既存のツールと連携させることで、プロジェクト全体を一元管理でき、導入後のシンプルな運用も実現できます。またリストビューやタイムラインなど様々な機能で仕事を可視化し、チームワークをよくすることで、プロジェクトの生産性向上が期待できます。Asanaを取り入れ、効率的な業務管理につなげてみてはいかがでしょうか。
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