市場の変化を感じて事業ポートフォリオを再構築したいと考えている方もいるでしょう。
再構築を行いたいものの、「進め方や重要な要素がわからない」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。この記事では、事業ポートフォリオの概要から、構築する際に意識すること、再構築の必要性および進め方について紹介しているので参考にしてください。
事業ポートフォリオとは
企業が運営する複数の事業を一覧にしたものを事業ポートフォリオといいます。事業ポートフォリオを用いて各事業の成長性や安定性、収益性ごとに分類することで、経営資源を効率よく活用することが可能です。事業ポートフォリオ作成時に考える3つの視点
事業ポートフォリオを考える際に重要な視点は次の3つです。
- 事業を分類し経営資源の投資分配を決める「PPM」
- 多角化した企業の事業から主力を決める「事業ドメイン」
- 競合に勝つための中核となる事業を見極める「コア・コンピタンス」
ここでは、これらの視点について詳しく説明します。
1.事業を分類し経営資源の投資分配を決める「PPM」
フレームワーク分析の1つであるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、縦軸に市場の成長性、横軸に市場シェアをとり、4つの象限に各事業をプロットしたもので、経営戦略の立案に役立ちます。縦軸の上にあるほど成長性が高く、横軸の右にあるほど市場シェアが高い状態です。プロットは円で行い、円の大きさが事業の規模を示します。
第1象限を花形、第2象限を問題児、第3象限を負け犬、第4象限を金のなる木と分類し、4つの象限のどこに事業が位置するかによって、とるべき戦略が異なります。成長性、獲得シェアともに高い花形は利益を出しやすい体質であるものの、市場の成長性が高いことから新規参入も相次ぎ、競争が激しいことから積極的な投資が必要です。問題児は成長性の高い製品やサービスを扱う事業が、シェアを獲得できていない状態を示します。シェアが少ないことから事業を継続するにはコストがかかる一方で、伸びしろのある状態なので注力すべき事業といえるでしょう。
金のなる木は市場の成長性が低い成熟産業で高いシェアのある状態を指します。今以上の成長は見込めないものの、必要なコストが低いため利益を出しやすい状態です。得られた利益を花形や問題児への投資へ回すと効率がよいでしょう。最後の負け犬は、成長性のない市場において市場シェアが得られていない状態を示し、撤退が賢明といえる状況です。このようにPPMを用いて各事業を分析することによって、経営資源の振り分けがしやすくなります。
2.多角化した企業の事業から主力を決める「事業ドメイン」
事業ドメインとは本業のことを示し、事業ドメインの設定は多角経営を行う企業の本業を決めることです。事業ドメインとすることにより経営資源の集中や適切な配分を行えることから、事業ドメインの設定は重要な経営戦略といえるでしょう。事業ドメインの設定は顧客軸(Customer)、機能軸(Function)、技術軸(Technology)の3つから構成されるCFTフレームワーク分析を用いて行います。
顧客軸は商品やサービスを提供する顧客を明確にするもので、適切なターゲット選定に役立ちます。機能軸は商品やサービスの機能が与える価値を明確にするものであり、自社の強みを理解し強化するのに役立つものです。技術軸は技術的な強みを理解し、とるべき戦略を立てるのに使えます。これらの軸を用いることで適切な事業ドメインの設定が可能です。
3.競合に勝つための中核となる事業を見極める「コア・コンピタンス」
競合よりも優位なポジションを確立するためには、企業の強みであるコア・コンピタンスを意識した経営が必須です。ただし、単なる強みがコア・コンピタンスというわけではなく、次の5つの観点から判断します。
- 模倣可能性
- 移動可能性
- 代替可能性
- 希少性
- 耐久性
他社が簡単に真似できるかどうかの指標が模倣可能性であり、独自技術のような模倣しにくいものはコア・コンピタンスになり得ます。反対に簡単に模倣できる技術や製品には競争優位性がなく、コア・コンピタンスとはいえないでしょう。移動可能性は応用の利きやすさのことで、他の技術やサービスへ活用できるものがあると、さらなる事業展開を可能にするなど、コア・コンピタンスとして十分な強みになります。
他の製品やサービスで代用できるかどうかの指標である代替可能性が低いほど、価値が高まるのでコア・コンピタンスとなりやすいです。模倣可能性、代替可能性との関連の強い希少性が高いと、競合よりも価値が高まりやすくなるでしょう。シェアの維持が可能かどうかを示す耐久性が高い要素を持っていれば、長期的に利益をもたらす事業となる可能性があるため、コア・コンピタンスとなり得ます。
また、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの観点から分析するSWOT分析というフレームワークを用いることで、強みに加えて弱み、機会などを見いだすことが可能です。
企業が抱える事業ポートフォリオの課題
事業ポートフォリオを正しく分析することによって、資金投入や撤退などの経営判断が円滑に行えるものの、事業ポートフォリオを構築する材料となるデータが不足していると構築できません。事業ポートフォリオの構築にあたって、まずは各事業のデータを確認し利益や損失をしっかりと把握することが必要です。
事業の管理を複数の部門で行っている場合は、事業のデータを揃えるのにも苦労するかもしれません。また、事業の責任者や事業の目的などが曖昧であれば、経営判断が難しくなるおそれもあります。
事業ポートフォリオ再構築が必要な理由
市場の成長性や収益性、事業の強みなどを基に構築する事業ポートフォリオは、市場環境の変化によって適切でなくなるおそれがあります。ここでは、事業ポートフォリオの再構築が必要な理由について説明します。事業ポートフォリオ再構築が必要な時代背景
新型コロナウイルスの感染拡大により、企業をとり巻く環境は大きく変化しています。環境の変化に対応すべく、企業はテレワークの推進などを迅速に実行しているものの、経営方針に大きな変化が見られた企業は少ないようです。環境が大きく変化していると、経営判断を行うのに重要な要素である市場のニーズも変化することから、既存の事業ポートフォリオとずれが生じるおそれがあります。事業ポートフォリオ再構築の必要性
こうした環境の変化によって、最適な経営判断が変わっていることから、事業ポートフォリオの再構築が必要です。特に、ブロックチェーンやテレワークの普及に伴うペーパーレス化などによってデジタル化が急速に進んでおり、市場環境が劇的な変化を見せています。事業ポートフォリオを再構築することで、撤退や投資といった適切な経営判断が可能になるとともに、株主などステークホルダーへの説明もしやすくなるでしょう。事業ポートフォリオ再構築の進め方
PPMと比べてより定量的な分析手法である4象限フレームワークを用いることで、各事業の市場での位置づけや資金の流れを把握しやすくなります。4象限フレームワークでは縦軸に成長性、横軸に資本収益性をとることで次世代事業、成長事業、基盤事業、再構築事業が明らかになり、データに基づいた経営判断が可能となります。
成長性には売上高成長率、資本収益性には収益性指標であるROSや資本効率性指標のROICを導入することで、定量的な分析が可能です。事業を手放すことが望ましいと判断した場合は、売却や承継を進めていきます。事業ポートフォリオを再構築するにあたっては、経営資源である人材の能力を可視化しておくことで、より現実的な分析ができるでしょう。
まとめ
事業ポートフォリオの構築には、事業の成長性、市場シェアに基づいた事業の振り分け、自社の強みであるコア・コンピタンスの認識が必要です。事業ポートフォリオを既に構築している場合でも市場は大きく変化しているため、再構築を行って現実に沿ったものへ最適化しなければ、市場とのずれが大きくなってしまい、思うように収益が挙げられないでしょう。
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