働き方改革の必要性が一層高まるなか、改革が一向に進まない企業も多く存在します。どうすれば、働き方改革をスムーズに推進できるのでしょうか。本記事では、企業が働き方改革に失敗してしまう理由を明確にしつつ、成功のポイントを探っていきます。
働き方改革が失敗する理由とは
働き方改革が失敗に終わってしまうのはなぜなのでしょうか。その背景には、日本特有の企業文化を含めたさまざまな理由があります。
危機感の欠如
働き方改革が進まない理由のひとつに、改革しなければいけないという危機感の欠如が挙げられます。近年、グローバル化が進み、企業間の競争は激化する一方です。加えて、作れば作っただけモノが売れる「モノづくり中心の時代」から、ITを軸にアイデアで勝負する「サービスの時代」へと移行しています。
すなわち、労働時間よりも生産性に焦点を当てる働き方改革は、グローバルな競争で生き残るためのひとつの道筋とも言えます。しかし、危機感が薄く、「今変わらないと企業が存続できなくなるかもしれない」という意識が欠落しているケースが多くみられます。変わることの重要性が腹落ちしていないと、当然ながら働き方改革にも身が入りません。
企業文化の問題
これまでの慣習やルールなどを含め、日本特有の企業文化が壁となって立ちはだかっているケースも散見されます。
働き方改革を進めるうえでのボトルネックが、日本に根強く残る紙文化です。テレワークが解禁されたとしても、稟議・決裁のたびに「紙と印鑑」が必要であれば、結局出社せざるを得なくなってしまいます。働き方改革とペーパーレス化はセットで進めていく必要があります。
また、企業文化として引き継がれてきた業務プロセスに無駄が多いと、働き方改革は進みません。「目的が曖昧な会議が多い」「何事も全員参加で決めようとする」など、非効率的な企業文化を土台としたままでは、働き方改革の考え方も機能しないでしょう。
管理者の考え方
管理する立場の上司や幹部社員、経営陣などが働き方改革に合った考え方を持っておらず、改革の足を引っ張ってしまう場合もあります。その一例が、長時間労働を美徳とする考え方です。
かつては、残業を多くし、休日出社もいとわない社員こそが貢献度の高い人材だと評価される傾向にありました。
そのような働き方で成功体験を積んできた人が、そのまま古い価値観にとらわれて重役に就いていることも少なくありません。その場合、会社全体にそうした価値観が根付いてしまうことも多いでしょう。効率良く仕事を進めて定時で帰ることに後ろめたさを感じたり、在宅勤務を休みの一種だと捉えられたりして、逆に社員の精神的負担が増えてしまう恐れも考えられます。
このように、働き方改革が失敗するケースには、そもそも経営層や幹部社員の意識が古いままというパターンも少なくありません。
現場の適応
働き方改革が、必ずしも現場の社員に歓迎されているとも限りません。「残業代を稼ぎたい」「家に帰っても特にやることがない」などの理由から会社に残りたいという気持ちがあったり、現状を変えることに前向きでなかったりする場合もあります。
社員側が、テレワーク勤務をしてみたものの自分の特性に合わないと感じたり、業務との相性が悪く逆に疲れてしまったりするパターンも考えられます。
企業側がトップダウンで働き方改革の重要性をいくら唱えても、現場で業務に携わる社員の意識が改革にそぐわないと、一過性のお祭り的なイベントで終わってしまうでしょう。
達成目標や業務プロセスを変えずに、労働時間の削減だけを命じることも失敗要因です。サービス残業が増える、幹部社員にしわ寄せがいくなど、かえって状況が悪化する可能性があります。
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働き方改革の成功に向けた推進のポイント
失敗には学ぶべきポイントがたくさんあります。ここからは、失敗理由から見えてくる働き方改革成功のポイントを見ていきましょう。働き方改革を成功させるためには、次の4ステップに沿って推進することが効果的です。
意識改革
働き方改革を成功させるカギは「意識改革」です。なぜ自社が変わらないといけないのかという部分をあらためて考え、企業の体制や文化自体を変革していく必要があります。
そして、経営陣の危機感を現場とも共有することが重要です。経営陣が決めた方針を、具体的に実現していくのは現場の社員たちです。そのため現場との意識共有ができていなければ、どんなにすばらしい実行計画も形骸化してしまうでしょう。
「残業ゼロ」「有給取得促進」などの目標は、一部の経営陣にとっては、自らが実践してきた働き方を否定するような挑戦かもしれません。しかし、企業体質を根本から変え、徹底した効率化を実現していかないと現代社会での競争力を維持できません。
こうした改革が自社になぜ必要なのか、改革が自社にどういうメリットをもたらすのかを明確に定義し、全社員と共有しましょう。改革に向けて全社員の心がひとつになって初めて、働き方改革のスタートラインに立つことができます。
環境整備
環境面が変わらないと行動も変わっていかないでしょう。環境を変えぬまま、「残業をするな」「生産性を上げろ」と指示しても、現場の社員に戸惑いが広がるだけです。方針を決めるのと並行して働き方改革を推進するためのルールや仕組みを整備し、後押ししていきましょう。業務の仕組みそのものを変えることは、長年染みついた習慣を変えるひとつの効果的なアプローチです。
具体的には、ペーパーレス化・オンライン化に必要なシステムやツールの導入、テレワークやフレックス勤務の導入、運用ルールの構築などが有用です。
テレワークのルールについては、なるべくシンプルで柔軟なものにしましょう。例えば、1カ月前に申請しないと在宅勤務できない、適用条件が厳しいといったことでは、利用しづらいでしょう。また、短時間で成果を上げた社員が高い評価を受けられるようにするための人事評価制度の見直しも重要です。
業務改善
業務において働き方改革の妨げとなる部分を改善していくことも大切です。まず、紙の使用や押印をはじめとする効率性の低い業務プロセスを見直していきましょう。ペーパーレス化を進め、申請や承認をワークフローシステムで一元管理できるようになれば、出社の縛りがなくなるだけでなく、決裁までのスピードも大幅に短縮できます。
仕事の属人化・業務量に対する適正要員の不足などを抱えて、社員が休みづらい業務体制になっている場合は、業務マニュアルの作成・アウトソーシングの利用などで解決していきましょう。
明確な目的がなく習慣的に継続している定例会議など、成果が乏しい無駄な業務を合理的に整理していく姿勢も求められます。業務改善によって捻出した時間をより生産性の高い業務に配分できれば、社員にやりがいも生まれるでしょう。
浸透対策
最後に仕上げとして、ルールや制度など働き方改革の取り組みが浸透するように対策を講じていきましょう。先述の意識改革にも通じるところですが、具体的な仕組みやルールの説明会を行ったり、ガイドラインを作ったりすることで、今後の展開をイメージしやすくなります。
脈々と継承されてきた企業文化を変えるには、トップの強い意志が必要です。トップ自らが紙文化の廃止を明言し、役員会議の資料をすべて電子化するなど、率先して改革に取り組んでいくとよいでしょう。
浸透させるポイントは、中途半端に展開しないことです。例えば、オフィスワークとテレワークが半々に分かれてしまうと情報格差が起き、結局全員出社せざるを得なくなることすらあります。
週1日を「テレワークデー」と決めて、その日は全員在宅勤務とするなども有効です。あるいは、現場を率いる幹部社員に率先してテレワークを開始してもらったり、有休を取得してもらったりすると、部下たちも追従しやすくなります。
まとめ
働き方改革を成功させるためには全社員の意識・行動変革が必須です。そして、行動変革を後押しする環境の整備も必要です。
Asanaのワークマネージメントプラットフォームでは、企業や組織内のあらゆる仕事をすべてシステム内で一元管理することが可能です。現場を管理する立場からすると、チーム内の業務を体系的に整理でき、業務配分のコントロールもしやすくなります。個人の貢献度もきちんと可視化するので、社員の士気向上にも寄与します。
リモートワークの導入だけでは、単に社員の働く場所を変えたに過ぎず、働き方改革を実現しているとは言えません。重要なのは、業績と働き方改革とをリンクさせ、自社の競争力を高めることです。
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