社会情勢や働き方の多様化に伴い、ABWという言葉をよく耳にするようになりました。ABWとはどういうワークスタイルを指し、フリーアドレスと何が異なり、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。正しく理解した上で、自社への導入を検討しましょう。
ABW (Activity Based Working) とは
ABWとは「Activity Based Working」の頭文字をとった用語であり、社員が仕事内容・目的に応じて働く場所・時間を自由に選ぶ働き方です。ABWはオランダ発祥の働き方であり、提唱したオランダの企業Veldhoen + Companyは、ABWは仕事を義務化するものから「やる気にさせるもの」に変えるものと述べています。
ABWは、欧米をはじめ世界各国で導入されています。日本でも、新型コロナウイルスの影響や働き方の多様化に伴い、従来の枠にとらわれない柔軟な考え方や働き方が重視されるようになりました。
ABWでは、オフィスに加えて自宅や図書館、カフェなどの好きな場所を仕事場にできます。チーム作業は広いスペースで、集中したい時には自宅で、といったように自由に仕事場を選択可能です。
ABWにおいて重要なのは、仕事場を選ぶことそのものではなく、選ぶことを通して自分の働き方や仕事の効率化といった課題について考え、仕事の質を上げることです。
ABWとフリーアドレスの違い
フリーアドレスとは、社員のデスクが決まっておらず、社員がその日ごとに使うデスクを選べる働き方です。日本発祥のスタイルであり、1987年に清水建設の技術研究所で導入されました。主にコスト削減を目的としており、多くの企業に広がっています。
ABWとの違いは、仕事場の範囲です。ABWでは出社の必要はなく、自宅やカフェなど、どこでも好きな場所を選択可能です。一方フリーアドレスにおいては、選べるのはオフィス内に限られ、基本的に出社しなければなりません。
そのため、ABWのほうがより自由度が高い働き方です。
ABWを導入するメリット
ABWを企業に導入することで、どのようなプラスの影響があるのでしょうか。仕事のパフォーマンス、ワークライフバランスや人材の確保などの観点から、どのようなメリットがあるのかを押さえましょう。
生産性が向上する
ABWにおいて、社員は仕事内容や気分に応じて働く場所を自由に選べます。オフィスならば頻繁に話し声が聞こえますが、自宅などの静かな場所に移動すれば集中しやすいでしょう。
さらに、ミーティングを会議室ではなく、カフェなどで行うことも可能です。オフィス外での意見交換は気分転換にもなり、いつもと違う場所で話し合うことで、固定観念にとらわれない新しいアイディアを思いつくかもしれません。
時間・場所の縛りを受けずに自分にとって最適な環境で仕事をすれば、仕事を効率的かつスムーズに進められ、生産性が向上するはずです。
オフィスのコストを削減できる
ABWは、働く場所をオフィスに限定しません。出社せずに働く社員が増えるため、全社員のデスクを用意する必要はなくなります。デスクの数が減れば、未使用部分をオープンスペースにするなど、新しい使い方ができます。
自宅で働く社員が増えれば、オフィスの面積が小さくとも多くの社員を雇用できるようになり、大規模経営を実現しやすくなるでしょう。オフィスの立地や条件にこだわる必要もなくなり、賃料をはじめ、維持費や光熱費などの、オフィスにかかるコストを削減可能です。
ワークライフバランスが向上する
社員が自由に仕事場を選択できれば、ワークライフバランスも向上します。社員は自宅で働けるため、家事や育児をこなしながら仕事を進められます。仕事とプライベートを両立・調和しやすくなり、ワークライフバランスが向上するでしょう。
仕事場・時間の選択肢が広がることで、社員のQOLも向上し、満足度も高まることが期待できます。社員に働きやすい環境を提供してくれる企業への帰属意識も強くなり、仕事へのモチベーションも上がると考えられます。
自分の生活スタイルに合った仕事方法、場所について深く考えるようになり、自主性も育まれるでしょう。
優秀な人材を確保できる
ABWを導入することは、社員だけでなく外部の人材へ向けたアピールになります。ABWに取り組む企業は、周囲に良いイメージを与え、高評価を得やすいでしょう。柔軟な働き方を希望する有能な人材から、転職先として選ばれるかもしれません。
ABWを推進すれば、優秀な社員の定着率も向上するでしょう。人生においては、家族の病気・介護、結婚・出産、配偶者の転勤などさまざまな出来事が起こります。プライベートで起きたことに左右されず、継続して働ける環境に魅力を感じる社員は多いはずです。
優秀・有能な人材の流出を防ぎ、確保することは企業にとっても大きなプラスです。
ABWを導入するデメリット
ABWには、さまざまなメリットがありますが、デメリットもあります。導入にあたり、どのような点に注意しなければならないのか、事前に把握しましょう。生じやすい問題を押さえるなら、対策を講じられるからです。
部下を管理しにくくなる
デメリットのひとつは、部下の管理がしにくくなる点です。各社員が別々の場所で仕事をすれば、上司が部下の仕事内容、労働時間や進捗状況を管理するのは難しいでしょう。中には、自宅勤務などが多く、ほとんど会う機会のない部下も出てくるかもしれません。そうなると、勤怠管理や勤務態度の評価も難しくなるため、従来の評価方法では対応できなくなります。
現在、部下がどこでどのような仕事をしているのか、把握・管理できるようなシステムが必要になるでしょう。上司の負担を減らすためにも、成果を重視して評価するシステムへ変更することが大切です。
コミュニケーションが難しくなる
ABWによって、社員とのコミュニケーションをとりにくくなります。円滑なコミュニケーションや人とのかかわりは、精神面において重要であり、仕事にも影響を及ぼします。
各社員の働く場所が自由になれば、直接会う機会が減り、人間関係の構築も難しくなるでしょう。チームで仕事をする場合は行き違いや認識のずれが発生し、プロジェクトの進行に支障が生じかねません。
そのため、各社員が別々の場所で仕事をしていても、社員同士が活発な意見・情報交換を行える取り組みや工夫が求められます。コミュニケーションツールの利用を検討するのも良いでしょう。
ITツールの導入が必要になる
ABWは、アナログ処理、主に紙の書類を扱う仕事・企業には向いていません。オフィスから離れた場所で仕事をするには、必要なデータや書類、資料をデジタル形式で持ち出す必要があります。そのためペーパーレス化やITツールの導入は不可欠ですが、持ち出した情報やツールの流出・紛失を防がなければなりません。セキュリティ対策を万全に行ったうえで、社員がセキュリティやツールについての知識を得る機会を提供しましょう。
ITツールを導入すれば、社員がどこでも安全かつスムーズにコミュニケーションをとり、タスクや進捗を共有できるシステムづくりが進みます。
まとめ
ABWは社員が自由に働く場所を選べるワークスタイルです。導入により、生産性の向上やコスト削減などのメリットがあります。しかし、部下の管理や直接的コミュニケーションが難しくなるデメリットもあります。そのため、ABWを成功させるには、ITツールの導入が不可欠です。
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