ホーソン効果とは、「自分が周囲の人に評価されている」「注目されている」と認識することによって従業員はモチベーションを上げ、労働生産性を向上させるという心理学的効果です。本記事ではこのホーソン効果の概要や、ピグマリオン効果との違い、そしてビジネスにおいて活用する方法について解説します。部下のやる気を引き出したい方はぜひご覧ください。
ホーソン効果とは
ホーソン効果とは、1920年代〜1930年代にかけて、社会学者のエルトン・メイヨーらがホーソン工場という場所で行った実験にちなんで名づけられた心理学的効果です。メイヨーはこの実験を通して、労働者の生産性を向上させるのは物理的環境の変化よりも、「自分は大切にされている」「面倒を見てもらっている」といった主観的認識に依存する部分が大きいことを明らかにしました。
つまりメイヨーは、周りと比べて自分が特別に優遇されていると感じたとき、労働者はその特別扱いに応えようとモチベーションを高め、より一層仕事に打ち込むようになると考えたのです。優遇と言っても、昇給や昇進など具体的なものである必要はなく、たとえば自分はほかの同僚と比べて特別上司に目をかけられていると本人が主観的に感じるだけでもホーソン効果は発揮されます。薬効がない薬を与えても、思いこみによってポジティブな効果が現れることを「プラセボ効果」と言いますが、労働者の主観的認識によって労働生産性の向上という実効性が現れるという点では、ホーソン効果も似たところがあると言えるかもしれません。
先述の通り、メイヨーはホーソン効果を解釈するにあたって、労働者が「自分は優遇されている」と感じることに力点を置きました。しかし解釈者によっては、労働者の生産性を向上させるには、「自分が誰かに観察されている」と意識させるだけで十分だと主張する者もいます。要するに、誰かに注目されている状況を作って労働者にプレッシャーを与えるだけでも生産性を上げることはできるというのです。
実際、特定の社員をチームから切り離し、特別な注意を与えれば、その社員がより良いパフォーマンスを発揮する可能性は高いでしょう。とはいえ、こうした解釈もメイヨーの主張を直接反証しているとまでは言えません。誰かに評価されたいと願うのも、それに応えて頑張りたいと思うのも人間にとっては自然な感情であり、メイヨーの主張は実感としても受け入れやすいものと言えるでしょう。
ピグマリオン効果との違い
ホーソン効果と似た心理学的効果としては、ピグマリオン効果も挙げられます。ピグマリオン効果とは、教育心理学の分野における学説で、生徒は教師の期待に応えて学習効果を上げる傾向があるというものです。
ホーソン効果もピグマリオン効果も、「自分は期待されている」という認識が結果に良い影響を及ぼすという点では共通していると言えるでしょう。ただしホーソン効果は「上司と部下」のような上下関係だけではなく、同僚同士など、同じ立場であっても適用されます。この点、ピグマリオン効果は「教える側」と「教えられる側」という限定的な関係を前提に想定された理論であるという点に違いがあります。
ホーソン効果をビジネスに活かすには
上記のようにホーソン効果は従業員のモチベーションを高め、労働生産性を上げる効果があります。それでは職場においてホーソン効果を活かすためにはどのような施策を行えばいいのでしょうか。以下ではホーソン効果をビジネスに活かす方法について紹介します。
優秀な社員とともに働かせる
前項でも触れたように、ホーソン効果は、上司−部下間の関係に限らず発揮されるため、同じ立場の同僚の視線を活用することもできます。
とはいえ、勤務態度の良くないチームに入れてしまえば自分まで影響されてしまうといったことも考えられますので、ホーソン効果を見込んでチームを編成する際には、そのチームがなるべく優秀であったり、模範的であったりする方がベターです。周囲のレベルが高ければ、自分も同じレベルが期待されていると自然と思うものなので、周りに引っ張られて成長が促進されることが期待できます。
定期的にプレゼンの場を設ける
日常業務とは別に、定期的にプレゼンの機会を設けるなどして、従業員が自分の仕事を経営層にアピールする場を用意するのも効果的です。タイミングとしては、昇給審査や昇進審査などを利用するといいでしょう。このようなプレゼンの機会を作ることによって従業員は、「この会社や上司は自分の話を聞いてくれる」「尊重してくれている」と実感を得ることができ、モチベーションを高めやすくなります。
また、プレゼンの際には、既存の実績だけではなく、今後の目標などについても話してもらうのがおすすめです。そうすることによって従業員は自分の目標を明確にできる上、上司はその部下に対してどのようなことをどれくらい期待しているか伝えたり、部下が自分で設定した目標を達成できているか、はっきりした評価軸を持って注目したりすることができます。
コミュニケーションを活発にする
ホーソン効果においては、人間関係も生産性にポジティブな影響をもたらすと言われています。それゆえ、上司はチームメンバーの人間関係に対しても配慮し、チーム内でのコミュニケーションを活発にするようにマネジメントすることが重要です。
個々の従業員が自分の仕事だけではなく、周囲の仕事状況にも関心を持って注目することによっても、ホーソン効果は発揮されます。こうした仕事状況の「見える化」をすることによって、仕事が停滞したりトラブルが起きたりしたときには素早いフォローも可能になるでしょう。
ホーソン効果の活用事例
多くの企業・管理職は、知ってか知らずかホーソン効果を活用している場合が多いのではないでしょうか。
たとえば、ディズニーでは各スタッフにカードを配り、自分が高評価した他のキャストにコメントを書いて送るという取り組みを実施しています。さらにスタッフ同士で交換された結果をもとに、優秀者は「スピリット・アワード」を受賞し、表彰されてその栄誉を讃えられるのです。このように他者からの高評価が目に見える仕方で示される機会を作ることは従業員のモチベーションを高め、「また受賞できるように頑張ろう」「自分も受賞できるように頑張ろう」という気を起こさせます。
このような表彰制度はモチベーションの向上に大きく繋がるものですが、もちろん普段からの接し方も同じくらいに重要です。たとえ小さなことでも部下が良いことをしたらしっかり気づいて褒めることを心がけることで、部下は上司が自分をしっかり気にかけていることを感じてモチベーションを高められます。
まとめ
ホーソン効果の提唱者であるメイヨーによれば、従業員は自分が特別に優遇されていると感じることによってモチベーションを高め、その期待に応えようと生産性を上げるとされます。多くの人は上司や周囲の人間から認められたい、気にかけてもらいたいと願っているものです。ホーソン効果とは人間のこの自然な心理がビジネスにおいて与える好影響を実証したものと言えるでしょう。
ホーソン効果をビジネスにおいて効果的に活用するためには、上司が個々の部下の仕事ぶりや仕事の進捗状況について密に把握し、機を見つけて褒めるなどする必要があります。そうすることによって従業員は上司が自分をしっかり見守ってくれていると実感し、より頑張ろうとしてくれることでしょう。
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