目標管理はビジネスやスポーツなど、あらゆるシーンで取り入れられています。それは、目標管理を取り入れることで、個人にも組織にも効果がみられるからです。しかし、「目標管理にどのようなメリットがあるかわからない」「ただ目標を決めればいいだけなの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、そもそも目標管理とは何なのか、そのメリットや目標管理における注意点を解説します。
目標管理とは
目標管理とは、組織目標と個人目標を共存させ、行動やモチベーションを目標によって管理する手法のひとつです。
企業などの組織が掲げる目標と、従業員などの個人の目標を紐付けることで、個人目標の達成が組織全体の目標達成に貢献する仕組みができあがります。ただし、目標管理はノルマ管理や進捗管理が目的ではなく、個人のモチベーションやスキルアップを、目標を立てることによって管理する手法であることを意識しなければなりません。
つまり、目標は管理とは、「目標を管理すること」ではなく、「目標で管理すること」なのです。
この前提を間違えると、従業員にプレッシャーを与えたり、モチベーションを著しく低下させたりする原因となってしまいますので注意しましょう。
目標管理に関連する用語
目標管理を理解するためには、関連する用語や類似する用語を知っておくとよいでしょう。ここでは、3つの用語を確認していきます。
MBO
目標管理は「MBO(Management by Objective)」という用語で表現されることも多い管理手法です。目標管理とMBOは同じ意味で扱われています。
MBOは、ピーター・ドラッカーが提唱した目標管理手法で、従来の企業経営におけるマネジメントを大きく変えた概念でもあります。目標を達成するためにKPIを設定して、モチベーションを管理するとともに、人事評価にも利用されるケースが多いことも特徴です。
MBOについては、【MBOとは?目標管理制度の導入目的やメリット・デメリットをわかりやすく解説】にて詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
KPI
KPIとは「重要業績評価指標」を意味する用語で、「Key Performance Indicator」の略称です。
KPIを簡単に表現するならば、目標達成に必要な「中間目標」だといえます。最終的なゴールを達成するために必要な目標を定め、「何をすべきか」を明確化していきます。KPIを達成するごとにゴールに近づいていきますので、業務に対するモチベーションの維持につながります。また、進捗管理も容易になりますし、進捗達成率を人事評価に活かすことも可能です。
KPIについては【KPIとKGIの違いとは?具体例や設定方法からそのポイントについても解説】にて詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
OKR
OKRもまた、MBOに並ぶ目標管理手法で、「Objective Key Result」の略称です。
OKRは、目標と成果を意味しており、GoogleやFacebookでも取り入れられたことで注目されています。企業やチームなどの目標と成果が紐づくことで、企業全体の生産性向上はもちろん、従業員のモチベーション維持やスキルアップにもつながります。
OKRについては【OKRと人事評価の関係について】で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
目標管理のメリット
それでは、目標管理を行うメリットをみていきましょう。
目標達成するためのスキルアップ
目標管理では、従業員が自ら目標を立て、その目標を実現するために創意工夫します。
立てた目標を達成するために行動を考え、業務のやり方を工夫したり効率化したりしているうちに、個人のスキルアップにもつながるのです。
個々の従業員がスキルアップしていくことで、企業全体の力も向上し、レベルの高い仕事を達成できるようになります。
従業員のモチベーション向上
目標管理は、目標を立てることで行動やモチベーションを管理します。
つまり、目標を達成するために行動を考えることで、自然とモチベーションの向上をうながせるのです。
上述したように、目標に向かって行動している間にスキルアップしていきます。そして、従業員自身がスキルアップを感じることで、さらにモチベーションが向上する相乗効果も期待できるでしょう。
人事評価の指標に利用できる
目標管理を行えば、進捗管理や目標達成率などを数値として明確化できます。この数値は、従業員個々の人事評価の指標にも利用できるのです。
例えば、一定の期間で〇〇%の目標が完了した、あるいは〇〇個の目標を達成したなどを評価基準にします。
もちろん、目標管理の数値だけですべての評価はできませんが、数値化された指標は公平性のある評価基準として有用です。また、目標達成のためにどのような工夫をして、どのようなプロセスを考えたかなど、数値化できない部分についても評価の目安として使えるでしょう。
目標管理の注意点
次に、実際に目標管理を導入する際の注意点もみていきましょう。
ノルマ管理ではないことを意識する
目標管理で設定する目標は、ノルマではありません。あくまでも、目標を立てることで行動やモチベーションを管理するのが目的です。
目標を設定したからといって、必ず達成しなければならないわけではなく、その目標に向かってどのような努力ができたのか、どのように考えアプローチした結果、どのくらいの達成率を出せたのかが重要なのです。
目標管理をノルマだと誤認すると、従業員はプレッシャーや焦りを感じてしまい、モチベーションは低下しますし、スキルアップにつながる創意工夫をする時間も作れなくなるでしょう。これでは、目標管理の意味がなくなってしまいます。
必ずフィードバックを行う
目標管理の実施においては、フィードバックが重要です。
目標を設定する際や、目標に向かって行動しているとき、そして目標管理期間の終了後などの一定期間ごとにフィードバックを行う機会を設けましょう。
設定する目標は、低すぎたり高すぎたりすると目標管理のメリットを得られにくくなります。そのため、設定された目標に対するフィードバックを行うことが大切です。また、目標管理期間中にも定期的に面談などを設けて現状に対するフィードバックを行いましょう。目標管理期間終了後には、目標へのアプローチや達成状況などを含め、全体的なフィードバックの場を設けることで、次の目標管理につながります。
従業員のモチベーション低下を防ぐ
目標管理の期間中に、従業員のモチベーション低下を防ぐ施策も大切です。
目標管理では、自らが設定した目標を達成するために創意工夫しながら行動することで、モチベーションを維持します。ですので、先述のように、設定した目標をノルマに感じてしまうような環境を作ってはいけません。
「やらされている」と意識した瞬間から、焦りやプレッシャーが発生し、従業員のモチベーションは低下してしまうのです。
目標管理制度だけで人事評価をしない
目標管理制度が人事評価を大きく左右してしまうと、従業員にとっての目標達成はノルマだという意識になってしまいます。
目標を達成できなければ低評価、目標を達成できれば高評価となるような制度にすると、目標管理は本来の目的からそれてしまうのです。
目標管理は、あくまでも従業員のモチベーション維持やスキルアップを目的に導入する手法ですので、目標管理を中心とした人事評価にならないよう心がけましょう。
目標管理の手順
それでは、目標管理を行う際の手順の一例をみていきましょう。
基本的な手順としては、まず目標を明確にした後、目標を達成する期間を設定します。期間を設定したら目標達成までのスケジュールを立て、進捗管理を行いながら目標に向けて行動し、振り返りとフィードバックを行うという流れです。
【目標管理の手順】
- 目標を明確にする
- 目標期間を設定する
- 実際の行動を明確に決める
- 目標達成までのスケジュールを設定する
- 進捗管理を行う
- 結果を記録する
- 目標と進捗について自身で振り返りを行う
- 上長などにフィードバックをもらう
また、上述の項目を目標管理シートとして作成すれば、目標・進捗・結果を記録できるため、振り返りやフィードバックを行う際に効率的です。
目標管理シートについては、【【目標管理シート】OKRを実践する企業の具体例】で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
まとめ
目標管理は「目標による管理」を行うことで、組織目標と個人目標を共存させることができ、従業員のモチベーション向上やスキルアップにも役立ちます。また、それは人事評価の指標としても利用できるといったメリットがあり、業種問わずに多くの企業で導入されている管理手法です。目標管理の意味やメリット、そして注意点を理解して、自社の人材育成や人事評価にも上手く活用しましょう。
- カテゴリ:
- OKR・目標管理