相対評価と絶対評価の違いを知る重要性とは?企業に求められる評価制度とそのポイントを解説

 2021.09.01  2022.06.07

従来の日本企業では、人事の「従業員の評価基準」に相対評価を採用するのが一般的でした。しかし、近年では絶対評価を用いた人事評価制度を取り入れる動きが活発化しています。人事担当者だけでなく企業経営者の中にも、相対評価と絶対評価の意味を再確認したいという人も多いのではないでしょうか。本コラムでは、そもそも相対評価と絶対評価の違いは何なのかを再確認しながら、これからの企業にはどのような人事制度が求められているのか、そのポイントを含めてわかりやすく解説します。

相対評価と絶対評価の違いを知る重要性とは?企業に求められる評価制度とそのポイントを解説

相対評価と絶対評価の違い

企業では、従業員の評価による各個人のポジションや給与などの人事評価が必要不可欠です。

その人事評価の指標には大きく分けて「相対評価」と「絶対評価」があります。従来、多くの企業では相対評価を用いて従業員を評価してきました。しかし、近年の働き方は変化し、相対評価に加えて絶対評価も重要な要素となっているのです。

まずは、相対評価と絶対評価の違いについて確認していきましょう。

相対評価とは

相対評価とは、組織や団体の枠組みの中で「他者との比較」によって個人を評価する方法です。

常に他者と比較した評価になるため、非常に優れた能力を持つ個人でも、さらに優れたスキルを持つ個人がいる場合には、両者を比較して優劣がつきます。また、企業組織という枠組みの中では各ポジション(部長や課長など)は人数が限定されているため、例えば部長のポジションに就く人員が定員オーバーだと、同じ能力を有する従業員でも部長にはなれません。

ただし、人事担当者としては、評価基準が明確であるため人事評価を決定しやすいのは相対評価です。

絶対評価とは

絶対評価とは、あらかじめ定めた評価基準に沿って、個人が成果を出したか否かで評価します。ですので、他者と比較されることはなく、個人のスキルや経験をいかして目標達成することで平等な評価を得られます。

例えば、評価にA~Dまでのランクがあるとするならば、複数の従業員がランクAの評価を得られるということです。従業員にとっては、結果を出すための努力やスキル習得に対するモチベーションを向上できる評価制度だといえます。

ただし、人事担当者としては、評価基準が多岐にわたるため、相対評価よりも人事評価がしにくい場合もあります。

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相対評価の方法

それではまず、相対評価の方法を見ていきましょう。

相対評価の方法は、一人ひとりの従業員を全体と比較した結果で評価します。例えば、従来の年功序列制度や取得している資格の多さなどを他者と比較して、勤務年数が長い者や年齢が上の者、人よりも多くの資格を取得している者などが優先的に評価されるといった具合です。

評価が高い者は上級職のポジションに割り当てられますが、各ポジションに就ける人数が決まっている場合には、評価が高い順にポジションへの就任を決定します。

相対評価の例

例えば、企業内の枠組みとして以下のような割合の条件がある場合を考えてみましょう。

  • 評価ランクS:1人
  • 評価ランクA:3人
  • 評価ランクB:5人

このとき、勤務年数が10年で10個の資格を取得している従業員が2名おり、どちらかがランクSとなる場合は、その他の評価対象である年齢などが考慮されて、年上の従業員がランクSのポジションに就くなどの判断がくだされます。

これが、相対的に判断するということです。

身近な例では、スポーツの順位や営業成績も、集団の中で順位をつける相対評価が用いられています。

絶対評価の方法

次に、絶対評価の方法をみていきましょう。

絶対評価の方法は、定めた基準を達成した個人すべてを平等に評価するというものです。

同等のスキルを持った個人が2人いたならば、両者が同じ評価を受けます。勤続年数や資格取得の数などは関係なく、目標を達成したか否かが評価基準です。勤続年数1年目の従業員でも、勤続年10年目の従業員よりも高い評価を受けられます。

これは、近年の日本国内に広がる「実力主義」に沿った評価方法だといえるでしょう。

絶対評価の例

例えば、上述した相対評価と同じように、企業の枠組みとして以下のようなランクがある場合です。

  • 評価ランクS
  • 評価ランクA
  • 評価ランクB

相対評価と違う部分は、各ランクに人数制限がないことです。これにより、個人の目標を達成した従業員は全員ランクSの評価を受けられます。

営業職の例を挙げるならば、月に10件の契約を取るという目標を立てた従業員が2名おり、2名共に目標を達成した場合には、双方がランクSの評価を得る可能性もあるということです。

相対評価のメリットとデメリット

それではまず、相対評価のメリットとデメリットをみていきましょう。

相対評価のメリット

人事担当者が従業員を評価しやすい

従業員をその他の従業員と比較して優劣をつけるため、人事担当者が評価しやすいメリットがあります。

成果・成績で同等の従業員は、さらに勤続年数なども評価対象として比較できるため、必ず優劣をつけられるのです。誤解を怖れずにいうならば、評価が機械的な作業で行えるのが相対評価だといえるでしょう。

枠組みを作りやすい

相対評価で従業員を評価すれば、必ず優劣・順位を確定できますので、部長・課長などのポジションといった枠組みを作りやすくなります。

各ポジションの人数を限定できますし、各ポジションに抜擢された根拠も示しやすくなります。

給与配分がわかりやすい

枠組みが作りやすいため、給与配分もポジションごとに取り決めやすいといえます。

ランクSというポジションに1名、ランクAというポジションに2名など、あらかじめ人数を調整できますし、その人数に合わせた給与配分が決められますので、予算の調整がしやすくなります。

デメリット

結果に対する公平な評価とはいえない

実力や結果の他にも、勤続年数や年齢といった評価基準が設けられていた場合、努力や成果に対する評価が公平であるとはいえません。

勤続年数が長くても成果が出ていない従業員もいますし、年齢が低くても大きな成果を上げている従業員もいるでしょう。このような場合、やはり公平な評価がしにくいことがデメリットだといえます。

成果のレベルが低くても優劣をつける必要がある

人事評価をする際に、従業員の成果・成績のレベルが高い場合には、ランクSなど高く評価する従業員を選ぶことは簡単です。しかし、従業員全体の成果や結果のレベルが低い場合でも、その中からランクSなどの高評価を選ばなくてはなりません。

この場合、企業全体の組織力の低下にもつながりますし、本来の想定とは見合わない給与配分をしなければならない事態が想定されます。

このようなデメリットは、従来の年功序列制度などのデメリットにもつながる要素だともいえます。

絶対評価のメリットとデメリット

次に、絶対評価のメリットとデメリットもみていきましょう。

メリット

従業員のモチベーションを向上させる

絶対評価は、成果やノルマの達成率が評価に直結します。

従業員や企業が決めた目標を達成することが自身の評価につながるため、モチベーションの向上も期待できるのです。目標達成のための創意工夫を個々が行うため、業務への取り組みも主体的な動きへと変化するでしょう。

公平で納得できる評価を得やすい

目標やノルマなどの結果を出せば誰もが評価対象となるため、公平な評価を得やすくなります。

同等の結果を出した従業員は同じ評価を得られますので、勤務年数の違いや年齢による不公平感はなくなります。

従業員が自らの課題を見つけやすい

絶対評価の基準となる目的を達成できなかった場合、達成するための課題を従業員自らが見つける動きも出てくるでしょう。

上述したモチベーションの向上につながる部分ですが、従業員自らが主体的に行動する環境が作れることもメリットのひとつです。

デメリット

給与資源の調整が難しい

絶対評価では、同じ成績・結果を出した従業員に対して、給与においても同等の配分が必要になります。

相対評価では、ランクやポジションの人数が決まっていますので資源配分がしやすいのですが、絶対評価では「何人がどの評価を得るのか」が事前に予測しにくいため、給与資源の調整が難しいというデメリットが挙げられます。

数値化できない業務は評価しにくい

企業の業務はさまざまで、すべての職種が数値化できるわけではありません。そのため、数値化できない業務の評価がしにくいというデメリットがあります。

例えば、営業職ならば売上などの営業成績を数値化できるため評価しやすいのですが、事務職の業務は数値化しにくいため、絶対評価では評価が難しいのです。

これからの人事に求められる評価制度のポイント

それぞれのメリット・デメリットを確認したところで、これからの人事に求められる評価制度のポイントをみていきましょう。

相対評価だけではなく絶対評価も意識する

相対評価が主な評価基準であったこれまでの企業も、徐々に絶対評価を取り入れるようになっています。

ただし、相対評価を廃止して絶対評価を導入してしまうことはおすすめできません。なぜなら、上述したように絶対評価だけでは評価できない業務もあるからです。

絶対評価を導入する際には相対評価のメリットを組み合わせて、個人の納得感や平等のバランスを保つことが大切です。

双方の評価を意識することが、これからの評価制度作りのポイントだといえるでしょう。

評価制度には柔軟性を持たせる

これからの評価制度には、柔軟性を持たせることがポイントです。

絶対評価や相対評価のどちらかに偏る制度ではなく、数値化できる業務には絶対制度、数値化できない業務には相対制度といった具合に、評価対象によって使い分けるとよいでしょう。

また、それぞれの評価については、評価基準を従業員に公開しておくことも大切です。従業員が納得できる評価制度とその扱いを示して公平であることを示すことで、評価に対する納得感を従業員に与えることができるはずです。

まとめ

企業における従業員の評価は、相対評価と絶対評価を理解して双方のメリットを活用した上で、納得感と公平性を持たせることが大切です。評価は従業員のモチベーションにも大きく関わりますので、透明性も意識した評価制度の導入を意識しましょう。

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