企業の生産性の改善が急務と言われて久しいですが、それをためすためには業務プロセスの改善から始めなければなりません。しかし現状、業務プロセスの改善に抜本的に取り組めている企業は、それほど多くはないでしょう。本記事では、業務プロセスの概要をはじめ、そこでしばしば問題にされる事項や注意点について詳しく解説します。
業務プロセスとは
昨今、当たり前のように使われている「業務プロセス」という言葉ですが、実際にこれは何を意味しているのでしょうか。
企業により業務プロセスの定義はさまざまですが、一般的には「複数工程から構成された経営活動における一連の業務の流れ」を意味します。実際には、一部署ないし一従業員の担当業務の範疇に限定して業務プロセスを認識すること、逆に、部署間や外部の提携企業との連携にまで拡大して業務プロセスを考えること、なども企業や状況によってあり得るでしょう。
基本的に、どんな仕事にも業務プロセスは存在します。特に「業務プロセスの効率化」が問題化されるときには、普段からしている「定型的な作業工程を効率化する方法」、あるいは「不定型な業務プロセスを定型化する方法」について議論されることが多くなるでしょう。業務の標準化や生産性向上のためには、業務プロセスを可視化し、効率化することが重要だからです。
業務プロセスで起こる問題
業務プロセスの改善は、企業にとって永遠のテーマと言えます。最適化できたと思っていても、いつの間にか無駄なプロセスが入り込んでいたり、担当者が変わった途端にうまく業務が回らなくなったりすることは、間々ある話です。以下では、業務プロセスに問題を発生させる主な原因について解説していきます。
業務の属人化の問題
業務プロセスにおいて起こりがちな問題の1つが、業務の属人化です。これは、「ある業務が特定の従業員にしかできない・把握できていない状態」を指しています。例えば、「この案件はあの人にしか回せない」などと思うようなことがあったとしたら、それは業務の属人化のサインです。
業務プロセスの属人化は、組織にとって健全な状態とは言えません。極端な話、重大な業務を属人化させている従業員が、急な病気や事故などで欠勤したり、引継ぎもしないまま退社したりした場合はどうなるでしょうか。その人が担当していた業務は、誰も代替できないまま滞り、場合によっては重大な損失さえ生むかもしれません。
また、業務プロセスが属人化しているということは、その業務の遂行にあたり、必ずその従業員と連絡を取らないといけないことを意味します。ときにそれが無駄な時間的ロスを生んだり、従業員に余計な負担を与えたりすることもあるでしょう。
伝統や慣習の問題
企業に限らず、長く運営されている組織には、さまざまな伝統や慣習が蓄積されています。そうした慣習は、その企業や現場における特有の知恵である場合もありますが、今のシステムには適さない、不要な業務である可能性もあります。
例えば、アドビ株式会社が2020年に実施した調査によると、ビジネスパーソンの実に80.6%が「自社に無駄な商習慣がある」と回答しています。特に「書類の捺印・押印」は、58.1%の人に無駄な業務だと思われているようです。実際、コロナ禍の影響で業務のオンライン化やテレワークが進む中、書類にハンコを押すためだけに出社する、いわゆる「ハンコ出社」の問題が一時期取り沙汰されたことは記憶に新しいでしょう。
良くも悪くも習慣は、繰り返し続ければ続けるほど強固なものになっていきます。それは、システムとして定着するだけでなく、従業員にとって不合理な愛着となってしまう場合もあることを意味します。したがって、もし自社に効果の疑わしい慣習があることを見つけたならば、早急にその慣習の意味を問いただし、改善することが重要です。
非定型処理の問題
企業の業務プロセスは多くが定型化、すなわちマニュアル化されていますが、それでもなお業務の2~3割は、特定の型ができていない非定型の処理を要すると言われています。マニュアル化されていない作業は、個別的な判断が必要な難しい業務であることが多いため、自然と処理にかかる時間が長引いたり、担当可能な従業員が限られたりして、業務プロセスのスムーズな流れを阻害します。
しかし、この非定型処理について新しいアプローチが可能になりつつあります。というのも、近年ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用して、こうした非定型業務の自動化ができるようになってきているのです。
従来は業務をAIに代替させるときでも、その作業の割り振りに際しては、再現性の高い定型業務はAIが、個別の判断を要する非定型業務は人間が担当する、というのが一般的な考え方でした。しかし近年では、「ディープラーニング」という新たな機械学習の開発や、自然言語処理などの発展により、AIはより柔軟な判断が可能になっています。今後AI技術がさらなる発展を遂げていく中、企業業務に熟達した従業員がするのと同じレベルの非定型処理までも、RPAによって可能になるかもしれません。
ERPなどのシステムの肥大化
業務プロセスの非効率化の原因としては、ERPなどのシステムの肥大化も挙げられます。「ERP」とは、企業が抱える「お金・情報・人材」といった経営資源を、効率的に管理・活用するための「統合基幹系業務システム」のことです。
こうしたERPは、導入当初こそ自社にとって最適化されたシステムだったかもしれませんが、長く使い続けて業務アプリケーションの追加実装などを繰り返すうちに複雑化し、現代においては非効率な「レガシーシステム」と化している場合があります。
あるいは、企業によってはERP自体が多重実装されている場合も考えられます。こうした場合、データ作業が二重に必要なこともあり、作業量が増えたり、不要なミスが生じる原因になったりするため要注意です。
業務プロセス改善時の注意点
では、こうした業務プロセス上の問題を、一体どのように改善すればよいのでしょうか。以下では、業務プロセスを改善する際の注意点を紹介します。
プロセス改善の前に業務の可視化が必要
まず、業務プロセスを改善する際は前提条件として、事前に今の業務を可視化することが必要です。というのも、企業の業務プロセスは複雑かつ多数存在し、互いに入り組んでいるため、安直に手を加えると思わぬ悪影響が生じかねないからです。そのため、現場の従業員の意見も踏まえてできる限り業務を「見える化」し、業務上の課題に対して関連する従業員のコンセンサスを得ながら、改善を進めていくことが大切です。
業務の優先順位付けの実施
業務の可視化が終わったら、今度は業務プロセスを分析し、業務の優先付けを行いましょう。「ECRS」と呼ばれるフレームワークでは、業務プロセスの改善は「排除」「統合」「代替」「簡素化」の順序で進めればよいと考えられています。
これに則り、まずは優先順位の低い、不要なプロセスの「排除」から開始しましょう。ここで労力に比べて重要性や利益率の低い業務を減らせれば、業務プロセスの改善は一気に進められます。
次いで、重複あるいは内容的に似通っている業務を「統合」したり、別の担当者・別の担当部署で「代替」したりします。そして、ITツールなどの活用により業務を「簡素化」することで、業務プロセスを改善していきます。1つ減らすことで現場の作業負担が大幅に減少するような業務から、効率的に着手していくことが大切です。
まとめ
本記事では、多くの企業が抱えがちな業務プロセスにおける問題と、その改善のポイントについて紹介しました。業務の属人化を避け、安定的かつ効率的な業務プロセスを構築するためには、各チームや各従業員の抱えている業務を「見える化」することが大切です。
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