平準化とは主に製造業で用いられる言葉で、平均化した水準で生産することを「平準化生産」といいます。トヨタ生産方式でお馴染みのジャストインタイムが該当しますね。では、業務量の平準化とは何でしょうか?
それは従業員ごとに偏りがある業務量を正しく振り分けて、業務量の平均化を図ることです。特定の従業員に業務量が集中している状況では、企業はリソースを最大限活用しているとは言えません。業務量100の従業員Aと業務量200の従業員Bが存在すれば、当人のスキルや経験に応じて可能な限りイーブンにすることが正しい業務量の姿です。
しかし、業務量の平準化は言葉で説明するほど簡単なものではありません。そこで今回は業務量を平準化するために必要な6個の原則をご紹介します。
平準化とは?
日本工業標準調査会(JISC)によれば平準化(標準化)とは「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」と定義されています。(日本工業標準調査会「工業標準化について」より抜粋)
①多様化、②複雑化、③無秩序化の意味やその問題点を業務に置き換えて考えてみましょう。
①多様化
同じような仕事であっても人、グループ、部門、拠点が各々やりやすい手順で遂行している状態
各々が独自のフォーマットや方法で情報を管理しており、メールや電話などでそれを後続に伝えることで業務が成立している
こうした状態で業務量が増えるほど伝達漏れやミスが発生しやすくなる
②複雑化
各々がやりやすい独自の方法で仕事を進めれば他者には理解できない業務プロセスが確立してしまう
属人化が始まると特定の従業員しか業務を遂行できないため辞職されると多くの問題が発生する
③無秩序化
状態が悪化すると仕事にルールが無くなり、やるべき事・やってはいけない事の線引きが曖昧になる
場所、時期、人、グループ、部門、拠点によって「やったりやらなかったり」が起き製品やサービスの品質の問題が生じる
最終的には粗悪な製品やサービスを提供することになり、情報漏えいなど重大なセキュリティ事件も起きやすくなる
こうして文面に起こしてみると、業務量を平準化できていない環境では実は様々な問題が発生しやすい状態になっています。以上の問題を回避するためにも早急な取り組みが必要です。
業務量を平準化するために必要な6個の原則
それでは業務量平準化を進めるために必要な具体的な原則について紹介していきます。
原則①小さく始めて大きくする(スモールスタート)
ビジネスやITシステム導入などあらゆる面で基本なのが「スモールスタート」です。特に初めての取り組みではいきなり大規模に実施してしまうと失敗する可能性が高くなるため、最初は小さく始めることが肝要になります。
業務量平準化においては特定の部門と特定のグループを定め、まずは小さい範囲で業務平準化に取り組んでいきます。できればそうした取り組みに積極的な従業員を複数人集めて取り組む、より高い効果を得られるでしょう。そこで得たノウハウをもとに徐々に業務量平準化を拡大していくことで、最終的には組織全体に平準化を浸透させます。
原則②業務量を調査する
業務平準化のためにはまず業務量を調査することが大切です。業務量調査とは「どんな業務が」「どの時点で」「どれくらい発生し」「どんな頻度か」を視覚的表すことを意味します。この業務量調査で重要なのは可能な限り正確な情報を収集することです。その方法としては実測法、実績記入法、推定比率法、合成法などが挙げられます。
各方法の詳細については「業務量とは?4つの測定方法と改善への繋げ方」をご覧ください。
原則③非定型業務を定型化する
非定型業務とは定量的に表しにくい業務のことで、生産計画や調達計画の立案、各部署との日程調整、営業担当者の商談などが挙げられます。こうした非定型業務は利益に繋がりやすい反面平準化しづらいという側面を持つため、可能な限り定型化することが重要です。業務量が偏り過ぎているような企業では決まって非定型業務が多く存在し定型化に取り組んでいません。
原則④無くす、減らす、変えるの視点で考える
業務を平準化する上で大切なことが既存の業務プロセスに存在する「無駄」を排除することです。無駄が存在する状態で平準化しても効果は薄くなり、それまでの労力の半分は水に流れてしまいます。そこで「無くす」「減らす」「変える」という3つの視点で業務の無駄を排除していきます。
- 無くす…業務そのものを無くす、やめる
- 減らす…業務の処理回数、処理量を減らす
- 変える…業務の一部、あるいは全部を変える
無くすことは一番簡単な方法です。歴史ある企業ほど「この業務って何のためにあるの?」と疑問に思うような業務が存在します。過去には必要だったが今では習慣的に行われているという原因が多いでしょう。
減らすことは処理回数や処理量を減少するために業務を統合したり、あるいはシステムで代用するなどの方法が考えらえます。変えることは一番難しい方法ですが、場合によっては無くすこと以上に高い効果を得られることもあります。
原則⑤業務プロセス間の繋がりに着目する
前述のように業務平準化に取り組むにあたって業務プロセス間の繋がりに注意してください。たとえば一見独立している複数の業務プロセスも、意外な所で繋がっている可能性があります。業務プロセスAを変更すると業務プロセスBに影響が出る、といった繋がりを理解していないと、せっかくの平準化も無駄になってしまいます。
原則⑥PDCAサイクルを回し継続的に平準化していく
最後に大切な原則が「PDCAサイクルを回すこと」です。PDCAサイクルとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」というプロセスを物事を改善していくための、ビジネスではお馴染みのフレームワークです。戦後の日本における製造業の発展はPDCAサイクルへの取り組みが支えたといっても過言ではないでしょう。70年以上前から存在するPDCAサイクルは、今もなおビジネスにとって欠かせないフレームワークとなっています。
業務平準化においてもこのPDCAサイクルは非常に大切です。たった一度の取り組みだけではなく継続的に平準化を続けることで初めてその効果を引き出せると言ってよいでしょう。
業務平準化にITソリューションの活用を
今日の業務実態は、いかなる企業でおいても何らかのITシステムを活用しいているのがほとんどです。そのため業務平準化にあたってITシステムへの入出力を業務手順として盛り込み、その上で平準化を図る必要があります。ITシステム上でも様々な非効率が生まれている環境は少なくないでしょう。
業務平準化に取り組む際は、併せてワークマネジメントツール「Asana」の導入もおすすめです。これにより一連の業務プロセスがすべて可視化されるため、業務の属人化を避けつつ最適なリソースの配分が可能です。生産性の向上にも大きく資するツールなので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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