人事考課とは?その意味や人事評価との違いから目的・視点・方法まで解説

 2021.03.11  2022.09.07

社員の処遇を適正に決定するのに必要な「人事考課(じんじこうか)」について、正しく理解しているでしょうか。本記事では人事考課の意味と人事評価との違いを説明した上で、人事考課の目的や視点、実際に行う方法について詳しく解説します。人事考課を自社で取り入れたいと思っているご担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

人事考課とは?その意味や人事評価との違いから目的・視点・方法まで解説

人事考課の意味

「人事考課」とは、社員の給与や昇進・降格、配属部署を決定する際に活用される評価制度のことです。人事考課は「企業への貢献度」「上司・同僚からの評価」「自己評価」など、さまざまな観点から社員の処遇を決定します。

人事考課が出した評価は社員の給与や待遇に直接反映されるため、社員にとって大変重要なものです。そのため評価者は主観を一切排除し、公平かつ適正な評価を行う必要があります。また人事考課は社員の評価以外に、社内における不平不満を解消する役割も担っています。上司の評価と自己評価に大きなズレがある社員に対しては面談を行い、正確な状況を把握することで職場環境の改善を目指します。

人事評価との違い

人事考課と似たような言葉に「人事評価」というものがあります。これは文字通り、「社員の行った事(業務)または業務によって生じた成果を、査定する制度」です。一方、人事考課は「さまざまな観点から、社員の処遇を決定する制度」です。両者は似たような意味として使われることも多いですが、上記のように厳密には目的が異なります。

ただし、人事考課で社員を査定するための判断材料の一つ「企業への貢献度」は、人事評価によってもたらされる情報でもあります。こうした事情に基づき、企業によっては、両者を同様の言葉として扱っているところもあります。

そのため一般には、両者を同じ意味の言葉として捉えても特に問題はありません。ただし、「評価する目的が異なる」という点だけは覚えおくとようにしましょう。

人事考課の目的

ここからは人事考課の目的を下記4項目に分け、詳しく解説します。

待遇の根拠とする

人事考課の査定は、社員への待遇を決定する上での根拠となります。給与の引き上げや引き下げ、昇進や降格、異動などは社員にとって大きな転機です。この重要事項が何の客観的根拠もなく決定されては、社員も到底納得がいかないでしょう。

そこで、多角的に社員を査定した人事考課のデータが必要です。この客観的な根拠を基に社員の処遇を決定することで、不平等な扱いを社内に生じさせないようにします。公平な評価を受けられることで、社員たちは仕事へのモチベーションを向上してくれるでしょう。また改善すべき点が見つかった社員も、具体的な問題解決に向けて対処してくれると期待できます。

モチベーションを高める

先述した通り公平な評価は社員のモチベーション向上につながるでしょう。人は他者から認められたり評価されたりすると、もっと頑張ろうとする傾向があります。社員に、次の目標や到達点に向けた意欲を持ってもらうことで、恒常的なモチベーション向上にもつながりやすくなります。

社員のモチベーションがアップすれば作業効率も上がり、社内の生産性も改善していけるでしょう。また評価基準を明確にすることで頑張るべき方向がわかりやすくなるため、「もっと伸ばした方がよいスキルは何か」「自分に足りない部分はどこか」などを社員自身が考えるきっかけにもなります。このように、人事考課を活用して承認欲求に訴えかけることが重要です。

社員一人ひとりがよりよい精神状態を獲得し、キープしてくれることで、企業も安定した経営を続けられるでしょう。

社員について知る

人事考課の目的に「社員の特性やスキルを把握する」というものがあります。特定の社員について、業務に対する姿勢や得意とする分野、能力などを知らないことには、適切な部署へは配置できません。まずは「その社員がどんなスキルを持っており、どんな場所でなら能力を発揮できるのか」を、さまざまなデータから分析する必要があります。

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人事考課の評価によって社員を適切な部署へ配置できれば社員満足度が上がり、結果として企業への貢献度もアップするでしょう。また、社員について知ることで不足しているスキルや改善点などを見出すことができ、それらに対して適切な研修や教育を施すことも可能です。

企業としての方向性を示す人事考課の基本的な目的は「社員の処遇を適切に決定すること」ですが、そのための評価基準を公開することで、企業としての方向性を社員に示す役割も担っています。

人事考課の評価基準は企業によってさまざまですが、その内容には企業理念や求めている社員像が反映されています。それらを全社員に公開して企業が目指している方向性を理解してもらうことが重要です。

企業の方向性を社内で共有し、社員が同じ目標に向かって努力することは生産性の向上につながります。それによって業績の向上につながれば、その頑張りはボーナスという形で社員に還元されるでしょう。ボーナスが上がれば社員のモチベーションも向上し、プラスの連鎖が続いていくと予想されます。

人事考課の視点

人事考課では「能力(知識)」「情意(態度)」「業務(業績)」という3つの視点から、社員の処遇を決定しています。ここからは、これらの視点について詳しい内容を解説します。

能力(知識)

1つ目の視点「能力(知識)」では、社員の持つ能力や業務において発揮された能力を公平に査定します。例えば大きなプロジェクトのリーダーとしてしかるべき責務を果たした社員や、高い営業成績を出した優秀な社員に対しては、昇給や昇進という形で応えることができるでしょう。

また目立った功績のない社員でも、誰もやりたがらない仕事を率先して引き受けたり裏方としてフォローに徹したりして、業務に貢献している場合もあります。そのような社員に対しても公平に査定するのが人事考課の重要な役割です。

さらに同じ成績(数字)でも、遂行した業務の難易度が高い社員を評価するなど、業務の結果だけでなくプロセスを加味するのも大事なポイントです。

情意(態度)

人事考課の視点2つ目は「情意(態度)」です。情意では、日々の勤務態度が査定対象です。単に勤務態度が真面目であればよいというわけではなく「規律性」「積極性」「責任性」「協調性」という4つの項目から公平に判断します。

具体的には「遅刻や早退がないか・上司や会社の指示に従っているか・上昇志向があるか・責任をもって仕事に取り組んでいるか・ほかの社員と協力する姿勢が見られるか」などです。数値として測れない面も正しく評価することで、多角的な視点から社員を見られます。

情意は能力よりも目に見えてわかりやすい分、主観が入りやすい視点でもあります。そのため、公平に行うためには、上司や部下、同僚などさまざまな立場の社員からヒアリングを行う必要があります。また、評価者の優れたスキルも求められるでしょう。

業務(業績)

3つ目の「業務(業績)」では業務の達成率や達成度合い、実際にあげた成果を評価の対象とします。「能力(知識)」がプロセスを加味するのに対し「業務(業績)」では結果のみを重視するため、人事考課のなかで一番評価しやすい項目かもしれません。

しかしプロセスを加味せず結果だけを重視するため、クライアントの影響で業績が上げられなかった場合などもそのまま数字として表れてしまいます。そういった状況をなくすためにもプロセスを重視する「能力(知識)」など、さまざまな視点を組み合わせて総合的に評価することが大事です。

人事考課の方法

人事考課の意味や視点がわかったところで、今度は具体的な人事考課の方法を解説します。なお、人事考課を行う際の評価基準や必要事項はあらかじめ企業で定めておきましょう。

目標の設定

人事考課を行う対象期間で、社員が成し遂げるべき目標を設定します。目標設定は上司と部下が話し合い、お互いが納得するものを導きだしてください。達成目標の難易度は、「高すぎず低すぎず、簡単には遂行できないが努力次第で達成可能」という程度が理想です。

また、目標達成までのプロセスはわかりやすく、社員が何を目指すべきなのか数値などを例に具体的に提示することが重要です。ここで掲げた目標を達成できるかどうかが人事考課に大きく影響するため、上司は部下に対し取り組むべき内容を正確に伝えましょう。

評価の実施

人事考課の対象期間が終了したら評価を実施します。まず社員が「自己評価」を行い、その内容を上司が評価します。

ここで重要なのが、人事考課における上司の評価は主観的であってはならないということです。部下との相性や好き嫌いなど、人事考課に個人的な感情を持ち込んではいけません。あくまで目標の達成度やプロセスなどを客観的に見ることが重要です。

また上司によって評価内容に差が出ないよう、人事部門や企業があらかじめ評価基準を明確に設定しておく必要があります。

フィードバックの提示

評価が終わったらその結果をもとに上司と部下で面談を行います。そこでフィードバックを提示して、今後の方針を話し合いましょう。このフィードバック面談はただ単に結果を伝える場でも、上司が部下を叱責するための場でもありません。

よかった点はさらに伸ばし、不足していた点はどのように補えばよいのか、社員にとって有益になる話し合いと考えてください。このフィードバック面談によって社員のモチベーションが高められて初めて、人事考課が上手く活用できたと言えるでしょう。

人事の仕事を効率化したいなら、ITツールの導入を検討するのもよいでしょう。ワークマネージメントシステム「Asana(アサナ)」なら、ツール上で社員管理ができるため、Asana一つで人事の仕事が完結します。

またリモートで業務を行う社員たちも、好きな時間・好きな場所で、Asanaを使用できます。そうしたリモートワークも想定し、チャット・タスク管理・メンション機能・カレンダーなど、必要な機能がすべてそろっている点も大きな魅力でしょう。

まとめ

人事考課は社員の処遇を決定するだけでなく、社内の公平性を保つためにも重要な役割を担っています。本記事で解説した方法を基に人事考課を正しく行い、社員のモチベーションアップや生産性の向上につなげてください。

また、業務を円滑に進めるためにAsanaのようなワークマネージメントツール導入を検討することもおすすめです。社員管理がクラウド上で簡単に行えるツールを選べば、リモートワーク環境でも大きな利便性を期待できるでしょう。

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