複数のメンバーによって成り立つ仕事は、コミュニケーションの質や量が成否に大きく影響します。そこで役に立つのが、仕事上で行われるコミュニケーションについて明確に取り決めたコミュニケーション計画です。本記事では、コミュニケーション計画の概要と作成するメリット、具体的な作成方法について解説していきます。
コミュニケーション計画のメリット
コミュニケーション計画とは、チームメンバーやプロジェクトのステークホルダー(利害関係者)とのコミュニケーション方法や内容を定義し、文書などで共有できるようにまとめたものです。目的は「誰に」「どのような情報を」「どうやって」届けるかを明確に定めて、プロジェクトの重要な情報を必要な人に対して確実に届けられる環境を構築することにあります。
その背景にはコミュニケーション不足による計画の頓挫や、プロジェクトの失敗が挙げられます。たとえば、メンバー間のコミュニケーションが定義されていないと、各メンバーが報告すべき事項を上司に伝えなかった、ステークホルダーに伝わっていなかったせいで納期が遅れた、計画が後ろ倒しになったなど、様々な問題が生じてしまうかもしれません。
しかし、コミュニケーション計画によって判断基準とフローが明確化していれば、メンバーが増えた場合も含めて効率良くコミュニケーションを取ることができます。特に情報の伝達や共有が成否に大きく影響するプロジェクトでは、コミュニケーション計画がプロジェクトの成功率を高めてくれるでしょう。
コミュニケーション計画実践方法
コミュニケーション計画の作成は、そこまで難しくありません。ここではコミュニケーション計画を実際に活用する具体的な方法をお伝えします。
1,課題の分析
一口に「コミュニケーション」といっても同じ部署の連携からアウトソーシング先の企業まで様々ですから、組織の状況やメンバーによって必要となるコミュニケーション計画が異なります。そのため、計画をより効果的にするには、計画を立てる前に自チームやプロジェクトの現状を正確に把握し、課題を明確にしておくことが大切です。
たとえば、何らかのトラブルの検知や把握が遅れることに課題があれば、エスカレーション(上司やマネジメントへの報告)の過程に問題があると考えられます。一般的にはトラブルが発生した際のコミュニケーションフローを見直したうえで、報告先や報告方法を定義してコミュニケーション計画に反映していきます。また、目的に応じてコミュニケーション手段を適切に使い分けられていない場合は、状況に応じて会議やチャットによる対応に切り替えるなど、手段の使い方を見直すことにもつながるでしょう。
2,各コミュニケーション法のメリット・デメリット
デジタルを中心としたテクノロジーの発展や新型コロナウィルスの影響もあり、コミュニケーションを取る方法が多様化しています。また、リモートワーク・在宅ワークを導入している企業では、コミュニケーションスタイル自体も変化しているでしょう。そこで、代表的なコミュニケーション手法のメリット・デメリットを解説していきます。それぞれの手法ごとに特徴や向いている場面を紹介するので、想定しているコミュニケーションが円滑に行えるかを検討してみてください。
- 対面コミュニケーション
デジタル化や新型コロナウィルスなどの流れを受け、対面でのコミュニケーション頻度は下がっています。しかし、表情や声のトーンなど情報量が多いため、言外のニュアンスなども含めて把握できる点が大きなメリットです。また、やりとりの中で相手の人間性や信頼できるかどうかを判断しやすい点もプロジェクトの成功に結びつくでしょう。一方で、同じ場所に集まるための移動時間やスケジュールの調整など効率の面でのデメリットもあります。
対面コミュニケーションは、コンセプトの策定など抽象的な議論をブレスト的に行う場合に向いています。プロジェクトの初期段階など、集中的なコミュニケーションを図りたいシチュエーションでは対面コミュニケーションを重視するとよいでしょう。 - チャット
リモートワークのシチュエーションでは、チャットなど文字を媒介にしたコミュニケーションが利用されます。時間や場所に縛られず、必要なメンバー間で手軽にコミュニケーションを取れる点や、履歴を確認して見落としを防止できる点がメリットでしょう。一方、テキストのみでのコミュニケーションでは相手の顔が見えないため、同じ言葉でも感情や意図を共有しにくい面があります。また、テキストで伝えたいポイントを分かりやすく書く文章力が必要とされるため、感情的なコミュニケーションを重視する人には不向きです。 - ビデオ通話
ビデオ通話は対面とオンラインチャットのメリットを、うまく組み合わせたコミュニケーション手法といえます。時間や場所に関係なく、インタラクティブにコミュニケーションを行える点は大きなメリットです。とはいえ、機器によっては音割れしたり、回線状態によって話した言葉が相手に届いていなかったりといった問題も考えられます。自宅から参加した場合は、家の中が見えてしまうというプライベートな問題も生じるでしょう。効率を重視しつつ、チャットよりも綿密にコミュニケーションを取りたい場合にはビデオ通話が向いています。
3,コミュニケーション計画表の作成方法
繰り返しになりますが、組織の状況によって適切な方法が変わってくるため、コミュニケーション計画表を作成するには現状分析をして課題を明確にします。その課題に沿って、各コミュニケーション手段のメリット・デメリットを踏まえながら最適な方法やツールを決定します。
次に課題とコミュニケーション方法を整理したうえで、やりとりする相手と内容、コミュニケーション手段、頻度などコミュニケーション計画書に必要な定義をまとめていきます。そして、作成したコミュニケーション計画書が実行されるように、必要なメンバーに内容を共有し理解を深めてもらいます。計画書に沿ってコミュニケーションが行われることで改善点も見えてくるため、計画書の内容がメンバーに浸透するまで都度共有するようにしましょう。
4,コミュニケーション計画の見直し方法
社会やテクノロジーの変化が速い現代では特に、一度定義したコミュニケーション計画が常に最適であるとは限りません。策定時と状況が異なれば、コミュニケーション計画も見直しが必要になります。
たとえば、プロジェクトのフェーズが変わったりメンバーも入れ替わりがあったりした際には改めてコミュニケーション上の課題を抽出して最適な手段やツールを選定し直すと効果的でしょう。また、コミュニケーション計画に沿ったコミュニケーションを行えていても、プロジェクト進行自体がうまく進んでいない場合はコミュニケーション上のボトルネックがないかを分析してみてください。このように計画をただ立てればよいのではなく、見直しや改善を定期的に実行していく姿勢が大切です。
まとめ
チームやプロジェクトで仕事を円滑に進めていくには、メンバー間の適切なコミュニケーションが大切です。その際にコミュニケーション計画を作成しておくと誰に情報を伝えるべきかを迷わずに済み、コミュニケーションを適切かつ効率的に行えます。なお、コミュニケーションはメンバーやチームの特性、状況ごとに違うため、それぞれ個別に定義してください。
計画作成にあたっては現状分析によって、まず課題を整理します。コミュニケーション手段ごとのメリット・デメリットを理解し、チームやプロジェクトに合ったコミュニケーション手段を決定します。Asanaなどプロジェクト管理やリモートでの連携を円滑化できるツールの導入もおすすめですから、併せて検討してみましょう。
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