新年度がスタートしても、「業務改善」という課題が無くなることはありませんね。特に昨今では、日本人の労働生産性の低さが取り上げられることが多くなっているので、企業の業務改善に対する取り組みに拍車がかかっているように感じます。
そうした中で、企業が主体となって実施する業務改善に疲弊しているビジネスパーソンが多く存在します。月初になれば「次の業務改善案を提出しろ」と上司から通達され、何とか知恵を絞って案を出しても採用されるのはごく一部。次第に「提出した業務改善案に文句を言われないこと」が目的になり、効果的な案が出ないという悪循環に陥るというケースは、実は少なくありません。
本来、業務改善案とはもっと肩の力を抜いて取り組めるものであり、血眼になって問題を見つけたり、業務改善案を組織全体から募ったりせずとも、しっかりと効果を出すことができるものです。
業務改善に苦しむのではなく、業務改善によって仕事が楽になり、利益が上がり、新しいリソースが生まれる。そんな取り組みのために、本記事では今すぐできる業務改善の提案をしていきます。
本当は簡単!業務改善は難しく考えないことが大切
業務改善という取り組みを複雑にし、苦しいものにしている原因の1つが「決定的な改善案でないと業務改善に成功しない」という固定概念によるものです。世の中には高度なイノベーションによって改革と言えるほどの業務改善に成功した事例は確かに存在します。
しかし、そうした大規模なイノベーションばかりが業務改善ではありません。本来は小さいところから始めて(スモールスタート)、少しずつその規模を拡大していき、最終的には組織全体を巻き込むような業務改善へと昇華させていくというのが基本です。急ぎ過ぎてはいけませんし、大規模なイノベーションばかりが業務改善と考えてはいけません。
業務改善とは、本来ならば下記のステップを踏むことで、誰でも簡単に行えることです。
業務改善を成功させるための基本ステップ
業務の「見える化」
「見える化」というのは、組織の暗黙知として認識しているものや、目には表れないデータなどを、視覚的に見えるようにすることを指します。つまり業務の「見える化」というのは、組織全体または一部の業務を整理して、業務の流れや作業手順、作業の種類などを図などで表していきます。
たとえば「見積書作成・承認に時間がかかり、顧客への提示が遅れることで満足度が下がっている」という経営問題があるのならば、改めて見積書作成及び承認フローに存在する業務を洗い出してみて、そこに潜む問題を見つけていきます。
この時、「なぜなぜ分析」という手法を使うと簡単に問題を発見できるでしょう。「見積書作成に時間がかかる」という問題に対して数回の「なぜ?」を繰り返していき、本質的な問題まで掘り下げて考えてみましょう。
問題の「優先付け」
業務改善を成功させる要因として大切なポイントが、必ず問題の「優先付け」を行い、優先度の高い問題から取り組んでいくことです。業務上の問題というのは探し出せばキリがありません。小さな問題から大きな問題まで、その種類も様々でしょう。
それらの問題を端から解決していくというのが非効率的ですし、非現実的です。だからこそ問題に優先順位を付けて、それに沿って改善に取り組むことが大切です。
問題の「優先付け」を行う際は業務のQ(品質)・C(コスト)・D(納期)に着目すると良いでしょう。QCDの満たし度が低い問題は企業にとって深刻な問題です。ただし、あまりに大きな問題にいきなり取り組むのではなく、最初は小さな問題をあえて選ぶことも大切です。
業務プロセスの「見直し」
業務上に発生する問題というのは、特定の行動を取ることによって解決することができます。それが、以下の4つの行動です。
- 無くす(Eliminate)
- まとめる(Combine)
- 組替・代替(Rearrange)
- 簡単にする(Simplify)
業務改善に取り組む際は上か順に問題解決の方法を検討し、改善に取り組んでいきます。「無くす(Eliminate)」は最も効果的な方法ですが、適応できる業務は少ないでしょう。組織全体の業務プロセスを抜本的に見直せば、無駄な業務を見つけて無くすことも可能かと思います。
次に効果的なのが「まとめる(Combine)」です。似通った業務をまとめることで、業務効率を大幅にアップすることができます。たとえば、1週間のうち数回ある定例会議を1度にまとめるのも、立派な業務改善ですしそこに関わる人の時間を効率良く使うことができます。
「組替・代替(Rearrange)」はほとんどの業務の中で実施できる余地が大きいかと思います。1つの業務プロセスを組替えたり、代替を採用するだけでは効果が低いかもしれませんが、組織全体で実施するとなれば大きな業務効率アップに繋がる可能性があります。
最後に、「簡単にする(Simplify)」という施策は日常的に考えることが大切です。「この業務、もっと簡単にできないだろうか?」と、自分の中で常に問題定義をすることで、ちょっとした業務改善に繋がりますし、そこから大きな業務改善が生まれることもあります。
業務改善の「継続」
そして4つ目のステップとして大切なのが業務改善を「継続」していくことです。たった1度の業務改善によって改革に至ることは当然不可能ですし、大規模な業務改善によって労働生産性を大幅に上昇したという企業も、それまでの努力が裏にはあります。その努力こそ「継続」です。
最初の業務改善を実施したら、すぐにその効果を評価して新しい業務改善案を立案・計画・実行したり、そこで得たノウハウを他の業務プロセスに適用して業務改善の拡大を図ったりします。ごく1部の業務改善で満足するのではなく、最終的には組織全体に業務改善を拡大し、効果的な業務改善プロセスを確立するためにも「継続」が非常に重要になります。
業務改善とITの関係
1つ1つのステップについて細かく解説したので、「やっぱりちょっと難しいな…」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、上記の基本ステップをしっかりと身に付けることができれば、業務改善は今よりももっと楽しいものになるはずです。業務改善によって業務時間が短縮され、ビジネスの付加価値がより多くなれば、それは自分自身の評価になりますし会社のためにもなります。
近年では、こうした業務改善をITの力によって実現しようと考える企業が増えています。ITはそもそもビジネスを効率化させるために存在しており、問題に応じてITを使い分けることによって、大幅な業務効率アップや労働生産性向上が期待できます。
ですので、業務改善をスタートして施策効果が頭打ちになってきたなと感じたら、次はITを活用した業務改善に着目してみてください。従来とは圧倒的に異なる業務改善効果を手にでき、IT活用を促進することで売上や利益を大幅にアップさせることもできます。
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