国内における労働人口減少や市場のグローバル化などの影響も相まって、多くの企業で生産性向上が重要な経営課題となっています。とくに重要となるのが、従業員1人当たりが生み出す成果の指標となる「労働生産性」です。本記事では、労働生産性の定義や具体的な計算式について詳しく解説します。
労働生産性とは
まず「生産性」と呼ばれているものは、「投入した経営資源の量に対して、それによってどのくらいの成果が得られたのか」を定量化するための指標です。企業は資金や資本、または設備機器や人材などの経営資源を活用し、事業活動を通じて製品や商品を生産します。生産性を向上させることは、企業にとって非常に重要な経営課題の1つであり、言葉の意味を抽象的に捉えるのではなく、的確な数値として具体化する必要があります。そのための基本となる計算式は、以下の通りです。
- 生産性=産出量÷投入量
「産出量」とは生産物の生産量や付加価値額などを表しています。「投入量」とは、ヒト・モノ・カネといった経営資源を、対象となっている事業活動についてどのくらい使用したのか、を示しています。
つまり、「事業活動によって生み出したものの量を、そのために投じた資源の量で割った値」が生産性であると言えますが、これにはいくつかの定義も存在します。なかでも「従業員1人が生み出す成果」を数値化した指標を「労働生産性」と呼びます。これを表す基本的な計算式は以下の通りです。 - 労働生産性=産出量÷労働投入量(従業員数×労働時間)
これにより、従業員1人の生み出している成果、もしくは従業員が単位時間にあげる成果を、具体的な数値として明確化できます。生産性を向上させていくためには、現状より少ない従業員数や労働時間で、現状と同等以上の生産量を創出していかねばなりません。日本生産性本部の調査によると、日本は世界第3位のGDPを誇る国ですが、労働生産性のランキングではOECD加盟37カ国中21位となっています。そのため、「どうやって労働の投入量を少なくしつつ、大きな産出量を創出していくか」が、国内企業の重要な経営課題の1つです。
労働生産性の種類
生産性は、「物的生産性」と「付加価値生産性」の2種類に分けられます。「産出量として何を設定するか」で、これらの違いが生じます。産出量に設定されるものは、前者では単純に生産物の量ですが、後者では産物の「付加価値額」です。
付加価値額とは、企業が事業活動によって生み出した価値を表す指標です。具体的には、売上高から売上原価を差し引く「控除法」、もしくは営業利益や人件費、支払利息等や動産不動産賃借料などを積み上げる「加算法」を用いて、割り出される金額です。
- 物的生産性=生産量÷投入量
- 付加価値生産性=付加価値額÷投入量
上記2つの式を応用し、従業員1人が創出する生産量や付加価値額の算出が可能です。例えば、投入量の値に労働投入量を設定すれば、「物的労働生産性」が割り出されます。これにより、「従業員1人の創出する生産量・販売金額」を明確な数字として把握できます。また、付加価値額と労働投入量の商で「付加価値労働生産性」を割り出せば、従業員1が創出する付加価値額を定量化可能です。
- 物的労働生産性=生産量÷労働量投入量(従業員数×労働時間)
- 付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量投入量(従業員数×労働時間)
労働生産性の計算方法
先述したように、生産性は投入した経営資源に対する産出量の比率を表しており、「生産性=産出量÷投入量」が基本的な計算式です。そして、投入量の値に労働投入量を代入することで、従業員1人当たりが生み出す成果指標となる「労働生産性」が割り出されます。
生産性を割り出す基本式は、アウトプットとインプットの商です。投じた経営資源に対し、それによって生じた産出量が多いほど、生産性は高いことを意味します。
生産性を上げるためには、限りある経営資源を有効的に活用し、いかに少ない労力で大きな成果を生み出すかが重要と言えます。ここで大切なのは、生産性という概念を抽象的に捉えるのではなく、具体的に数値化して定量的に分析することです。以下、ここまで見てきた生産性の基本的な計算方法をまとめておきますので、あらためておさらいしておきましょう。
- 生産性=産出量÷投入量
- 物的生産性=生産量÷投入量
- 付加価値生産性=付加価値額÷投入量
- 物的労働生産性=生産量÷労働量投入量(従業員数×労働時間)
- 付加価値労働生産性=付加価値額÷労働量投入量(従業員数×労働時間)
労働生産性の目安
企業とは、事業活動を通じて市場に価値を提供し、対価として利益を得て発展する組織です。そのため、「いかにして組織全体における業務効率を改善し、労働生産性を高めていくのか」が重要な経営課題と言えます。
では、労働生産性の目安とは、具体的にどの程度の数値を指すのでしょうか。生産性の基準値は企業規模や業種によって大きく異なるため一概に言えませんが、中小企業庁が2021年7月に発行した「中小企業白書」から平均的な目安を見ていきましょう。
中小企業白書では、資本金1億円未満の企業を「中小規模企業」、資本金1億円以上10億円未満の企業を「中堅企業」、資本金10億円以上の企業を「大企業」と定義し、日本国内の企業における付加価値労働生産性の統計が掲載されています。そのデータによると、従業員1人当たりの付加価値労働生産性は、中小規模企業では577万円、中堅企業であれば821万円、大企業では1,158万円がそれぞれ中央値となっています。
付加価値労働生産性については、その企業がどんなジャンルの事業を展開しているかによって大きく異なります。例えば、建設業や情報通信業、運輸業や郵便業、卸売業などは500万円を超えているものの、小売業や飲食サービス業は300万円を下回っています。この数値は大企業と中小企業の中央値ですが、小売業界や飲食業界は業種全体として労働生産性の水準が低いため、大幅な向上は容易でないと言えるでしょう。小売業の生産性が低い理由としては、事業者数の多さゆえ市場の競争環境が激しいことに加え、IT活用の遅れなどが挙げられます。
労働生産性を向上させる方法・ポイント
企業にとって、労働生産性の向上は重要課題の1つです。しかし、多くの企業が生産性向上に向けてさまざまな施策を実施するものの、成果に結びつかないケースも少なくありません。ここからは、労働生産性を向上させる方法や、押さえておきたいポイントについて解説していきます。
業務の見える化
労働生産性の向上を目指すうえで重要となるのが、業務プロセスの「見える化」です。そして労働生産性を高めるためには、業務プロセスの効率化が必須です。生産性と業務効率は混同されがちな概念ですが、その定義は異なります。
「生産性の向上」とは経営資源の投入量に対する産出量を高めることであり、「業務効率の向上」は業務プロセスの短縮化や労力の軽減を指します。業務効率を改善することで労働投入量の値は小さくなり、労働生産性を大きくすることにつながります。そのため、業務プロセスをタスクレベルまで細分化・見える化し、業務効率を改善していくことが重要です。
ツールを導入する
生産性は産出量と投入量の商として明示されます。当然、どのような指標を用いるかによって導き出される商が異なります。そのため、生産性を正しく分析するには、その割り出しに用いられる指標を的確に把握する必要があるのです。しかしそうした指標は、事業内容や業種などに基づきつつ、どの観点から見るかによっても変わってきます。
また、付加価値生産性を割り出すためには、「控除法」や「加算法」といった会計の知識も必要です。こうした生産性の分析プロセスを効率化できるITツールを導入すれば、結果として組織全体の業務効率の改善につながります。
従業員の能力を高める
従業員一人ひとりの知識や技術を高めることも、労働生産性を高めるうえで不可欠な取り組みです。偉大な哲学者・アリストテレスは、「全体は部分の総和に勝る」という言葉を残しています。例えば、時計の部品だけを集めても、適切に組み立てなければ時計としての機能を果たしません。組織運営も同様であり、優れた人材が集まることで単純に1+1=2になるのではなく、相乗効果によって算術的総和以上の成果の創出へつながるでしょう。個々の能力を高めることは、生産性向上に直結する重要な施策と言えるでしょう。
まとめ
企業経営にとって、労働生産性の向上は取り組むべき重要課題の1つです。労働生産性は産出量を労働投入量で割った値として算出されるため、最小の人的資源で最大の成果を生み出す施策が求められます。そこでおすすめしたいのが、ワークマネージメントツール「Asana」です。Asanaは企業の経営データを一元的に管理し、組織全体の業務プロセスを可視化するためのソリューションです。Asanaの導入によって、業務プロセス全体を定量的に把握できるようになり、労働生産性の向上に貢献するでしょう。Asanaについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
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