企業が事業を継続するには利益を出さなくてはなりませんが、そのためには従業員のことを考えた職場づくりが大事です。しかし働きやすさは人によって感じ方が異なるため、いくつかの指標を用いて客観的な評価を行わなければなりません。本記事では働きやすさの参考となる指標を紹介し、企業が意識するべきポイントを解説していきます。
働きやすさについて考える意味
社内環境を「働きやすさ」に重点を置いて整えることは、直接的には従業員が恩恵を受けます。しかしその影響は企業の利益として還元されることが多く、ここを最終目標として環境整備にあたることが大切です。つまり働きやすさについて考えることは、従業員個人への配慮という意味合いも含みますが、それ以上に企業のためにならなくては意味がありません。
そこで重要なのは、働きやすい環境を整えることによって「従業員モチベーションやパフォーマンスを向上させる」「離職率を低下させる」「対外的なイメージを良くする」といった目標を設定することです。つまり従業員のためになるか否かのみで判断するのではなく、より大きな恩恵が企業に返ってくるような取り組みを優先的に行うことが大事なのです。
給与が適正であることや福利厚生が充実していること、適正な評価がなされていることなどは、従業員の仕事に対するモチベーションを向上させ、結果的に生産性の向上につながります。従業員の満足度が高まることで離職率は下がり、社内にノウハウや実績が蓄積されます。
加えて、こういった情報は新たな採用活動においても役立ちます。働きやすい職場であると評判が広まることで優秀な人材がより確保しやすくなり、それがさらに生産性向上へつながる、という好循環を生み出していけるのです。
働きやすさを求める職場が意識すべき指標
働きやすい職場であるかどうかを客観的に評価するにはどうすればいいでしょうか。ここでは、定量的に評価しやすい「労働時間」「離職率」「休暇取得率」「女性の割合」の4つの指標を紹介します。いずれも働きやすい職場環境を実現する上で重要なポイントとなりますので、まずは各項目を照らし合わせて自社の状況を把握しましょう。
労働時間
近年は特に労働時間に対する関心が高まっています。そのためサービス残業が発生していないことはもちろん、長時間労働せざるを得ない状況になっていないことが大事です。長時間労働は従業員の心身を疲弊させ、生産性の低下につながります。
そこで労働時間を指標とし、長時間に及ばず、かつ安定しているなら働きやすい職場であると評価できるでしょう。この指標を改善するには定常的な残業を異常と捉え、定時で全員が仕事を終えられるよう目指すことが求められます。
離職率
離職率を働きやすさの指標とするには注意が必要です。離職率が高くなる理由にはさまざまなことが考えられるため、特定の要因を示すものとしては使えません。また、離職率が高くても人気のある業種や、短期間で転職することが一般的な業界もあるため、一概に「離職率が高い=働きにくい」とも言い切れません。
しかし、同業他社に比べて高かったり、以前に比べて上昇傾向にあったりする場合は、職場環境に問題があると考えられます。また、離職率が高くなる理由として考えられるのは、「労働時間が長い」「賃金が低い」「評価されない」などネガティブなものがほとんどです。離職率が高いとノウハウの蓄積や継承にも影響が出る上、外部にも働きにくい職場なのではないかと評価されてしまいます。そのため、働きやすさを見る上で一定の参考にはなるでしょう。
休暇取得率
休暇取得率も働きやすさを判断する指標と言えます。取得率が極端に低い企業の場合、求職者に「有給休暇や育児休業が取れないかもしれない」と不安を感じさせてしまいます。
そこで従業員には積極的に各種休暇を取得しやすくなるような施策を講じることが重要です。特に年次有給休暇に関しては、近年の法改正に伴い一定の範囲で義務化されています。そのため、少なくともルールで定められた以上は取得させなければなりません。場合によっては「違法に従業員を働かせている会社」との評価を、社会全体や特定の機関から受けてしまうリスクが発生します。必ず従業員への強い働きかけを行いましょう。
(参考URL:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/roudousya.html)
また育児休業に関しては、育児・介護休業法の改正によって母親だけでなく父親も取得できるように定められています。企業が性別問わず高い育休取得率を達成することで、子育て世代の従業員のためになるだけでなく、働きやすい印象を与えることで新しい人材確保にもよい影響を与えます。
(参考URL:https://ikumen-project.mhlw.go.jp/employee/system/)
女性の割合
性別を問わず働きやすい職場であることも重要です。そこで指標になるのが女性従業員の割合です。ただし業界・業種によって必然的に割合が変わるため、同業界内における相対的な評価指標として用いることになります。
しかし、合理的な理由なく性別による働きやすさが異なっていると、対外的に悪い印象を与えかねません。また、女性の割合が低くなくても、単に非正規雇用の女性が多いだけということも考えられます。そのため、「正規雇用者における女性の割合」や「管理職の男女比」も同様に指標とする必要があるでしょう。男性中心の職場風土であるなら改善し、産前休業・産後休業や育児休業に関する制度の充実を図り、誰もが働きやすいよう整備することが大事です。
働きやすさを実現するには
前項で挙げた指標を改善し、働きやすい職場環境を構築するためにはどのような対策を取ればよいでしょうか。
そこでポイントになるのが「法令順守」「社内の風通しを良くすること」「適正な評価」「ワーク・ライフ・バランスの考慮」「制度の充実」などです。
法令順守は、労働時間や休暇取得など最低限の法令を守ることは当然のこととして、リスクマネージメントの観点からも重要です。法に抵触する行為が発覚すると社会的信頼を失い、企業に多大な損害を生じさせます。法に則った活動をすることは最低ラインと捉えなくてはなりません。
また、社内の風通しをよくすることで従業員同士の意見交換が活発になり、不満も溜まりにくくなるため、離職率の低下につながります。円滑な意見交換は仕事の能率を向上させ、労働時間の増加も防ぎます。誰もが忌憚なく意見を表明し、悩みを相談できる職場環境であることは、従業員にとって働きやすい環境であるだけでなく、企業のためにもなるでしょう。
ほかにも従業員の不満を溜めてしまう要因として、適切な評価がなされていないことも挙げられます。客観的な評価基準を設け、成果に応じた適正な評価ができるよう仕組みを作らなくてはなりません。
そして従業員のワーク・ライフ・バランスを考慮した多様な働き方も検討すべきでしょう。ITツールの導入によって在宅勤務への移行なども容易になってきています。柔軟な働き方を実現するための福利厚生など制度も充実させ、よりよい職場環境を提供できるよう努めましょう。
まとめ
働きやすい職場を実現するには、定量的な指標を元に新たな仕組みを設け、多様な働き方を従業員が選択できるようにすることが大事です。在宅勤務をはじめとする多様な働き方を提供するには何をすればいいのかわからないと悩んでいる場合は、ITツールの導入で解決できないか検討してみましょう。
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