どんな取り組みであれ、目標を設定し、そこに向かって努力することが重要です。しかし「目標」自体の質が悪ければ、目標管理は逆効果になりかねません。特に、チームを率いるリーダーなどは目標設定の難しさを感じることも多いでしょう。本記事では、より効果的な目標設定に役立つ「SMART」の5つの観点とその実践に重要なポイントを解説します。
SMARTゴールとは
「SMARTゴール」とは、目標設定における5つのポイントを押さえるための枠組みです。明確で質の高い目標を設定し、その先の成果につなげるために重要です。
「SMART」は、それぞれ英単語の頭文字を表しています。後に具体的に解説する5つのポイントに沿って定められた目標が「SMARTゴール」です。目標設定自体は多くの企業が重要視していますが、一方でその内容は曖昧になっていることもあります。具体的なアクションにまで落とし込めるよう、「SMART」をしっかり押さえていきましょう。
SMARTゴールにおける5つのポイント
では、具体的にSMARTゴールの5つのポイントを解説します。これらのポイントに沿って設定することで、日々の業務などに落とし込める、適切な水準の目標になり、業績の向上にもつながります。個人あるいはチームとしての目標が5つのポイントを満たしているか、振り返りながらチェックしてみましょう。
なお、どの英単語の略とするかは、たとえば”R”については、”Related”や”Relevant”のようにいくつかの意見がある場合もありますが、意味合いとしては下記で説明する5つで理解するとよいでしょう。
Specific(具体的な)
まずは”Specific”です。日本語で「具体的な」「明確な」といった意味合いです。自身だけでなく、他の誰が見ても明確にイメージできるような目標を言語化することが大切です。そのためには、いわゆる「5W1H」の枠組みに沿って考えるのが有効です。
「新規顧客を獲得して売上に貢献するように頑張る」といった曖昧な目標ではなく、5W1Hが明確な、具体的なアクションにつながる目標設定をしましょう。営業であれば、「月に10件、新規顧客とのアポを獲得する」のような具体的な目標を立てることで、1日単位での目標設定や、現状とのギャップ分析をより綿密に行え、対策も立てやすくなります。
Measurable(測定可能な)
“Measurable”、つまり測定可能な目標を設定することも大切です。「測定」とは、基本的に定量化できる内容にすることがポイントです。定量的な設定をすることで、本人だけでなく上司などの関係者も客観的に目標達成の度合いを判断できます。人事評価にもそのまま活用することも可能でしょう。
また、測定可能な目標として設計することで、より精度の高い振り返りができ、PDCAの効果向上も期待できます。業務の性質などによって、必ずしも定量的な目標の設定が可能とは限りませんが、極力定量化した目標にしましょう。たとえば、定量化が難しい場合は、その目標が達成された時にどのような状況になっているかに着目し、数値化を試みます。たとえば社員アンケートなどを実施して定量化したり、締切日を設けたりといった方法が考えらえます。数値化できるレベルまで分解することで、結果的に目標の質も向上します。
Achievable(達成可能な)
目標設定に際し、現実的に難しい水準で設定されることがあります。しかし、あまりに現実離れしていると実効性がなく、目標としての意味が薄れてしまいます。その意味で、”Achievable”=「達成可能」な目標であることが重要です。現状のビジネス状況や個人・組織のスキルやリソースと照らし合わせながら、希望や願望ではなく現実的かつ従業員のモチベーションを高められるような目標にしましょう。
ただし、簡単に達成できる目標でも効果は薄れてしまいます。現実的でありながらも届くか届かないかのラインを考えます。上司など目標設定者の腕の見せ所ともいえます。
Related(関連した)
4つ目のポイントは、その目標が会社などの組織と紐づいたものにすることです。英語では、”Related”や”Relevant”で表され、「関係のある」「関連した」という意味です。
個人としての目標と部署全体の目標、あるいは会社全体の目標と部署の目標が連動することで、個人単位の目標やその達成のための業務をより上位概念で位置づけることが可能になります。個人の目標と全体の目標を紐づかせ、各従業員の能動的なアクションを引き起こす意味でも大切です。
Time-bound(期限・時間制約がある)
最後は、”Time-bound”、つまり「期限や時間制約がある」というポイントです。どんな仕事であれ、期限のないものに対して高いパフォーマンスを発揮するのは困難です。いつまでのその目標を達成するのかを明確にしない限り、目標から逆算したスケジュールを立てられず、いつまでたっても達成できないままになりかねません。逆に、達成時期次第で目標の水準も当然変わります。「期限」を明確にした目標設定をしましょう。
SMARTゴールで設定した目標を達成するためには
目標は設定して終わりではなく、その達成に向けてアクションしていくことが大切です。最後に、SMARTに沿って設定したゴールを達成するために押さえるべきポイントについて3つ解説します。
目標達成に向けた行動をスケジュールに組み込む
目標を達成しても、それがうまく機能しない原因として多いのが、設定した目標達成に向けたアクションプランをスケジュール化できていないことです。
原因として考えられるのが、SMARTの観点でいうと”Specific”が不十分なため、取るべき行動に落とし込めていない、あるいは”Time-bound”がないため、そもそもスケジュール化できていない、などが挙げられます。
まずは”SMART”が網羅されているか今一度確認しましょう。逆に、5つのポイントが満たされていれば、それを1日ごとのスケジュールに落とし込むのみです。定量的な月の目標であれば、それを営業日で平均してスケジュール化するイメージです。
定期的に目標の見直しをする
目標は一度設定して終了ではありません。特に現代はテクノロジーなどの発展で環境の変化が激しく、SMARTのポイントに沿って目標を設定していたとしても、当時と状況が変わったり、予定通りに進まなかったりすることもあるでしょう。
定期的に現状との比較を行い、必要に応じて目標を見直すことも大切です。特に現場の従業員は、日々のタスクに追われて俯瞰的に現状を分析しづらいため、上司などのリーダーが状況を見極めながら、より適切な目標に導くことも必要でしょう。また、修正した新しい目標に柔軟に対応していく姿勢が大切です。
継続を意識する
適切な目標設定とは、基本的に簡単には達成できないレベルの目標です。また、タイムラインの長い目標であるほど、達成までのロードマップが長く、大きなギャップを感じることもあるでしょう。
しかし、いくら焦っても一朝一夕で達成できるものではないため、目標から日常に落とし込んだ行動を地道に積み重ねるしかありません。むしろ、無理して一気に達成しようとするとスタミナ切れになり、結果的に目標に届きづらくなります。
各従業員がモチベーションを保つためには、楽しく目標を達成するための努力を継続できるような仕組みも必要です。これはリーダーとしての資質も問われます。最終目標をブレイクダウンしたチェックポイントを適度に設定し、従業員のモチベーションが続くようにするのも有効です。
まとめ
ビジネスや勉強、スポーツなどあらゆるものにおいて目標設定の重要性が認識されている一方、目標の内容については曖昧になってはいないでしょうか。
SMARTの5つのポイントに沿って目標を定めることで、目標から逆算した日々の行動に落とし込み、継続的な努力が可能になります。組織やチーム、あるいは個人で目標管理がうまくいっていないと感じる場合、SMARTの枠組みに沿って現状の目標を分析し、不十分なポイントがあれば改善していきましょう。
- カテゴリ:
- OKR・目標管理