「スプリント計画」とは、システム開発などにおける計画手法の一種であり、スピーディな開発を実現できる手法として知られています。本記事では、スプリント計画の概要やメリット・デメリットなどについて、初心者にもわかりやすいよう解説します。スプリント計画への理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
スプリント計画とは「時間枠」ごとの計画を立てる手法
「スプリント計画」とは、プロジェクトの完遂に必要な業務を短い時間枠で区切り、計画を立てる手法を指します。「スプリント」とは英語の「Sprint」のことで、短距離走や全力疾走などを意味する名詞です。
日本国内においても、短距離競争のことをスプリントと呼ぶことは珍しくありません。水泳や陸上など、速さを競い合う短距離競争を意味する言葉として用いられるほか、競馬や競輪などで「スプリントレース」と銘打たれることもあります。
他方、IT分野におけるスプリントは、「短く区切られた時間枠」を意味する言葉として用いられています。短く区切られた時間枠ごとに計画を立てることから、スプリント計画と呼ばれているのです。
なおスプリントは、「アジャイル」や「スクラム」などの語と一緒に用いられるケースが少なくありません。スプリントやスプリント計画についてより理解するためには、アジャイルやスクラムについても理解しておく必要があります。次項からは、アジャイルやスクラムについて詳しく解説していきます。
スプリント計画を理解する前に「アジャイル」と「スクラム」を理解する
「スプリント計画がどういうものかよくわからない」「難しく感じる」といった方の多くは、アジャイルやスクラムなど、特殊なワードを一緒に目にすることが多いからではないでしょうか。実際のところ、スプリント計画はアジャイルやスクラムとの関係が深く、これらについての理解も必要です。
「アジャイル」とはプロジェクト開発手法のひとつ
アジャイル(Agile)とは、主にシステム開発で用いられることの多い、プロジェクト開発手法の一種です。「素早い」「機敏な」などを意味する語であることから連想できるように、IT業界におけるアジャイルとは、スピーディかつスムーズにプロジェクトを完遂させるための手法を指します。2000年代から広がりを見せ始めた開発手法であり、現在ではさまざまな企業が採用しています。
アジャイル開発では要件定義や設計、開発、テスト、リリースを小さなサイクルで繰り返しつつ、プロジェクトの完遂を目指します。プロジェクト内容に変更が生じることを前提としているため、急な仕様変更に強いのも特徴といえるでしょう。
この手法では、開発工程を小さなサイクルで何度も繰り返しつつ洗練していきます。優先順位の高いタスクから着手でき、開発工程→リリースを繰り返すため、短期間でのプロジェクト完遂やサービス提供が可能などのメリットがあります。
現在、アジャイルはシステム開発手法の主流ですが、かつては「ウォーターフォール型」と呼ばれる手法が一般的でした。こちらは要件定義→設計→開発→テスト→リリースと、上から下に水が落ちるようなイメージで開発が進みます。最初に要件定義などをきちんと決めたうえで開発を進めるため、進捗管理やスケジュール管理がしやすい反面、急な仕様変更に弱いのが特徴です。
「スクラム」とはアジャイル開発手法のひとつ
アジャイル開発とひと口にいっても、実際にはいくつかの手法が存在します。「ユーザー機能駆動開発」や「エクストリームプログラミング」などのほか、スクラムも代表的な手法のひとつです。
スクラムは1990年代に誕生したフレームワークです。チームが一体となって開発に突き進むことが特徴で、ラグビーのフォーメーションであるスクラムが語源といわれています。ラグビーにおけるスクラムは、チームメンバー同士が肩を組んで、相手チームとぶつかり合うフォーメーションです。これと同様に、開発チームのメンバーが一丸となり、力を合わせてプロジェクト完遂を目指すことから、スクラム開発と呼ばれるようになりました。
スクラムではプロダクトオーナーやスクラムマスター、開発者などで10人以下のチームを編成します。少数精鋭のチームを結成したうえで、計画→設計→開発→テスト→リリースのサイクルを繰り返しつつ、最終的な目標の達成を目指します。なお、これらのサイクルがスプリントと呼ばれることも少なくありません。
スプリント計画の使い方・やり方
実際のスクラム開発においては、短い開発期間を定めたうえで、繰り返しサイクルを回していきます。期間は1~2週間程度であることが多く、最長でも1ヶ月以下です。この1ヶ月以下に定めた時間枠のことをスプリントと呼びます。
開発に着手する前に、まずは区切ったスプリントでの成果物を計画し、どのように成果物を作っていくのかも併せて決めていきます。そして、設定した時間枠における成果物や期間、取り組む優先順位などを決めたら、基本的には優先度の高い順にスプリントを回していきます。
スプリント計画のメリット・デメリット
スプリント計画で開発を行ううえで、もっとも気になるのはやはりメリットではないでしょうか。スプリント計画の採用率が高いのは、得られるメリットが多いからだと考えられます。ただし、メリットだけでなくデメリットがあるのも事実なので、どちらも把握しておくことが大切です。以下、スプリント計画のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット:開発のスピーディさ
スプリント計画は、短く区切った時間枠でサイクルを回していくため、優先度の高い案件からリリースできます。並列で開発を行えることから、結果的にスピーディな開発を実現できるのです。
また、計画の変更に対し、柔軟な対応ができるのもメリットといえるでしょう。システム開発では、クライアントからの要望やイレギュラーの発生などにより、急きょ仕様が変更されるケースは珍しくありません。時間枠ごとに計画を立てるスプリントであれば、仮に開発過程で仕様変更が生じたとしてもスムーズに対応できるため、開発の大幅な遅延が起きにくいのです。
デメリット:方向性のブレ
ウォーターフォール型のように初期で方向性を確定し、一貫性をもって開発を行うのであれば、ブレは生じにくいでしょう。一方、スプリントは小さく区切ったサイクルを回しつつブラッシュアップしていく手法ゆえ、当初定めた方向性からブレてしまうことが少なくありません。
方向性がブレてしまった結果、当初の予定とは異なる成果物になってしまう可能性があります。コストがかさみ予算をオーバーしたり、開発期間が延びたりといったリスクもあるため、注意が必要です。
また、短い単位でサイクルを回す都合、スケジュールの全体像が把握しにくくなってしまうおそれもあります。目先のことばかりに注力してしまい、気づいたときには納期がギリギリだった、といったことにもなりかねません。
とはいえ、プロジェクト進行中の軌道修正は、別段珍しいことではありません。むしろ方向性が変わったことで、よりよい結果に結びつく可能性もあります。そのため、方向性のブレが必ずしもデメリットにつながるとはいえないでしょう。
まとめ
スプリント計画を理解するには、前提知識としてアジャイルやスクラムについても把握しておく必要があります。スプリント計画を実行すれば、スピーディな開発を実現できますが、開発途中で方向性にブレが生じるリスクがあることも覚えておきましょう。
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